Prof. Kです。火曜日時々登板のピンチヒッターです。最近は、自分の目で見て感じて頭をつかって判断しなくても、なんでもわかってしまう(?)ようになってきました。便利な世の中です。

 

私が学生だった頃、合成した化合物の結晶がどうしても出せないとき、当時助教授であったF先生(現在は名誉教授)に相談することにしていた。

「先生、こすっても冷やしても結晶出ないんですけど・・・」

「ちょっと貸してみ」といって先生は、フラスコを手に取り、底にへばりついたオイル状の物質を見つめ、ベンチの上の瓶に入っている、酢酸エチルやエーテルやらを目分量で適当に入れる。そして、フラスコをゆらゆら揺する。いつも耳かき代わりに使っている、細い金属の薬匙の先を汚いトレーナーの裾でぐいとぬぐい、それで油状物質をちょこちょここすったりする。

「もうこれ氷で冷やしたらすぐ出るわ」といってどこかへ行ってしまう。

すると、結晶がみるみる出るのである。

当時、研究室のメンバーは結晶化に困ったら皆同様に神頼みのごとくF先生に頼っていた。F先生に、そのコツを教えてもらおうと尋ねてみるも、「なんとなく様子を見てたら感覚でわかるんや」とのこと。

 

最近ウチの学生に、自分で合成してTLCと融点で純度を確認した試薬と、試薬メーカーが売っているカタログ収載の市販品、どちらの品質を信頼しますか?と聞いてみた。その多くが、後者の方が安心だと答えた。

 

私が若手教員だった頃、隣のラボの大先生がやたら怒っている(いつも怒っていたが)。電気泳動のバンドの濃さを画像解析(デンシトメータ)で解析したら、明らかに目で見て薄い方のバンドのほうが定量結果でその量が多く出る。これが真実だ、と言い張っているとのこと。

 

これもずいぶん前の話、コンビニで少額の買い物をし、千円出したら「千円お預かりします」といってレジをたたき、レジの数字を確認しながら「ではお釣りで、大きい方から9千円と・・・・」と、たくさんのお釣りを頂戴したこともあった。(もう時効だ)

 

こんな学生もいた。実験の報告には、いつもすごくたくさんの桁数の数字を書いてくる。化合物の合成収率が8桁だったり、12桁だったり。

「ひょっとして、この桁数は電卓の表示桁数を書いてるの?」

「はい」

「どの桁まで信頼できる数字なのかなあ」

「先生は計算機が嘘をつくとおっしゃるのですか?」

とキレられた。

もちろんその電卓は国内有名メーカの高級品であった。

 
次週は、久しくお目にかかっていない「苔玉」さん、よろしくお願いします。