ボクは一般企業で
会社員として
20年間過ごし
42歳で退職
今はフリーランスで
主に動画編集を
仕事にしている
1.はじめに:もう終わる
2年前くらいにあった
あるできごとを
急に思い出したので書いている
こちらの記事
【ある夏のこと】ホームレスっぽいおじさんを車に乗せた話〜前編
【ある夏のこと】ホームレスっぽいおじさんを車に乗せた話〜中編
のつづきである
長くなってしまったが
もう終わる
2.ホームレスっぽいおじさんを車に乗せた話〜後編
①ついに郡上へ
銭湯を後にして
2割だけ清潔感が増した
おじさんを乗せた車は
ついに郡上の街に着いた
街はにぎわっていて
これから祭りが始まるぞという
活気に満ちていた
近くの駐車場はどこも満車
少し離れた駐車場に停めた
時刻は15時だったと思う
この時点であることに気づく
「送ったらすぐ帰る」
と言っていたのに
ボクはまんまと
おじさんの術中にハマり
車を降りて
街をちょっとのぞいてみようと
しているではないか
街を少し歩くと
目の前にはおいしそうな
食べ物を売っている屋台が並んでいた
少し雨が降っていたので
おじさんの分の傘を
あたりまえのように購入(笑)
もう何も感じなくなっていた
雨が降っていたので
とりあえず屋根のあるお店に入り
お茶でも飲むことにした
さっきお昼に冷やし中華や
お菓子を食べていたおじさんに
「もしかしておなか減ってる?」
と聞くと
「いや減ってるっていうか・・」
と遠慮がちだ
もういまさら遠慮しなくていい
「減ってるならなんか食べる?」
というと
「じゃあこれ」
と900円の定食を指差した
お腹は減っていなかったが
おじさんと同じものを食べることにした
なんだかんだいいながら
ふたりとも
ペロリとその定食を平らげてしまった
②まったく壁のない人
店内には最初おじさんと
ボクの二人だけだったが
若い女の子二人組が
隣のテーブルに座った
その途端おじさんは
「毎年来てるんだよ」
と隣の女の子たちに話しかけた
なんというか
いままでに見たことない
懐への入りかたで
女の子たちも
最初の5秒くらいは
怪しむような顔をしていたものの
すぐに
「ウケる」
とか言って
おじさんの虜になっていた
見習いたい
そしてボクを指差し大きな声で
「この人ね、10,000円くれたんだよー
よっぽど金持ちなんだろうね」
おじさん、声がでかい
なんなら少し誇らしげだ
ボクの方はと言えば
それを言われるのは
なんとも恥ずかしかった
言うなら小さい声で
お願いしたかった
しかも金持ちではない
銀行口座の虎の子の20,000円で
あと半月をどう乗り切ろうか
考えている40代後半の男である
おじさんとの所持金の差は
もう9,300円くらいだ
おじさんは
楽しそうに話している
女の子たちは
きゃっきゃしている
踊りが始まるのは
20時だそうだ
③結局踊る
そのお店を出て
おじさんと
街をぶらぶらした
どこのお店に行っても
知り合いのように
店員さんとしゃべる
すれ違う人にも急に話しかける
散々歩き回って
あたりは少し暗くなってきた
しばらく歩くと神社があったので
ボクは行こうと誘った
なんとなくおじさんと
一緒にお参りしたくなったのだ
もうすぐ別れが近づいているので
(ほんとは15時に別れる予定だったが)
おじさんの無事を祈っておきたいと
思ってしまった
ボクはよく
お賽銭で1,000円札を
入れたりするので
何気なく1,000円札を入れようとしたその時
おじさんがボクの手をがっつりつかんで
「ダメだよ!そんなことしちゃ!」
さっきよりもさらに大きな声で止めた
「え?なんで?ここでお賽銭入れたら
まためぐってくるかもしれないよ
おじさんもその小銭入れなよ」
「いやダメだって!」
今日一番の真剣な顔を見た
そのお賽銭は
結局どうしたのか覚えていないが
おじさんの真剣な顔だけは覚えている
そのあとおじさんに口説かれて
せっかくきたから踊りをちょっと見ていこうと言うことになって
祭りが始まるまで
また喫茶店に入ることにした
薄暗い照明の雰囲気のいい喫茶店で
おじさんは大声で話して
マスターに
「ここはそういう店じゃないんで」
的に怒られていた
ボクは
マスターにすいませんと謝りながらも
どこに行っても態度が変わらない
おじさんを尊敬していた
それからその店では
音楽の話をした
店のナプキンに何やら
いろいろ書いて説明してくれたが
その内容は全部忘れてしまった(笑)
おじさんと一緒にカレーを食べ
(また食うんかい)
コーヒーを飲んだ
そして
いよいよ郡上踊りがはじまった
初めての体験だった
知らない人と
同じ振り付けで踊ることで
不思議な一体感を感じる
だが
結局踊っている時は
おじさんとしゃべったりできないので
ボクは少しつまらなく感じていた
1時間くらいした時
「おじさん、帰るね」
と伝えた
おじさんは
「朝までいようよ」
と言っていたが
「ごめん、帰る
ひとりで帰れる?
大丈夫?」
というと少しさみしそうにしていたが
おじさんの魔力を振り切るように
帰ることにした
話は以上で終わりだ
最高に楽しかった1日を
振り返りながら家に帰った
3.まとめ:後日談
実はおじさんと
連絡先を交換していた
電話番号も住所も教えた
2日後に電話がかかってきた
おじさんは電話を持ってないので
お友だちのケータイから
無事帰れた旨の報告があった
そのお友だちに
「おじさんをよろしくお願いします」
という謎の挨拶をして電話を切った
おじさんからは
昔のアイドルの週刊誌の切り抜きを
貼り付けた謎の葉書が3回くらい届いたが
それ以来連絡はとっていない
すっかり忘れていたが
おじさんの写真を撮っていた
後ろ姿だから
無断で載せてもいいだろう
元気にしているだろうか?
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