東京創元社さまからいただいた本を紹介します。
『行方知れずの仲人屋 妖怪の子、育てます5』廣嶋玲子(創元推理文庫)
人気シリーズの最新巻です。力を持った結晶を持って十郎が逃亡、恋人のあせびは打ちのめされて、というお話で、結構シリアスなのにどこかのんびりしているのは人外の者たちだからでしょうか。きちんと大団円に(まあ大体)なるので安心して読める作品です。
『時の果てのフェブラリー』山本弘(創元SF文庫)
先日物故されたSF作家の実質的な第一長編です(再刊されたときに加筆修正されたヴァージョン)。そのハードSF的な緻密な設定(タイトルの赤方偏移世界、ですね)をきちっと反映した描写はまったく古びておらず溌剌としたアイディアの奔騰を楽しめます。未完の続編の冒頭部が収録されていて、いろいろな事情から放置されていたのでしょうが返す返すも病に斃れられたのが残念でなりません。
『バベル』R.F.クァン著/古沢嘉通訳
19世紀のオックスフォードを舞台に、世界各地から連れてこられた言語のエクスパートたちが、英国の覇権を支える二つの言語の意味の違いからエネルギーを得る魔法技術を学んでいくのだが、やがて自分たちのアイデンティティとの相克に苦しみ、帝国に対抗する秘密組織の活動にのめり込んでいく、という物語。テロリズムが重い主題になっていて、その結末は非常に苦いが、読み応えたっぷりの長編小説だ。主要キャラクターの一人がハイチ出身の黒人で、フランス語を話すという設定になっているのだが、いうまでもなくハイチ黒人のフランス語はビジン語であり、彼女は「正しいフランス語」を話しているであろうと思ってその来歴を想像したりした。ハイチは黒人による革命(独立)に成功したものの、その後過酷な運命を辿ったのだったとか。
『月のケーキ』ジョーン・エイキン著/三辺律子訳(創元推理文庫)
幻想短編集の文庫化です。ややダークめの児童文学ですね。扉に一つずつさかたきよこさんのイラストが入っていて雰囲気を盛り上げてくれています。