昨夜の公演は、シェーンベルク作曲「グレの歌」でした。



これまでハンガリー国立オペラは、オペラ劇場、エイフェル劇場、エルケル劇場の3つの劇場を所有して、それぞれ公演等を行っていたのだけど


様々な理由から、エルケル劇場がこの1月からオペラ所有の劇場ではなくなりました。


そして昨夜は、そのエルケル劇場の「さよなら公演」としてのグレの歌でした。


3月初旬にも、エルケル劇場でのオペラ公演はあるのだけど、昨夜が公式な「お別れ公演」。


【「十二音技法」や「無調音楽」で知られるシェーンベルクだけど


「グレの歌」という作品はシェーンベルクの初期の作品で、後期ロマン派の傑作。滅多に演奏される機会はないけど、素晴らしい作品】


と、学部時代の西洋音楽史の授業で、先生が仰ってた気がするし


大学院の時、ベルクの初期歌曲で論文を書いたのだけど、論文指導をして下さってたゼミの教授にも


「あなた、ベルクのその作品で論文書くなら、シェーンベルクのグレの歌!生で聴く機会あれば、絶対一度は聴くべきよ」


と言われていた作品でした。


作品の規模が大きすぎて、なかなか演奏される機会がないという事なのに


まさか演奏する機会に恵まれるとは!という興奮もあったし


なんだかオーケストラリハーサルの時から、音の温泉に浸かってるような、そんな感覚でした。


合唱150人全員、そしてオーケストラも150人くらいいたんじゃないかなぁ。



そんな大人数で演奏した昨夜の公演は、オーケストラピットだけでなく、ホール前方の客席を外して足場を組む事で「舞台」にした、特別拡大舞台。


オーケストラは舞台上で、そして合唱は客席バルコニー部分や、客席中央部分の通路から演奏。


客席は満席。


客席も舞台上も多くの人で、その光景を見ているだけでも胸がいっぱいになりました。


留学でハンガリーに来てから7年、そんな私でもエルケル劇場での思い出が幾つもあって


演奏が終わって、最後お客様から拍手を頂いてる時


沢山のお客様が、立ち上がって拍手をして下さっている、そしてその拍手が全く鳴り止まない様子に


公演の成功ということ以上に


エルケル劇場が人々にどれだけ愛されていたのか、自身の思い出も溢れてきて、胸に込み上げてくるものがありました。


私でも胸いっぱいだったから、同僚達や、お客様達はもっと沢山の思い出があるんだろうなあ。


華やかで豪華絢爛なオペラ劇場と


木の温もりを感じる、歌っていても聴いていても「あたたかい」エルケル劇場


そしてエッフェル塔のエッフェルさんが建てた建物を生かした、近代的なエイフェル劇場。


それぞれに良い所があって、どの劇場も好き。


数公演、3月初旬にエルケル劇場にて公演はあるけど、なんだかやっぱり寂しいなぁ。


どの演奏・公演に対しても甲乙つけないで、まっすぐ取り組むようにしてるのだけど


エルケル劇場がオペラの所有では無くなる、と決まってからのエルケル劇場での公演や、リハーサルは


(なかなかエルケル公演がないということもあってか)


自然と毎回背筋がピシッと伸びるような感じで、不思議と気合が入ってしまいます。


3月の公演、寂しいけど今から楽しみだなぁ。


昨日の公演、エルケル劇場が人と音で満たされて、本当に温かい空間・時間でした。


なんだか演奏してて、聴いてて、会場を見てて、本当幸せだったなぁ。


インフルエンザで寝込んでいる人が周りに多いのだけど、この幸せな気持ちをエネルギーに


引き続き、健康を維持出来るようにがんばろう。


また寒さが戻ってきて、とんでもない寒さだし


また暫くお鍋生活にしよう〜。