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認知症ケア 理論と実践のあいだ

認知症について語る
介護施設での十数年間のケアを振り返りながら
認知症の基本的な理解を交えて語っていく

●こころを動かす力

以前、このブログで書いたこと。

ある認知症の方が、膝を痛めて整形外科に入院した。

膝は整形、内科の医師ともに問題なしとの診断で退院できる。

リハビリ専門のデイに通ったが、ちゃんとリハビリができない。だから歩くことができなく車イス生活になった。リハビリの専門家が何人もいて、高価な機器が何個もあるのに、リハビリができない。なぜなら、認知症のあるその方の意欲を引き出せなかったからだ。

一方で、民家改造型を利用した。家庭的な雰囲気で気持ちも穏やかになる。運動へのやる気を引き出せそうだ。しかし、リハビリの専門家も機器もない。十分なリハビリができない。

筋力は十分に残っているのに、歩き方を忘れてしまい、そのためのリハビリが十分にできないために、その方は車いす生活になり、人の手をかりることが多くなり、結果、認知症状は深くなっていった。

と書いたのだが、その後に奇跡が起きた。

このお年寄りが自分の力で立ち上がったのだ。そして今は誰の力も借りずに一人で歩くことができている。心を動かすことで、歩く力を甦らせたのである。

その力を引き出したのは、リハビリ専門機器もリハビリの専門知識もない、一般デイの介護職員たちだった。

今デイサービスは機能訓練型が花盛りである

しかしながら、そんな機能訓練型ではこの利用者さんを歩かせることはできなかっただろう