世界一ふざけた大富豪の教え

世界一ふざけた大富豪の教え

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満天の星空の下、大富豪は言った。

「君は、成功したいんだったよね。」

ぼくは、ワインを飲む手をとめて、はい、と答えた。

「だったら、ひとついいことを教えよう。

実は、人間の頭の中に浮かぶ考えは、自分で選ぶことができないんだよ。」

えっ、と僕は驚いた。

「君が自分で考えていると思っている頭の中の考えは、全てまっさらな意識から送られてくる海の波のようなもので、

選ぶことができない自然現象のようなものなんだよね。

なぜかというと、そもそもこの世に実在しているのはたったひとつのまっさらな意識だけで、

いろいろなことを考えていると思っている「僕」や「君」というのは、本当は実在しないからなんだ。」

いつものように、ぼくはあっけにとられてしまった。

「成功する人の頭には、まるで自然に送られてくる波のように、成功する考えが浮かぶんだ。

そしてもっと言うと、それが自然な状態なんだよ。

そのことに努力が必要だということが、本当はおかしいんだよね。

それは、自分の持ち家に住んでるのに、家賃を支払わないといけない、と思っているのと同じなんだよ。

しかも大勢の人はものすごい多額の努力という家賃を支払わないと、成功という家を追い出されると思っているんだ。

自分の家なのにね。」

ぼくは少し笑ってしまった。

「じゃあどうすれば、成功の波がやってくるのか、ということだよね。

答えは簡単で、「不自然な努力」をやめればいいんだ。

つまり、払う必要のない家賃を払うのを、やめるだけでいいんだよ。」

ぼくは、なんだか安心した。

「じゃあ、具体的にどうすればいいのかと言うと、「考える自分」よりも、「感じる自分」に集中していればいいんだよ。」

ぼくは身を乗り出した。

大富豪はワイングラスをかたむけると、優しく笑って続けた。


「人の中には、「考える自分」と「感じる自分」の2つがあるんだ。

「感じる自分」は、恥や罪悪感、悲しみや恐怖、欲望、怒り、プライド、といったような心の重りをたくさん抱えているんだ。

ぼくはそういうのを「心の漬け物石」と呼んでいるんだよね。

成功者というのは、心の中にそういう「心の漬け物石」が全くといっていいほど無いから、すごく心が軽いんだ。

だから、まっさらな意識から、勇気、愛、喜び、平和、といったような成功のアイデアの波が頭にどんどん入ってくる。

正直に言うと、僕たちはそのことに努力はまったく必要ないんだ。

だってそれは自然現象のようなものなんだから、「自分」の力では無いんだよね。」

ぼくは感心してしまった。

大富豪は明るく笑って続けた。

「でも多くの人は、「心の漬け物石」をたくさん抱えながら生きているんだ。

なぜかと言うと、「考える自分」が、それを隠そうとしてしまっているからなんだよね。

そんな「心の漬け物石」を抱えた状態で速く走ろうと思っても、それは難しいよね。」

なるほど、とぼくは思った。

「「考える自分」は、「心の漬け物石」を感じるのではなくて説明して修正したがるんだ。

だってそんな事を感じているなんて知られたくないし認めたくないからね。

でも、「感じる自分」は常に残酷なくらい正直なんだ。

いくら「心の漬け物石」を隠しても、必ず外の世界に鏡のように投影されてしまう。」

ぼくは少し怖くなった。

大富豪は優しく笑った。

「じゃあ、どうすれば「心の漬け物石」を手放すことができるのか、という事になるよね。」

ぼくは、はい、と答えてワインをごくりと飲み込んだ。

「答えは簡単で、はじめに言ったように「感じる自分」に集中していればいいんだよ。

なぜかと言うと、「心の漬け物石」は、感じられると、すぐにエネルギーを使いきって消えてしまうからなんだよね。

隠そうとするからいつまでもあるだけで、ただ感じていればすぐに消えるんだ。

確かに、恥や罪悪感、悲しみや恐怖、欲望、怒り、プライド、といったような感覚は不快な音楽のようなもので、

できれば聞きたくも感じたくもないよね。

でも、「考える自分」に修正も説明もさせないで、ただ「感じる自分」に集中していれば、

そうした感覚の向こう側にあるエネルギーは底をついて、消えてしまうんだ。

だからなにか不快なことがあったら、「どう思うか」ではなくて、「どう感じるか」に集中するんだ。

最初は大嫌いな音楽を無理矢理聞かされているような気持ちになって、「考える自分」が修正しにやってくるけれど、

「なぜそうであってはいけないの?」っていうことなんだよね。

ただただ感じていればいいんだ。

それは究極的には雨とか台風と同じで、やがて消える自然現象だからね。

恥や罪悪感、悲しみや恐怖、欲望、怒り、プライドが起きるにまかせて、ただ演奏が終わるのを待てばいい。

ジャイアンリサイタルだとおもえばいいんだよね。」

僕は笑ってしまった。

「もしくは、ストレッチだと思えばいい。

最初はキツいけれど、やがてどんどん簡単になる。

だから、恥や罪悪感、悲しみや恐怖、欲望、怒り、プライドを感じているときは、

修正しようとせずに心のストレッチが効いてる効いてる!と思えばいいし、

嫌なやつは専属のインストラクターさんなんだと思えばいいんだよ。

だって、「心の漬け物石」は隠すのやめて手放せば、消えてしまうんだからね。

ただただ説明も修正も加えずに、「感じる自分」に集中する。

そうして「心の漬け物石」をどんどん手放し続けていると、階段を上っていくような感じで、

心はどんどん軽くなっていくんだ。

そうすれば、心はまっさらなより高い意識を反映するようになって、勝手により機能するようになるんだよ。

そうなれば、成功しているのが自然な状態なんだ。」

ぼくは、なんだか心が晴れたような気がした。

「成功は、人それぞれにいろんな形があるし、いろんな道があるから、本当は教えようがないんだ。

だから、単純に「感じる自分」に淡々と集中する。

すると、台風がやがてすぎさって晴れてくるように、成功というのは自然にやってくるんだ。

そうなれば、もう「不自然な努力」という高い家賃を払わずに、成功という我が家で、みんなが自由にくつろげるようになるんだよ。

そして、そもそもそれが、「心の漬け物石」の無い自然な状態なんだよね。」

ぼくは、なんだか楽しくなってきた。

空になったぼくのグラスを見て、大富豪はたちあがった。

「恥や罪悪感、悲しみや恐怖、欲望、怒り、プライドが沸き上がってきても、それはみんな、

まっさらな意識から送られてくる自然の波で、命の潮なんだよ。

修正したり説明を加えようとせずに、「どうしてそうであってはいけないの?」とそのまま感じて手放すだけでいいんだ。

ちょうどきみが、この超高級ワインを遠慮なくどんどんと飲み干している勢いでね。

もう一本持ってこないといけないね。」

大富豪はそう言って笑った。

ぼくは、少し恐縮してしまった。

「そう!まさに今、僕がワインをとりに行っている間、その罪悪感を感じる自分にしっかり集中するんだよ!」

僕たちはふたりで大きく笑った。

空には、満天の星空が広がっていた。