国家として、右肩上がりの成長が終わるとき、何が一番ベターなのか? またその戦略は 各国の性格的に受け入れられるか

ロシアとウクライナの戦争継続を通して、ロシア国民のプーチン支持の背景は---



1. 現代ロシアの縮図:「生かさぬよう殺さぬよう」の冷徹な統治


現代のロシアでは、戦争の長期化により過半数の国民が早期和平を望む一方、55歳以上の高齢層はプーチン政権と戦争継続を強く支持しています。


この高齢層は、ソ連崩壊直後の1990年代にハイパーインフレや飢餓、治安崩壊という「地獄のトラウマ」を経験しました。そのため、2000年代に資源バブルを背景に秩序と年金を回復してくれたプーチン氏を「救世主」と信じ込んでいます。



現在のロシアは、政権と完全に一体化した大富豪「オリガルヒ」が国家の仕組み(インフラや戦争ビジネス)を使って富を独占しています。その儲けは国民には還元されず、すべて軍事費(戦費)へ投入されています。


国民には「増税とインフレ」を課してカツカツの生活に追わせる一方、高齢層の年金や兵士への高額報酬など「暴動が起きない最低限の金」だけは配る。

このやり方は、日本の江戸幕府が農民に対して行った「生かさぬよう、殺さぬよう(贅沢させず、飢えさせず、搾り取る)」という独裁・権威主義体制が生き残るための最も効率的な生存戦略です。

国民をあえて一定の貧しさに留めておくことで、政治や反政府運動に抵抗する時間とエネルギーを奪っています。



2. 「一億総中流」だった昭和の日本:豊かさによる安定(特異な成功例)

これとは真逆のアプローチで政権の超安定を築いたのが、かつて「一億総中流」と呼ばれた昭和後半の日本です。
当時の自民党政権は、右肩上がりの高度経済成長の果実(富)を、終身雇用や地方への公共事業を通じて全国民に平等に分配しました。

国民の9割が「自分は中流で幸せだ」と感じられる社会を作ることで、政治への不満そのものを消し去ることに成功しました。
しかし、この「みんながハッピーだから政権を支持する」という民主主義的な安定は、

「国全体が右肩上がりに成長していること」が大前提です。



3. 経済成長が止まった後の「中間層」の維持:世界各国の成否



経済が成熟し、右肩上がりの成長が終わった社会で「中間層」を豊かに保つには、国全体のシステムの根本的な変更(分配の仕組みの変更)が必要になります。ここで世界各国は異なる道を歩みました。

〇イギリス・ドイツの挫折(かつての福祉大国)


イギリス: 「税金」を原資に医療無料化などの理想を掲げましたが、基幹産業を国営化したことで国民の勤労意欲が低下。経済が停滞する中で福祉費だけが膨らみ財政破綻(英国病)に陥り、その後のサッチャー改革で福祉を切り捨てた結果、深い格差社会となりました。
ドイツ: 現役世代の「給料からの天引き(社会保険料)」で福祉を賄ったため、少子高齢化で現役の負担が爆発。企業が海外へ逃げ失業者が溢れる悪循環に陥り、最終的には失業手当を大幅に削る痛みを伴う改革で経済を立て直しました。

〇北欧(スウェーデンなど)の成功維持
 

成長が止まっても高い福祉と中流の安心感を維持できている北欧は、現役世代だけに頼らず「消費税25%」として国民全員から広く平等に税を集める仕組みを作りました。さらに徹底的な男女共同参画で「支え手(納税者)」の人口を極限まで増やし、経済自体は世界で戦えるガチガチの資本主義(弱肉強食)を維持するという「超リアルな経済と、超理想の福祉」を両立させています。

〇現代の中国(ハイブリッド型)
 

あえて約4億人の巨大な中間層を人工的に作り出し、「経済的な豊かさ(贅沢)」を与える代わりに「共産党への絶対服従」を迫る手法です。最新のAI技術によるデジタル監視網を敷くことで反抗の芽を事前に摘んでいますが、近年の経済減速により、その統治モデルも岐路に立たされています。


総括

国家が政権を安定させるアプローチには、大きく分けて3つあります。

1「生存(ロシア型)」: 国民を貧しく(生かさぬよう殺さぬよう)保ち、生きることに必死にさせて従属させる。
 

2「成長(昭和の日本型)」: 右肩上がりの経済で全員を豊かにし、満ち足りた安心感で支持させる。
 

3「分配(北欧型・中国型)」: 成長が止まった後は、全員で痛みを分かち合う超福祉システムを作るか、あるいは豊かな経済の裏で完璧なデジタル監視を敷くか。
 

 

成長が止まり、富をすべて戦争に吸い取られている現代のロシアは、

必然的に「1(ロシア型)」の冷徹な恐怖支配へと先祖返りしていると言えます。