
事故が起こってから 30分程度だろうか
麓近くの人家の軒下で、呼んでもらった救急車を待っていた。
また、通りかかりの軽トラにI先輩を乗せてもらいここまで連れて来てもらったのだ。
横になったI先輩の顔は血だらけで、かなり腫れ上がりまともにはしゃべれなかった。何箇所からまだ出血している。
半分気を失ったように朦朧として、貸してもらった毛布と共に縁側に横になっている。
直後から雨がかなりの勢いで降っていて、軒外はザーっとけぶっている。
自分は軒からたれている雨を見ながらボっーとしていた。
今回はトラブル続きだな、I先輩大丈夫かな。そんな事をかんがえていただろうか?
「なあっ」突然 かすれ声でI先輩が声を掛けてきた
「I先輩! しゃべんない方がいいよっ 」
I先輩は無視して続けた
「なあ、、、あのな、俺やっぱ医者になるわっ」
「えっ?・・」
I先輩はその当時某大学の理学部四年。実家は赤ひげのようなお医者さん一家。長男のI先輩は医者か学者か悩んで今の学部を選んでいたが、卒業を控えまた悩んでいたのだった。
ここ暫く、その話題が出るたびに
「そりゃただ モラトリアム になってるだけじゃないすか?」
という話で終わっていた。
「俺 やっぱ医者になるよ」
再度つぶやくように言うI先輩。
「判りました、判りましたからその話はまた今度しましょう。」
他の先輩とそう話していると、ようやく救急車が町から到着した。
I先輩と付き添いの先輩が乗り込み、山にサイレンがこだましながら救急車は町に遠ざかっていった。
鼻の骨折、打撲と擦過傷、それから数十針縫う確か全治二ヶ月程度の怪我だったと思う。
あれから随分月日が経ったが、
I先輩は 今整形外科のお医者さんだ。
大学卒業後、一年後に某医学部に入りなおし見事医者になった。
在学中は積極的に学内のリーダーシップを張っていて、確かなんかの大会で全国優勝したり、いい兄貴役で医学部学生のとりまとめをしたりしていた。
今も整形外科として患者の信頼が厚いようで、近辺の看護婦さんとかの評判も良い。
あの時事故って 結果良かったんかなー。と今にしておもう。
人間万事塞翁が馬ってやつだな