
学生時代 うちのガッコの学生達共通のキーワードは
「貧しい」だった。 とにかく金が無い。
工学部の学生だったんで、周りの多くは車を所有していた。
ただ、車の程度はピンキリ というかキリの車が多かった。
例えば、先輩から引つぎ引継ぎ所有者が変わっていた「軽トラ」。
これ、「軽トラ」って形は解かるものの、勝手にさび止めで色を重ね塗り
ハンドルや席の周りの形は大胆に変わり、内装は大体剥がされ、
エンジンもとっくに改造の手が入っている。
なので、どこの車メーカーかがまず解からない。
車検証を見て「ああこれ あの車ー」という具合だった。
調子はまあ悪くなかったので、所有していた友人はどこに行くにもその軽トラで出かけていた。
ある日、一緒に 地方のパイバス道路を結構なスピードで走っていた時
友人が運転しながら、さかんに首をかしげる。「おかしいよなー」
ハンドルが左に取られ、ちょっと振動があるという。
「降りて見てみっか」
他車も結構なスピードで流れているので、注意して車を寄せると前のタイヤを見てみた。
うーーん、ほーんの心持ち 前輪片方のタイヤがちょっと向きがおかしい。でも気のせいぐらいな感じ。
「なんかトーインとかずれたかなー ジャッキで上げてみよっ」
トーイン(車の進行方向に向って タイヤをハの字に調整する事 直進性に影響する)調整なんかは
どの車でも簡単に出来る
そこは工学部、手馴れたもんで、車からジャッキを取り出すとボディーに噛ませ、前輪が持ち上がるようにジャッキのハンドルを回し始めた。
「エイヤ エイヤッ」
ゆっーくり持ち上がる車体。それにつれタイヤも垂れ下がりながら上に上がり始める。
「エイヤ エイヤッ」
引き続きゆっーくり上がっていく車体。
まだタイヤは垂れ下がりながらも下の地面にかろうじて接地している。更に車体を上げていく。
ようやく、タイヤも宙に浮き始めたー と思った その時っ!
「ゴトッ 」
という音と共に、タイヤがいきなりはずれ地面にひっくり返った。
「エエッ タイヤ外れたよっー」
しかもタイヤだけが外れたのではない
タイヤが付いてる車軸も一式 ようは根元から もげてしまった。
「おいおい、これサス(ペンション)ごともげたぞっっ!!」
友人も自分も真っ青。
そりゃそうだ、もしそのまま走ってたら、
今頃 タイヤが車軸ごとドッカにすっ飛んで、
そのまま横転、大事故は必至だ。
でも何で、こんな車軸ごとタイヤが外れるんだよっ。
よく見てみると
サスの一部として、このタイヤの車軸は、他のサスペンション部分に差し込まれ、
抜け留めのピンで留めていた。
どうもこのピンが取れて、他のサス部分とバラけるように車軸が外れちまったらしい。
おっかねー。車検も何かもかも結構いい加減に済ませていたからだなーきっと。
その場は車軸と車体側のサスを繋ぐピンの代わりに 針金をグルグル巻きにして、
なんとか形にすると、ゆーっくり帰ってきた。
その後、その車はまた適当に直してしばらく乗ってたが、ある時 十字路で突っ込んできた車にオフセット衝突され、全損した。
全損扱いで 相手の保険屋が
「二万しか出しません!! これでも高く見積もってる。」
と言い切られ、友人はかなり腹を立てていた。
「俺はこれを直すっ!!」
文句は言わせんと保険屋に啖呵を切った。
それからほどなく事故った車を引き取りに、仮置きされてもらっていた事故現場近くのスクラップ屋にいったら、
その車は勝手に潰されていて、縦横50cmの 四角い鉄くずになっていたそうだ。
鉄くずを前にして、立ち尽くすその友人に
スクラップ屋のオヤジが言った、開口一番
「えっ!? いるのっ!」
話を聞いたときは、笑ってしまった。
(この50cm四方ってのはホラだろな多分
でも 既に潰されていたのは確かだ)