SNSでエピソードを絡めた記事投稿する際、読む人の興味を引く方法のひとつとして「会話文を挿入する」というアプローチがあります。
投稿文に登場する人物の「人柄」や「感情」が伝わりやすくなるほか、「会話文=リアリティがある」ため、読む人の理解度も高まります。会話文を上手に使うと、読む人に「言葉」ではなく、「絵」や「映像」として情報を届けることができます。
【原文A】
今日中に宿題を終わらせる気満々のコウタとは対照的に、ソウマは早くも諦めているようだ。
↑事実を客観的かつ淡々と描写した文章です。
【修正文】
「よし、今日中にこの宿題を終わらせるぜ!」と息巻くコウタとは対照的に、ソウマは沈みがちな声で「マジかよ? オレは諦めるよ……」と言った。早くも諦めているようだ。
原文と修正文を読み比べてください。両者の差は歴然です。
会話文を挟んだ修正文には、目の前で演劇を見ているようなリアリティ&臨場感があります。コウタとソウマのそれぞれの「性格」や「考え方」もよく伝わってきます。
別の文例を紹介します。
【原文B】
今年で70歳になる私の母が、車をエコカーに乗り替えたとはしゃいでいる。「もみじマーク」をプレゼントしようかと提案したが、年寄り扱いされたくないらしく、けんもほろろに却下された。
【修正文】
「ねえ、聞いて、聞いて! 車をエコカーに買い替えたのよ!」
そうはしゃぐのは、今年で70歳になる私の母だ。
「お祝いに『もみじマーク』をプレゼントしようか?」
わたしがそう提案すると「年寄り扱いする気かい?」と、けんもほろろに却下された。
会話文を挟んだ修正文のほうが、お母さんのサバサバとした、若々しく好奇心旺盛な人柄が伝わってきます。
会話文を書く際、実際に口にした言葉を一語一句正しく書こうとすると、かえって伝わらなくなることがあります。
息子から<もみじマーク>の提案を受けたとき、実際にお母さんが口にした言葉が「そんなのいらないよ」だったとします。
しかし、この言葉を馬鹿正直に書いては、お母さんの心情が正確に伝わりません。
なぜなら、「そんなのいらないよ」と言ったとき、お母さんは、冗談めかして息子を睨んでいたからです。
↑この下線部分の情報(様子や雰囲気、光景など)を見逃してはいけません。
人は決して言葉だけで情報を伝えているわけではありません。SNS投稿に会話文を盛り込むときには、<言語では表現されていない部分(様子や雰囲気、光景など)>を、いかに意訳して表現できるかが重要なのです。
修正文では、「年寄り扱いする気かい?」という言葉を選びました。この表現のほうが、お母さんの「心情」が的確に表現されているうえ、やや強気でユーモラスなお母さんの「人柄」も伝わってきます。
このように、会話文を用いるときには、ニュアンスが伝わるよう事実を上手にデフォルメすることも大切です。「本質を伝えるための<愛ある脚色>はOK」と心得ておきましょう。
投稿文に会話文を挟むことで、リズムが生まれたり、躍動感が生まれたりと、さまざまな効果が得られやすくなります。とくにSNS投稿でエピソードを語るときは使用を検討しましょう。