文章を書くときに、きまじめになりすぎて、

「本当のこと」を書こうとすると失敗します。
 
「きちんとしたこと」を書こうとすると失敗します。
 
「ありのまま」を書こうとすると失敗します。
  
「すべて」を書こうとすると失敗します。
 
「本当のこと」も、「きちんとしたこと」も、「ありのまま」も、「すべて」も、読む人にとって関心があることとは限らないからです。
 
どんな文章も、読む人に関心を持ってもらうための「創作」でなければいけません。
 
テレビのドキュメンタリー番組と同じです。
 
いやいや、ドキュメンタリー番組は、「ありのまま」や「本当のこと」を描いているじゃないですか!
 
——そう思う人もいるかもしれませんが、ドキュメンタリー番組は「ありのまま」や「本当のこと」は描いていません。
 
例えば、誰かに100時間の密着取材をしたとしても、番組に使われるのは、長くても20~50分程度です。
 
「ありのまま」や「本当のこと」を描こうと思うなら、100時間すべてを放送しなければいけません。
 
しかし、それをすれば、どんなドキュメンタリー番組もつまらないものになってしまいます。
 
「視聴者の関心」を踏まえつつ、選りすぐりの情報を放映するから、ドキュメンタリー番組はおもしろいのです。
 
「選りすぐる」だけではありません。
 
視聴者がより興味をもつよう、緩急を織り交ぜ、BGMをつけ、テロップを流し、ナレーションをつけます。

ときにはスローモーションやイメージ映像なども使います。場合によっては、時間の流れを入れ替えることもあります。構成は、多かれ少なかれ「物語性」を重視しています。
 
つまり、素材を十分に調理してから視聴者に送り届けているのです。
  
文章にもまったく、同じことがいえます。
   
「読者の関心」を念頭に、膨大な情報のなかから「これぞ!」という部分を選りすぐったうえで、緩急をつけたり、表現を工夫したり、伏線を張ったり、言い換えたり。比喩を使ったり、劇的さを演出したり、単純化したり、誇張したり、構成を工夫したり、書き出しを工夫したり、オチを工夫したり、物語性をもたせたり——と、あらゆる演出を加えながら、文章を完成させていくのです。
 
楽しい! タメになる! 役立つ! 感動する! 笑える! など、読む人にとって何かしらの価値を提供することが、文章における「創作」です。
 
文章を書くあなたは、ドキュメンタリー番組の監督のようなものです。
 
ウソはいけませんが、演出や脚色は必要なのです。
 
「本当のことを書こう」

「きちんとしたことを書こう」

「ありのままを書こう」

「すべてを書こう」

という意識が強すぎると、「伝わらない文章」や「つまらない文章」「読まれない文章」になりかねません。
 
本人に悪気はなくても、実は、それこそが「身勝手」な文章なのです。


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