伝わる文章
「ポール・ウォーカーさんと事故現場を訪問したヴィン・ディーゼル」

昨年、ニュース記事に掲載された写真の説明文です。

そこに写っているのは、俳優のポール・ウォーカーと同じく俳優のヴィン・ディーゼルです。

この説明文を読んだとき、ポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルが一緒に事故現場を訪問したと思う方もいるはずです。

しかし、実際に事故現場を訪問したのは、ヴィン・ディーゼルだけです。

なぜなら、ポール・ウォーカーこそが、事故死した張本人だからです。

つまり、ポール・ウォーカーは故人。

この写真は、ウォーカーが生前のツーショットというわけです。

理由はどうあれ、「ポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルが、一緒に事故現場を訪問した」と読めてしまう説明文は、いい説明文とはいえません。

では、どのような説明文にすれば、誤解されずに済むでしょうか。

いくつか方法はあります。

<修正案1>
「ポール・ウォーカーさんと、事故現場を訪問したヴィン・ディーゼル」

読点(テン)を打つことによって、誤解を招く確率が、少し下がるかもしれません。

しかし、これでも完璧とはいえません。

<修正案2>
「事故死したポール・ウォーカーさんと、事故現場を訪問したヴィン・ディーゼル」

読点のほかに、「事故死した」を加えました。

この説明文であれば、ほぼ誤解は避けられるはずです。

<修正案3>
「ポール・ウォーカーさん(故人)と、事故現場を訪問したヴィン・ディーゼル」

このような書き方でもいいでしょう。

さらに分かりやすくするなら——

<修正案4>
「ポール・ウォーカーさん(故人)と、氏の事故現場を訪問したヴィン・ディーゼル」

「氏の」を加えました。

最後に、ポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルの顔を知らない方のために、より親切な説明文にします。

<修正案5>
事故死したポール・ウォーカーさん(左)と、氏の事故現場を訪問したヴィン・ディーゼル(右)

いかがでしょう。この説明文であれば、名前と顔が一致します。

読点ひとつ、言葉ひとつで、意味が大きく変わる。それが文章です。

伝えたつもりでも、結果として相手につたわらなければ、それは悪文です。