本や映画や音楽、グルメ……等々、レビュー(評論)を書くときには、「抽象的→具体的」という流れを意識しましょう。

<例文>
ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』は、とても素晴らしい作品でした。とくにアン・ハサウェイをはじめとする俳優陣の歌が最高で感動しました。

↑意味は通じますが、「素晴らしい」「最高で」「感動しました」という抽象的な言葉だけが並ぶため、レビューとしては物足りません。

おそらく、読む人の頭には、どう素晴らしかったのだろう? どう最高だったのだろう? どんな感動だったのだろう? という疑問が浮ぶことでしょう。

<例文の修正>
ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』は、とても素晴らしい作品でした。【←抽象的】

運命の荒波にのみこまれていく登場人物の心情がリアルに描かれており、冒頭から引き込まれました。【←具体的】

とくに感動したのが、人生の機微と喜怒哀楽をエモーショナルに表現した俳優陣の歌声です。【←やや抽象的】

ときに力強く、ときに繊細に、感情に身をまかせるままに歌われる魂の歌声は、セリフで語る以上に饒舌で、胸に迫るシーンの連続でした。【←具体的】

圧巻はアン・ハサウェイ扮するシングルマザーが、絶望のなかで悲壮な心情を響かせるシーン。ひとり娘を想う親心に自分の姿が重なり、こぼれる涙を止められませんでした。【←具体的】

いかがでしょう?

「素晴らしい」「最高で」「感動しました」という抽象を掘り下げて書くことで、<例文1>のレビューよりも、この映画に対する印象が大きく変わったと思います。

「ひとり娘を想う親心に自分の姿が重なり、こぼれる涙を止められませんでした」という具合に、自分自身の率直な感想を書いた点も、レビューとしては高得点です。

他人の受け売りや一般論ではなく、自分自身の感想や体験、分析を交えながら、物事を掘り下げて書いていくと、具体的で質の高いレビューになります。