「あの」「その」「この」「あれ」「それ」「これ」。こうした指示代名詞は、100%相手に伝わる自信がない限り、できるだけ使用を控えましょう。

指示代名詞は文章を作るときにとても便利です。学校の授業で、「同じ言葉を使わずに、指示代名詞を使いましょう」と教わった方も少なくないでしょう。

たしかに、同じ言葉をくり返し使うと文章が幼く感じられることもあります。

しかし、伝わる文章を書きたいのであれば、指示代名詞はできる限り使わないほうがいいでしょう。

なぜなら、「それ」や「これ」が何を指しているのか、理解できないケースがあるからです。

「『それ』って言われても……どれのこと?」と、読み手に一瞬でも思わせてしまうようなら、その文章は悪文かもしれません。読み手に負担をかけているからです。

<例文>
多くの個人事業主が、売り上げが低迷していることを理由に、自身の将来に不安を感じている。それは今後もしばらく続くだろうというのが、それらに共通した見解であり、この傾向はさらに強まっていくだろう。

<例文の修正>
多くの個人事業主が、売り上げが低迷していることを理由に、自身の将来に不安を感じている。売り上げの低迷は今後もしばらく続くだろうというのが、個人事業主に共通した見解であり、「自分の将来に不安を感じる」という傾向はさらに強まっていくだろう。

▲それは→売り上げの低迷は
▲それらに→個人事業主に
▲この傾向は→「自分の将来に不安を感じる」という傾向は

上記の3点を修正しました。

指示代名詞を連発した<例文>では、意味が把握しづらかったと思いますが、指示代名詞を具体的な言葉に置き換えることで、理解しやすい文章になりました。

前述の件ですが~、すでにお伝えした件ですが~、くだんの~、当の~、例の~、そのような~、あのような~——なども、指示代名詞と同じです。

100%伝わる確信がもてないときは、できるだけ具体的な言葉に置き換えましょう。