空想屋9
三日連続
最近デスクワーク作業の方が増えてきた。
編集業務を兼ねることが増えたのと、
コラムや評論のような取材を必要としない仕事が増えているから。
で、いつ以来かな、三日連続朝から夜まで取材に行った。
取材自体は楽しい。
見たことのないものを見れたり
取材しない限り体験できないことを得たり
そこで聞く話なんかが創作に生きたりもするし
とはいっても4時間も5時間も撮影に付き合ったり偉いさんと話すのはやはり疲れる。
一昨日なんか夜八時に家に着いて仕事が山ほど残ってるのに
何もしたくなくてずっとボケーッとしてた
昨日は23時過ぎまで働いて
コンビニで買ったビール2缶と日本酒ワンカップでピザ3枚という
何人やねん?の飲み方で疲れでそのまま潰れてバタンキュー
取材はひとまず完了。
も、来週からは3月発売の書籍の取材が入る。
これがまたやっかい。
ま、あと一ヵ月半。
2005年の最後も走りますか
空想屋8
無駄のようなの時間
週末から妻と子が実家に帰ってるため
この週末は一人で過ごした。
金曜真夜中まで仲のよい編集者とi飲んでいたこともあり
土曜日は二日酔いでグダグダ
それでも九時に起きて新聞や何やらをチェックして
腹がへったので近所のカレー屋でカレーを食うまで元気に回復。
そしてそこから驚くほどの睡眠。
寝たり起きたりだが深夜まで寝てやがる。
俺は冬眠のクマか
もっともクマはアジアシリーズを見たり(1)
明治神宮野球大会を見たり(2)
ワールドカッププレーオフを見たりはしないだろう(3)
(1)は台湾野球って生で見たいな。五輪の予選は見たことあるけど、プロのリーグを見てみたい
(2)は駒大苫小牧の安定感。やっぱこの年代の子は指導者で変わるね。
(3)はいつもプレーオフで散るオーストラリアに肩入れする自分がいた。水曜が楽しみ
で、日曜も驚くほどの寝さらし人生で
13時にやっと行動開始。
書きかけの小説を1時間ほど書いて
そのまま温泉へ。
ふわーーーっと1時間ばっか
サウナ中心に汗を流しまくり
当然のように生ビールを飲む。
汗流してビール体内入れてその行動にお金をかけてもったいない
とビールを飲まない人から見たら思うかもね
グビグビとイカの焼いたやつを相手に二杯飲んで
そのままお気に入りのそば屋へ。
玉子焼きと鴨抜きを相手に冷酒をグビグビと三杯やっつけて
最後はざるそばで締める。
クー満足なんて思ってるときに
そーいえば今日は笑い飯が小倉の番組に出るんだったと思い出す
もう終わってるな仕方ない。
うち帰ってサッカーと野球交互で見て21時からはトリック見よう
と思っていたのだが、深夜二時頃テレビを着けたままの部屋で目をさます。
ちょっとだけ野球とサッカーを見た記憶はあるが
トリックが始まる前には眠りについていた。
ああ失敗。
酒と睡眠で終わった二日間。
無駄のような気もするが
元気な状態で今月曜朝を迎えてるのだから
たまにはこーいう
サラリーマンの週末も悪くない。
さ、今週は忙しいぞ
サバクサルナイト
タイトルは意味なし。
昔ラジオ番組を作っていたときに、その番組のタイトルにつけた名前。
土曜深夜の一時間番組で、
ショートコントを50本エンドレスで流したり、
夏にクリスマスドラマをやったり、
生放送で深夜にその日の朝刊を読んでコメントしたり
マニアックの域にも達せず
ほとんど語り継がれることもリアクションもなく
半年程度で終わった番組だった。
ちなみにタイトルの意味は
サバって生ものじゃん。だから腐ったの食べたら腹壊すよね。
そんなサバが腐ったような番組を作ろう。
そんな意味でサバが腐った夜
サバクサルナイトだった。
これってタイトルだけで自分は納得しちゃって(納得するな)
番組はグダグダのまま終わっちゃいましたなあ。
と思い話トークを書いてるうちに
ほんとに書きたいことを忘れてしまったので
これにてジ・エンド
小説「空想屋7」
「よう、君平ちゃん元気?」
そう言いながらやって来たのは、空想屋の常連である田之上龍大である。
田之上は小劇団に所属する俳優で、テレビ、ラジオや映画にも多数出演している。
とはいっても、定期的に仕事があるわけでもなく、そのくせ妻と三人の子供を養っており生活は大変だと時々愚痴ってくる。
俳優としてこれといった代表作のない田之上だが、二年前から始めたラジオ番組が人気を呼び、先月発表された聴取率調査で局の最高記録を更新して局長賞をもらったほどだ。
毎週土曜日に生放送されるこの番組は、リスナーからのメッセージや街角中継など様々なコーナーで綴られているが、田之上のフリートークが絶大の人気を誇っている。
「○○といえばですねえ・・・」
と、その日のテーマや旬の話題から田之上が喋り始めるトークは、時には原型が無くなるほどに脱線し、まるで漫談ネタのようだ。
田之上龍大の発想力は素晴らしいとある雑誌のコラムで、著名文化人に絶賛されたこともある。
前出したが、田之上は空想屋・君平想二の常連である。
田之上龍大の発想力は素晴らしい。
いえいえ・・・ねえ。
「田之上さん、この前ラジオで喋ったでしょ。マリリンモンロー女の話」
俺が言うと、田之上は悪びれるでもなく笑う。
「そうそう。聞いた?もうスタッフにも大受けで。俺の周りにもそういう勘違い女いますってfaxやメールも多くて番組盛り上がったよ」
マリリンモンロー女とは、先月訪れた患者のことである。
「君平さん。私ね・・・あっ、絶対笑わないで下さいね」
その客は、そう何度も私に笑わないでと念を押す。そして、私はマリリンモンローの生まれ変わりなの、と真顔で言ったのだ。
「ほお、なぜそう思われるんですか?」
笑わないことを約束させられた私は、反則ギリギリの温かい笑顔を彼女に向けながらその理由を聞く。
「私わかるんです。モンローの苦悩や辛さが。モンローは美しすぎたから、それ故に一般人ができる、当たり前の幸せを得ることができなかった。今度生まれ変わる時は見た目で判断されるような人間にはなりたくない。そう思ったモンローは、ごく普通の人生を求め私に生まれ変わったんです」
ちなみにこの女性、身長は百五十センチ前後。体重は百キロはあると思われる。そして顔は、先日横綱に昇進した関取そっくりときたもんだ。
普通の人生を求めたわりには、モンローから関取へと大きな変化だこと、と思いながら笑いを堪えながら俺は彼女が納得してくれるような空想を披露した。
患者の秘密は、外部には絶対に漏らさない。それが『空想屋・君平想二』の約束事なのだ。とはいっても、それは表向きだけの話で、友達や飲み屋先でベラベラと人の秘密を喋ってしまうこともある。
その喋ってしまう相手の一人が、目の前の田之上龍大だ。
「ここだけの話にしてってお願いしたのに・・・」
そう文句を言っている俺も、別に本気で怒っているわけじゃない。田之上が放送で喋ってから二週間。モンロー女から抗議がきたという連絡は入っていない。彼女の耳には届いていないようだ。
それに彼を怒れない最大の理由は、俺自身がDJ田之上の大ファンだったりするからだ。
田之上の喋りの魅力は、空想屋の俺が言うのもなんだが発想力の豊かさにある。1+1が3にも4にもなるし、0にしたあとで百にも千にも、はたまたマイナスにも変えることができる変幻自在のアドリブトークは面白く、俺も仕事上参考にすることも少なくない。
モンロー女の話にしたって、楊貴妃の生まれ変わりだと思いこんでる四十五歳の独身女性に設定を変え、話も原型から大きく異なる展開になっており、田之上にその話をした俺は別として、モンロー女がラジオを聞いても自分のことだと気づかないかも知れない。
空想屋の俺が話した言葉を、田之上がどうアレンジするか?
田之上の一ファンとして、そして空想を職業とする男として、俺は今日もまた患者の秘密を話してしまう。
「なるほどね・・・。大森を中学時代に三振に取った男の話か・・・」
つい三十分前までここにいた野口の話を田之上にすると、はじめは興味をしめして聞いていたが途中で何か思うことがあるらしく、しばらく黙り込む。
そして、ちょっとこれ貸してくれる?
と俺のパソコンでインターネットを開き、何やら検索している。
三分後。
「やっぱりそうだ」
そう言って田之上は、パソコンを指差し俺に見るように促す。
そこには、ジャイアンツのホームランバッター・大森智次のプロフィールが書かれている。
一九○×年生まれ。八歳で野球を始める。小・中学は投手だったが、レギュラーになれず○○高校入学後打者に転向し才能が開花・・・・・・・。
「え、どういうことだ?」
このサイトは、ジャイアンツの公式HP内に書かれている選手プロフィールだ。嘘が書かれているはずがない。
嘘をついたのは、野口だ。
「その野口って男が、中学時代エースだったか、高校入学前に父親が亡くなったか、その辺のことは調べようないけど、ただはっきり言えるのは野口は中学時代に大森と対戦していない。だから当然ながら大森に、甲子園で会おうとは言われていない」
説明を終えた田之上は、これも使えるな、とノートに今の話をメモしている。
俺は、ちゃんと原型が無くなるようにアレンジして下さいよ、と言いながら先程までいた野口の顔を思い浮かべる。
「僕、野球部のエースで四番だったんです」
「あの大森を三振に取りました」
「そして大森は僕にこう言いました。甲子園で会おうと」
「空想屋に空想話するなんて・・・」
俺が言うと、
「その話に君平ちゃんが空想話を作るんだから、まさに空想の数珠繋ぎだね」
と笑う。
その後、田之上が輪をかけた空想をラジオで披露し、空想の数珠はさらに大きく広がる。
小説「空想屋6」
遠い締め切り
某出版社から書籍の企画を頼まれたのは9月末のことだった。
「来年の冬から春にかけて20冊程度発売を予定している。何かいい企画があったら出してくれ」
仕事の合間を縫って4つほど企画を提出した。
全部で100程度の企画が出てるそうでその中から最終的に10前後の企画が書籍になるという。
10月連絡が来た
「4つのうち3つ通ったから」
え?びっくり。
結局企画が通ったのは9本
そのうち3つが俺って、
俺がすごいのか?他がひどいのか?
多分後者だと思いながら口にせず
結局3本のうち1本は企画尚早で延期。
2本を動かすことになった。
で、現時点ではページ台割しか作っていない。
取材先も二件に連絡しただけ。
というのも発売が3月末。
ということは締め切りが3月上旬。
まだまだ先だ。
しかも今はクリスマスや年末年始の取材執筆で忙しい。
まあいいやと後ろに回している。
しかし一冊の本のボリュームは100P以上。
一週間やそこらではいとできるほど甘くない。
だから今のうちから確実にこなしていかなくてはいかない。
のにねえ・・・
4ヶ月先だしと目先の仕事からこなす現状。
2月になって慌てる自分の姿が今からわかる・・・
小説「空想屋5」
「ところが九回ツーアウトから勝利を意識しちゃったんですね。二者連続フォアボールで二死一、二塁。バッターは四番の大森です」
かっ飛ばせ大森!の大歓声が野口の頭の中で響き、興奮で体が震えている
俺はいつもの設定温度より、かなり低い室内の温度に体が震えている。
「ここまで三打席は、ヒット二本と痛烈なセンターライナー。私はまだ一度も大森をきちんと抑えていないのです。ベンチからは歩かしてもかまわないと指示が出ていました。だけど、僕は逃げる気なんてない。勝負だ、大森!」
大きな声は、きっと受付の女の子の耳にも届いただろう。だけど驚きはしないはずだ。こんなこと日常茶飯事。今日に始まった事じゃない。
「一球目は外角高めのボール。二球目はスローカーブで相手の打ち気をそらしストライク。そして三球目カキーン」
野口は後ろを振り向く。そして一瞬落胆の表情を見せた後、安堵の表情に変わる。
「ファールでした。あと三十センチ打球が内に入っていれば、ホームランで逆転されるところでした」
野口の額の汗は、ボタボタと音を立て床にこぼれ落ちる。彼は完全に空想の世界に潜り込んでいる。テレビや雑誌の取材による影響が強いのだろうが、この部屋に入ると皆自分も空想屋に変わってしまうようだ。
よくこんなに空想の世界に潜り込めるよなあ、と当の空想屋である俺は感心してその様子をいつも見ているのだ。
いよいよクライマックス。
一打出れば逆転。抑えれば勝利。その大事な場面で、野口は自慢の剛速球を放る。
「いくぞ大森」
大きく振りかぶった野口は、大森目がけて渾身の一球を投げる。
「ストライクバッターアウト!」
私は拍手を送る。
その音で現実に引き戻された野口は、照れながら、どうも、と言う。
最後の打者大森を三振に打ち取った野口の学校は、前年の全国大会優勝校を破り県大会決勝戦へ駒を進めた。
「試合終了後、僕は真っ先に大森に近づき握手をしました。大森も快く握手に応じてくれました。そして彼は私にこう言う。今度は甲子園で会おう」
ここまで言うと、野口は我に返ったように椅子に腰掛けた。
大森は翌年、甲子園の名門校に入団し二年生の夏からレギュラーとして三度の甲子園に出場。そんな男に、今度は甲子園で会おう、と言われたとなると野口の才能を大森は認めたことになる。
「それで・・・」
俺は聞いてみる。
「野口さんは、高校で野球を続けたんですか?」
俺が聞くと、野口は俯いたまま首を何度も振る。
「父が交通事故で亡くなりました。僕が中学三年の冬に」
一家の大黒柱を失った野口家の家族を養うため、野口は高校に行くのを諦め就職した。
「あれから・・・十三年が経ちました。大森はジャイアンツの四番として今も大活躍。去年の契約更改では三億円を越える年俸を獲得。名実共に一流プレイヤーとして活躍しています。そこで私です。中学を卒業後就職した私は、定時制の高校に通いその後も細々と野球を続けました。今も続けています。まあ、朝野球チームですが。今年の朝野球大会で私の所属するチームが県大会で三位になりまして。その時の新聞記事です」
野口は、鞄の中から新聞を取り出す。
そこには、○○新聞杯たそがれ朝野球大会の記事が掲載されている。
「私の名前載っているでしょう」
大会結果と共に紹介されている個人賞の欄に野口の名前があった。
【優秀投手賞】野口大介。
「すごいじゃないですか」
俺が言うと、本当に嬉しそうな表情で野口は照れた。
「たかだか朝野球ですが、私は今でも野球を続けています。もちろん仕事の合間をぬっての練習しかしていないので学生当時より体力も実力もかなり落ちていることでしょう。だけど、僕は思うのです。もし・・・もしあの時父が急死することなく高校に入り野球を続けていたら、僕はどうなったでしょうか?」
「それを・・・空想で見てもらいたいと」
「・・・はい・・・」
用件は分かった。そして、彼が俺にどんな答えを求めているのかも。
こういう客は、非常に扱いやすい。
余計な労力を使わず、彼の機嫌さえ取れば成功といえる。
あとは、いかに空想屋としてもこちらの権威を守りながら結末へと持っていくかだ。
空想屋の仕事は、あくまでもありもしない架空の話を作りあげること。
あの時こうしていればこうなったかもの、もしもの世界を俺の言葉から垣間見てもらうだけであって、当然それが現実とすり変わることはない。
「あり得なかったひとつの事実を、空想によって作りあげる。そして満足する。それ以上でもそれ以下でもない、ここはただそれだけの所です。野口さん、ご理解いただけますね?」
俺が言うと野口は、大きく頷く。
「はい。自分の生きた道はねじ曲げることはできません。それは十分にわかっています。でも自分が出会えなかった道を、せめて空想でいいから見てみたい。そう思ったからここに来たのです。決して現実逃避ではありません」
いい客だ。俺は心の中で思い、空想を始める。