作家と編集者との関係が描かれているということで観に行きました。
米田良三氏の原稿を素人でありながら本にまとめたという個人的な経験が背景にあります。
駆け出し作家と彼の才能を見出した編集者の二人は原稿の扱いで激突します。
年齢差もあるし、アメリカ的というか日本ではありえないようなレベルです。
原稿はバッサリ削られ、表現を変えさせられ、読まれるためにはここまでやるか! という凄まじさです。
自分に照らし合わせてみると、米田氏は年上ですし、私自身は本作りが好きな“一米田ファン”に過ぎないわけで、原稿の手直しはあり得ません。
従ってAB&JC PRESS版の4冊は著者の言いたいことは総て網羅されていますが、予備知識がないと手も足も出ません。
一方、新泉社時代の4冊は社長が手をかけたと思われ、一般読者も何とかついていくことが出来たと思います(それでも難解ですが)。
米田氏の原稿が断られるようになったのは若社長になってからであり、「(歴史or建築?)学会から『建築から古代を解く』を増刷するなと圧力がかかっている」という話を米田氏は語っていました。
「地震と建築と」(この連載の歴史部分のみをまとめたものが『続法隆寺は移築された』)の連載中でも、横槍が入っていたそうです。
少し脱線しましたが・・・
映画の原題は「GENIUS」つまり天才です。
この映画の中で本のタイトルのつけ方を議論する場面があるのですが、この映画の邦題はいくらサブタイトルを補っても魅力的ではありません。
「ベストセラー」 では軽すぎます。
全然内容を表していません。
同じカタカナを使うのであれば「ジー二アス」のままで良かったのではないでしょうか。
この映画で文学作品の完成するまでの生々しい経緯を見ていると、ボブ・ディランのノーベル文学賞には一寸無理があるのではないかと感じました。