テレビの情報番組などではワクチンの効果が絶大だとイスラエルを例に主張しているが、本当にそうなのだろうか?
客観的な事実をもとに確認してみよう。
■世界のワクチン接種状況
日本経済新聞の「チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は」によると。
イスラエルが47%の接種率などと報じていることが多いが、データを見ると累計接種回数が100人あたり47回とある。
新型コロナウイルスのワクチンは2回接種が必要なので、「47%」という表現は間違いなのでは?と思ってしまう。
ま、どちらにしても、イスラエルが人口に対する接種率で世界トップなのは間違いない。
第2位がUAE(アラブ首長国連邦)、第3位がイギリス・・・とある。
では、その効果が既に出ているのだろうか?
■イスラエルの感染者数推移
1月15日あたりまでは増加し続けていたが、それ以降は減少傾向にはあるようだ。
ここ最近の30日間で見てみると
ワクチンの効果なのか、減ってはいるようだ。
ただ、イスラエルはロックダウンも継続中だ。
日本の緊急事態宣言よりも厳しいロックダウンを実施しつつのワクチン接種なので、「ワクチンの効果だ」と言い切ることはできない。
ワクチン完成前にも行われていたロックダウンの効果を考えれば、ワクチンよりもロックダウンの効果なのでは?といった感じに思える。
実際、ワクチン接種が2%前後しか進んでいないドイツでも、ワクチン接種が始まっていない日本でもロックダウンや緊急事態宣言で減少傾向にあるので、ワクチン効果はまだ出ていないように思える。
北半球の多くの国は、大体、年末にかけて増加し、年明けから減少傾向になっている。
なので、イスラエルの最近の減少がワクチンなのか、ロックダウンなのか、年末から新年にかけての人々の気の緩みが落ち着いたからなのかと問われれば、「1番は年末から新年にかけての気の緩みが落ち着いたこととロックダウンの効果で、ワクチンはその次か、まだ効果は発揮できていないかだろう」と私なら答える。
そもそも、ワクチンの効果によって感染拡大を抑えられるのだろうか?
■ロックダウンとワクチン接種のイスラエルと、地域限定の緊急事態宣言の日本の比較
イスラエルの人口は約900万人、日本は約1億2,600万人。
現状の累計感染者数はイスラエルが約63万4,000人、日本が約38万4,000人。
イスラエルは国民の約7%が感染、日本は約0.3%。
イスラエルは国民の約7%がワクチンを接種したも同然の状態とも言える。それプラス世界トップのワクチン接種率。圧倒的に感染者が減少してもよさそうなものだが・・・
1月28日時点の7日間の平均感染者数は、イスラエルが約6,575人、日本が約4,074人。
7日間平均が最も多かった日の平均感染者数は、イスラエルが1月17日に約8,624人、日本が1月11日に6,446人。
最も多かった状態と比べると、イスラエルは約76%に減少、日本は約63%に減少。
日本の緊急事態宣言よりも厳しいロックダウンを実施し、そもそも感染者数も多くワクチン接種も進んで感染しにくい人が増えているであろうイスラエルよりも、他国のロックダウンよりも規制が緩くワクチン接種も始まっていない日本の方が効率よく感染者数を減少させているということだ。
日本は、ワクチン接種せずとも、ワクチン接種が進んでいる国よりも感染拡大を抑えているというのが、現状における客観的な事実だろう。
そのうえ、イスラエルの人口と日本の人口の対比を考えると、イスラエルでの6,600人ほどの感染者は、日本では92,400人の感染者ということになる。
この数値を見ても、日本が如何に感染者数を抑え込んでいるかがわかる。
ただ、それでも日本の医療機関は大変な状況であるという事実を何とかしなければならない。
だからこそ、医療崩壊を防ぐために、より感染予防を徹底しつつ、「発症や重症化を抑える効果」を目的としてワクチン接種を進める必要はあるだろう。
つまり、今のところは「感染拡大を抑えるため」と言うより、「発症や重症化を抑えるため」にワクチン接種をと言った方が正しいのではないか。
「感染拡大を抑える切り札」と表現している報道が多いが、「医療崩壊を防ぐ切り札」と表現した方が、より国民に受け入れられるのでは?と思う。
今後、もし、感染者数が前回以上に減少したら、「ワクチンなんて接種する必要ある??」という雰囲気になるかもしれない。
「感染拡大を抑える切り札」ばかりを強調すると、感染者が減った時に説得力が弱まってしまうのではなかろうか?
こういったことからも、やはり、報道は客観的な事実をもとに正しく伝える必要があると思う。
ワクチンに感染拡大を抑える効果を期待するなら、それは、次の感染の山を抑える効果だろう。
現状の山を抑える効果はワクチン接種よりもロックダウンなどの行動制限の方が効果的だろう。
しかし、ワクチン接種が進めば、次の山は小さく抑えられる「かも」しれない。
ただ、それも、ワクチンの効果がどれだけ持続するのか?、ワクチンがウイルスの変異にどれだけ対応できるのか?にかかっている。
実にあやふやで不確かな状況にあることは変わりない。