日本学術会議の会員任命の問題。

 

政府を批判している人たちの言い分は、「推薦されたものは任命しなければならない。」というもの。

 

一時、日本弁護士連合会元会長の宇都宮健児氏も、天皇が内閣総理大臣の任命を拒否できないのと同様に、内閣総理大臣が日本学術会議が推薦した会員候補の任命を拒否できないと主張していた。

 

天皇と内閣総理大臣を同様に考えてよいのだろうか?

 

 

 

日本国憲法には以下の条文がある。(日弁連の元会長なら当然憲法の条文は知っているはずだが・・・)

 

第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

日本国民なら知っているはず。天皇は日本国の象徴。

 

第二条は皇位は世襲というもので

 

第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

第三条では国事に関するすべての行為を内閣の助言と承認なしに行えないことが書かれている。

 

第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。

第四条にはっきりと、「国政に関する権能を有しない」とある。

 

つまり、第四条の時点で、天皇は国政に対して権限が無いと決められている。

 

そのうえで、

 

第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

とある。

 

第四条で「国政に関する権能を有しない」と定められていることから、第六条の内閣総理大臣の任命と最高裁判所長官の任命についても、「国政に関する権能を有しない」ことがわかる。

 

つまり、天皇による内閣総理大臣と最高裁判所長官の任命は「任命という行為を行うだけ」ということになり、それ以外の権能、権限はない。

 

日本国憲法では、天皇には国政に関する権能が無いので、その任命権にも国政に関する権能は無いということ。

 

 

 

このことから、任命をただの形式的なものにしたいならば、日本国憲法のように規定しなければならないだろう。

 

内閣総理大臣には日本学術会議に関する権能が無いことを明確に規定したうえで、内閣総理大臣が日本学術会議の会員を任命すると定めれば、その任命権には「任命」以外の権限が無いと言える。

 

日本学術会議法では、第七条の2項に、

会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。

とあり、第十七条は、

日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。

とあるだけで、日本国憲法第四条のような「天皇は国政に関する権能を有しない」という前提条件のような規定は無い。

 

よって、現状においては、内閣総理大臣には日本学術会議に関する権能が無いことを明確に規定をしていないので、内閣総理大臣の日本学術会議会員の任命権に「任命」以外の権能が無いとは言えない。

 

任命権を行使するかしないか、任命する際の裁量についてなど、「任命」という行為以外の権限すべてが無いとは言えない。

 

 

 

そこに問題があるとするならば、日本学術会議法の中に、「内閣総理大臣は日本学術会議に関する権能を有しない」という前提条件的な条文を追加するよう改正を訴えるのが筋ということになる。

 

法解釈という曖昧なことをするから面倒なことになるのだ。

 

憲法9条も解釈などで判断せず、日本国民の生命と財産を守るうえでの実態や必要性に合わせてしっかりと改正するべきだと思う。