専門家に指摘されたのに、なぜ、すぐやらないのか?
専門家に指摘されていながら何もせずにいたことで、後に大変なことになっている事例がある。
その一つが東日本大震災時の福島第一原発事故。
日本経済新聞 「福島第1原発、10メートル超の津波想定 東電が08年試算」
2008年に東京電力自身でも試算して認識しており、2009年に経済産業省の審議会でもこれまでの想定以上の津波の可能性を指摘されたにもかかわらず、東京電力は何もせず、政府も東京電力に対して対策を実施するよう指示しなかった。
何もしないまま2011年3月の東日本大震災が発生し、福島第一原発では津波被害による外部電源喪失からメルトダウンとなり、原発事故となってしまった。
2009年の想定以上の津波の可能性を指摘された時点から何らかの対策を実施していれば、外部電源喪失や非常用発電機の水没なども防ぎ、原発事故も起きなかった可能性がある。
2009年に指摘されて2011年3月までに防潮堤のかさ上げは無理だとしても、地下に設置してあった非常用発電機を屋上に移設することくらいはできたのではなかろうか?
外部電源を喪失しても非常用発電機が機能していれば、福島第一原発事故は防げたはずだ。
専門家に指摘され、できることから即行動していれば・・・
そして、もう一つの事例が、今現在大変なことになっている新型コロナウイルスに関係することだ。
東京新聞 「PCR検査強化、保健所増員…10年前に提言されていたのに…新型コロナに生かされず」
毎日新聞 「10年前放置されたPCR検査強化の提言 現場動かせない「1強」首相官邸の油断」
2010年6月の新型インフルエンザ対策の会議において、「地方自治体の意見も聞きながら、 国立感染症研究所、保健所、地方衛生研究所も含めた日常からのサーベイランス体制を強化すべきである。とりわけ、地方衛生研究所のPCRを含めた検査体制などについて強化するとともに、地方衛生研究所の法的位置づけについて検討が必要で ある。」と提言を受けていた。
その後の2010年11月29日に開催された「第13回 新型インフルエンザ専門家会議」において、「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議」の提言を実現すべく行動計画への反映について話し合われている。
しかし、その後、第14回、15回と回を重ねるごとにPCR検査体制強化の話題が薄れていったように感じる。
その後、2011年には東日本大震災、2012年末には民主党政権から自民党政権に移行、2015年に韓国や中国でMERSコロナウイルスが蔓延したが日本ではそれほどの被害にはならず、ということで、PCR検査体制の強化についてはあまり重要視されないままになってしまったのだろう。
だからこそ、専門家からの指摘を受けた時点でできることからでも即対応すべきなのだと思う。
「基本、専門家から問題点を指摘されたら、その時点で即対応することとし、もし、即対応しないのであれば、その理由を明確にすべし」というのを政府、行政に義務付けて欲しいものだ。
そういった観点からすると、2009年に想定以上の津波の可能性を指摘された時の鳩山由紀夫内閣、2010年にPCR検査体制強化の提言を受けた時の菅内閣には、できることからでも即対応して欲しかったものだ。
物事が動き出せば、例え政権交代しても、民主党政権が行った事業仕分けのようなことでもしない限りは、その事業、政策が途中で中断されることは少ないはずだ。それがお役所の特徴でもある。
だからこそ、民主党政権時代の2009年の想定以上の津波の指摘、2010年のPCR検査体制強化の提言には即対応をしておくべきだった。
そうしていれば、東日本大震災時の福島第一原発事故も最小限にできただろうし、今、PCR検査体制の不備で苦しむこともなかったはずだ。
当然、その後の安倍政権中にでも対策を実施していればよかったとも言えるが、対策が動き出してもおらず、忘れ去られた状態から始動させるのは、指摘されたその時始動させることより困難だろう。
PCR検査体制強化、拡充の怠慢についてすべてを安倍政権の責任にするのは無理がある。
指摘をされたその時に如何に早期に形にするかが重要だと思う。
2009年の想定以上の津波の指摘、2010年のPCR検査体制強化の提言に対して、即実行しなかったことでその後どうなったのかが分かっているのだから、これを教訓に法整備するなど、誰か提案するような議員はいないのかねぇ・・・
トヨタ自動車のように問題点を見つけたら即改善を繰り返さなければ、世の中一向に良くはならない。