立憲民主党の枝野幸男氏は、持続化給付金や特別定額給付金の給付が遅いことを政府や首相の責任問題にしようとしているが、それを繰り返してきたことが、結局は、ここ20年から30年ほど日本が進歩してこなかった原因なのではなかろうか?
何か事が起きるとその責任追及ばかりに徹し、担当大臣を辞任に追いやり、大臣の任命責任などと主張して首相を辞任させようと躍起になる。
それは本当に日本国、日本国民のためになってきたのだろうか?
業者への委託問題にしても、制度上の不備にしても、似たようなことは過去に何度となくあったことだ。
その度に担当大臣が責任を取るとして辞任したり、時にはそれが原因の一つとなって首相が辞任するなどしてきたが、それでもまた同じような問題が出現してくる。
そろそろ気付いてはどうだろう?
もしくは、知っているのに、政権与党に打撃を与えたい一心で、毎度毎度、大臣や首相を辞任に追いやることばかりに注力しているのだろうか?
これらの問題は、大臣が誰であろうと、首相が誰であろうと、大臣が交代しようが、首相が交代しようが、起きている。
ということは、問題点は大臣でも首相でもないということだろう。
では、どこに問題点があるのか?
大臣が交代しても、首相が交代しても、政権与党が交代しても変わらずに存在し続けているもの。
それは官僚組織でしょう。
大臣が交代したり、首相が交代しても、多少の人事異動はあれど、官僚組織が変わることは無い。
何か問題が発生したら、大臣や首相が責任を取り辞任しても、官僚は痛くも痒くもない程度の形式的な処分を受けるだけか、人事異動するだけで、組織が責任を問われることはない。
そんな官僚組織が、入札をしたり、業者を選定したり、制度設計をしたり、予算案の詳細を考えたりしているのが実態だ。
大臣や首相が入札をしたり、業者を選定したり、指定したり、制度設計をしたり、電卓片手に予算案の詳細を考えているわけではない。
予算規模や制度の概要やそのイメージを考えるのは内閣の首相や大臣だが、その中身を具体化するのは官僚だ。
今回の給付が遅いのも、首相や大臣があえて遅くしろと官僚に命じたわけではないだろう。
首相や担当大臣としては、スピーディな給付をイメージしていたはずだ。
しかし、今の日本にはそれを実現できるシステムも制度も無く、官僚組織もそれを実現できなかったというのが実態だろう。
PCR検査数だって首相が「少なくしろ」と命じたのだろうか?
そうする意味もわからないし、内閣支持率だって下がるし、国民は不満を強めるだけだし、誰も得をしない。
おそらく、給付金に対しては「早急に」、PCR検査に対しては「できる限り増やすように」と指示していたと推測できるが、実際に実行する官僚組織がそのような体制を構築できない、もしくは、「PCR検査はやたらとすべきではない」という考えだったとしたら、首相の指示が100%実現できるものではない。
それなのに、給付が遅いこと、PCR検査数が少ないことの責任を取れなどと大臣や首相に責任追及したところで、日本の何が変わるというのか?
野党は自身が選挙で少しでも優位になることしか考えていないからこそ、大臣や首相の責任問題にしたがるのではなかろうか?
つまりは、日本国や日本国民のことよりも、自身の選挙のことが最優先だということ。
本当にこの国を良くしたいと考えるならば、大臣や首相を交代させて済ますような、上っ面だけの行動にとどまらないはずだ。
政府が実現しようとしても実現できなかった原因を探し出し、それを正すための行動を取るはず。
本当にこの国を良くしたいのならば、大臣や首相の責任問題にせず、官僚組織の問題点にまで突っ込むべきだ。
上っ面だけで済まそうとせず、問題の本質にまで突っ込むのであれば、私も大々的に野党を支持するだろうが、それができない、それをやらないのならば、今の野党が政権を握ったとしても、この国は何ら変わらないだろうから支持する意味がない。
つまり、野党である意味が無い、野党の存在意義すら無いということだ。
これまで、批判の矛先、責任追及すべき相手が異なっていた、もしくは、上っ面ばかりで足りていなかったことで、根本を正すことができておらず、何度も何度も同じような問題を発生させていたのではないのか?
事の本質をしっかりと見極め、その本質に対して正しく批判し、責任追及をしていれば、今起きている問題も起きていなかったのでは?
この国が変わらないのは、首相や大臣、内閣、政権与党だけの責任ではない、野党も含め、全国会議員とそれに賛同、支持している国民の責任でもある。
もう、いい加減、首相や大臣だけの責任で終わらすのではなく、官僚組織にも問題があり、それも正すべきだと気付き、意味のある正しい批判をその矛先を間違えずに行うべきだ。
今回の給付が遅いという問題については、安倍政権でなくとも同様の結果になっていただろう。
かつての鳩山政権、菅政権、野田政権でも、今以上にスピーディに適確に給付ができたとは思えない。
なぜなら、そもそもそのシステムが無いから!
オンライン申請が悪いと批判する者もいるが、オンラインで申請しても郵送で申請しても、申請から先の手続きは同じだ。
申請された内容と住民基本台帳などの情報を職員が手作業と目視で確認することに変わりはない。
マイナンバーと銀行口座の情報がひも付けされていれば、手作業と目視で確認する作業が省けたはずだ。
一番手間取っている作業が省けていれば、申請後2、3日で振り込みだって可能だっただろう。
それは安倍政権だけの責任なのだろうか?
鳩山政権時代にマイナンバーを導入し、菅政権時代にマイナンバーと銀行口座をひも付けし、野田政権時代に給付システムを構築していれば、今回の給付は申請後数日で振り込みができたのでは?とも言えてしまう。
いやいや、その頃にそんな案すら無かったのだから責任は無い!と言い訳しそうだが、いやいや、その頃にそのようなシステムを構築していた国は既にあったと言い返えすことも可能だし、当時の政権が他国から学ばず、将来を考えてもいなかったと批判することだってできてしまう。
過去の政権も含め、他国に学ばず、面倒なことは先送りにしてきた政治家と官僚組織の責任だし、自身の選挙ばかりを考えている政治家の政府批判に扇動され、踊らされ、上っ面だけの批判に賛同し、上っ面だけの打撃に喜んでいる浅はかな国民の責任でもある。
本当の問題点は上っ面ではなく、もっと奥深くにあり、それを改善しない限り、この国は何ら変わることはないと考えるべきだ。
実際にこの国を動かしているのは、コロコロと簡単に挿げ替えることのできる大臣や首相ではなく、何があっても変わることなく存在し続けている官僚組織だ。
立憲民主党の枝野幸男氏があれほど大臣や首相の責任問題にするということは、自身であれば何ら問題なくスピーディに給付ができるということなのだろう。
できるなら、給付金の事業だけでも野党に委託してみてはどうだろう?
それで問題なく事が進むのであれば、安倍政権だから給付が遅い言えよう。
ちなみに、スピーディという言葉で思い出したが、なぜ、福島第一原発事故の際にSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報を隠してしまったのだろう?
後に確認したらSPEEDIの予測と実際の放射性物質の拡散範囲はほぼ一致していた。
SPEEDIの情報をもとに避難していれば、無駄に放射線を浴びることなく避難できていただろうに。
結局、これについては責任問題にすらならず、有耶無耶なままになっている。
有耶無耶と言えば、東日本大震災の少し前に中国の工作船が海上保安庁の巡視船に故意に衝突した事件も当時の菅政権はその事実を国民に知らせずに隠して有耶無耶にしようとした。
立憲民主党の辻元清美氏は安倍政権を隠蔽体質と批判したが、かつての民主党政権も隠蔽体質だったことを考慮すると、安倍政権に限らず、誰が政権を握っても、誰が首相になっても隠蔽体質になるのだと国民は認識すべきだ。
安倍政権の言うことも、野党の言うことも、どちらに賛同したところで、結局、隠蔽体質は変わらない。
なぜなのか?
安倍政権を支持する、与党を支持する、野党を支持する、かつての民主党政権を支持するのも勝手だが、何を支持し期待しても、結局は同じような結果にしかなっていない事実を国民は認識すべきだろう。
問題は誰が政権を握ろうが起きている。
今、野党が政権を握っても、少し経てば何らかの問題が浮き上がり、同じことの繰り返しとなるだろう。
その原因を追究しない限り、繰り返して終わるだけをさらに繰り返すだけで、日本は何も変わらずに時だけが過ぎ、国民はどちらにしても不満を抱え続けるだけだ。
上っ面だけを批判していても、一時のストレス発散程度にしかならず、本質は何も変わらない。
その繰り返しに国民はいつまで付き合うつもりなのか?