原発事故より交通事故の方が危険性が高いといった意見があるらしい。


福島第一原発事故での死者はゼロだが、交通事故は毎年4,000人以上の死者がいる、だから原発事故は交通事故より危険性は低いという理論なのだろう。


実に短絡的な理論だ。


交通事故での死者の何割かは自らの過失によるものだろう。


それらを差し引く必要があるし、個々人が気を付ければ交通事故による死者をゼロにすることも理論上不可能ではない。


しかし、原発事故は、我々一般市民がどう気を付けていようがどうにもならない。


そして、福島第一原発事故も場合によっては何万、何十万人もの死者を出していたかもしれない事故だと認識しなければならない。


そして、死者を出さずとも、何万、何十万人もの財産を奪い、人生を狂わせ、今後何十年、何百年もの期間に渡って人が生活できない地域を発生させている事実もある。


さらには、福島第一原発事故はまだ終わっていない。


今現在も放射性物質は危険な状況下にあり、原発付近で震度6、7といった地震が発生した場合、最悪は、原子炉や燃料プールが崩壊し、核燃料が野ざらしになる可能性があり、その可能性は廃炉作業が完了するまでの約50年間ずっと続くこととなる。


核燃料が野ざらしとなり放射性物質、放射能が拡散すれば、最悪は東日本全域が高レベルで汚染されることとなり、数千万人の財産、人生を奪うこととなる。


これらは我々個々人が気を付ければ防げるものではない。




原発事故による多くの死者を出しているチェルノブイリでは、半径30㎞の地域が居住禁止となり、半径300㎞ほどの所々にホットスポットが点在しているという。


半径30㎞となると、


中部電力浜岡原発のある御前崎市全域はもちろん、掛川市中心市街地も含まれる。


東京電力柏崎刈羽原発のある柏崎市、刈羽村全域はもちろん、長岡市中心市街地も含まれる。


日本原子力発電敦賀原発のある敦賀市全域


関西電力美浜原発のある美浜町全域


九州電力川内原発のある薩摩川内市全域


日本原子力発電東海第二原発となると、東海村全域はもちろん、ひたちなか市全域、日立市、常陸太田市、常陸大宮市、那珂市、水戸市、大洗町の中心市街地も含まれることとなり、茨城県の3分の1ほどの地域が居住禁止区域となり得る。




このように考えると事の重大さが見えてくるだろう。


たまたま、これまでにこれほどの事故が発生していないだけであり、それは、たまたま、これまでに交通事故に遭っていないことと変わりないとも言える。




少なくとも、今の時点で、原発事故より交通事故の方が危険性が高いと言っているのは、福島第一原発事故がこの程度で済んでいるという認識があるからそう言えるのだろう。


しかし、「この程度」とは、どの程度なのか?単に、4000人死んでいないということなのか?


そして、福島第一原発事故が既に発生し終わった事故という認識があるのではないか?


東日本大震災時の地震、津波によって強度が下がった建屋、そして、未だに状況を把握できていない原子炉、そこへ、再び震度6以上の地震が襲ったらということを考えると、原発事故は今後廃炉作業が終わるまで継続すると認識しなければならない。





地震発生状況を見ると、福島第一原発付近の海、陸双方において地震が多発していることがわかる。


ここで震度6以上の地震は発生しないと断言できる者はいないだろう。