韓国の防空識別圏拡大の真意は明らかに中国、日本への対抗だが、防空識別圏を拡大することについての事前協議やその運用において何ら問題点はないものと思われる。
それゆえ、アメリカも対中国のような対応ではなく、中国と比較して評価できるものとしたのだろう。
この「中国と比較して」が重要かもしれない。
もっとわかりやすく言えば、「中国よりもまし」ということ。
そもそも、防空識別圏とは自国防衛のためだけのものであって、
その下にある島の領有権を主張するものでもなければ、領空を主張するものでもない。
あくまで、防空識別圏という区域を設定し、民間機でもない、自国に正当な用事があるわけでもない、よくわからない不明機が進入した時に検知し、領空に侵入する前にその不明機の目的を判断し対処する。
そのためのラインと区域でしかない。
当然、領空でもないので、防空識別圏内を飛行するからといって許可を得る必要もなければ、許可の申請を強制することもできない。
中国が設定した防空識別圏は関係する日本、韓国、台湾などへの事前協議もなく、防空識別圏であって領空でもないのに飛行計画の提出を要求し、提出の無い航空機に対しては軍用機での対応もじさないと主張したことが問題となっている。
そして、今回の韓国が設定する防空識別圏の拡大によって、一部、日本、中国、韓国、3国の防空識別圏が重なる範囲が発生する。
何度も言っているように、防空識別圏は領空を主張するものではないので、重なることに関しては問題ないだろう。
韓国は韓国が設定した防空識別圏に進入してきた不明機に対応すればよいことだし、日本は日本が設定した防空識別圏に進入してきた不明機に対応すればよいだけのこと。
中国のように、まるで領空のような扱いをし、他国に飛行計画の提出を要求したり、民間機であろうと軍用機で対応するといったことを主張するから問題化するのだ。
中国はそれを国際常識、国際的な慣例と言っているようだが、明らかに間違いだ。
だからこそ、世界のどの国も中国の防空識別圏を認めないのだ。
そして一つ疑問がある。
疑問と言うか、真意が透けて見えているので疑問でもないのだが。
せっかく防空識別圏を設定しても、防空識別圏に進入してくる航空機が中国国内の空港を利用する民間機なのか、ただそこを通過するだけの民間機なのか、それ以外の不明機なのかが判別できなければ意味が無い。
さらに、防空識別圏に航空機が進入したことすら検知できないようでは、まったくもって無意味。
地図上に線を引いただけでは防空識別圏を設定しても無意味で効果もなく、防衛上も何の役にも立たない。
どうも現状では、中国は防空識別圏に進入した航空機を把握できていないようだ。
そのうえ、把握できたとしても、それに対処するための戦闘機を現場まで急行させることもできないらしい。
レーダーによって広範囲に空域を把握できない状態では戦闘機単独で現場に急行させることはできない。
それゆえ、米軍の爆撃機や自衛隊機が飛行しても、その現場まで急行して対処することができなかったわけだ。
中国空軍の現状の能力を世界にさらけ出し、さらに、周辺諸国やアメリカ、オーストラリアなどとの関係も悪化させてしまった。
地図上に線を引いただけという形だけで無意味な防空識別圏によって、世界からの信頼をさらに低下させた。
やはり、本質を見失ってはいけないということだ。
「防空識別圏は自国防衛のためだけのラインでしかなく、そのラインから進入してきた航空機を把握できなければその意味が無い」
それが本質だということを学ぶべきだろう。
今回の韓国の防空識別圏拡大がその本質にのっとってのことなのかは・・・・・・んー・・・・・
まぁ、中国のように周辺諸国に何の配慮もせず、民間機にも飛行計画の提出を要求するような国際非常識なことをしないと約束しているだけ中国よりはましなのだろう。
そういった意味でアメリカは「評価できる」としたのだろう。
本当は中国と日本への対抗と韓国国民への体面を気にしてのことでしょうけどね。