「火狩りの王 牙の火<三>」

「王さまっていうのは、みんながおなかをすかさないよう、考えるんだ。生涯をかけて、他人の暮らす毎日のことを考える。決して人を紙くずみたいにあつかったりしない。……そんなやつがいたら、きっとこの世界はまだ存在していられる。すくなくとも、いまよりもましになることができる」
その声は、地下道の暗がりに貪られて消えてゆく。

煌四はふたたび前へむきなおる明楽の、揺れる髪や、背中に目をそそがずにはいられなかった。

鎌と短刀をたずさえた火狩りが、痩せっぽっちの灯子よりもなお弱々しい存在に思えた。

たすけてくださいと、自分にむかって訴えた灯子よりも、危うくはかない存在に。


「火狩りの王 星の火<四>」
「まわりは全員苦労するぜぇ。なにしろあれは、無鉄砲とむう見ずと運動神経だけでやってきたんだからな。あとは運。……権力者なんてのはなあ、自分にとってはなんの恨みもない連中となんの恩義もない連中をまとめて束ねて、きらわれ役をやるもんだろうよ。あのお人よしに、そんなこと、まともに務まるかよ」
「そいですから、照三さんが手伝うてあげなさるんでしょ?」
 

 

王を描く小説では、12国記が好きでいつも頭にいるのです。

統治王・祭祀王(麒麟)の描かれ方が、

歴史を楽しみ始めたら、さらに目を開かされてグイグイきています。

 

火狩りの王では、

統治王と祭祀王も神族が務める世界で、

市井の人々の生活が描かれて、

首都の公害、

ひとつひとつの特産を持つ村。

荒ぶる蜘蛛さん炎魔さんたち。

主人公の方言はどこでしょうね、大好きです。

空に駆け上がるような展開で、一気に読み終わりました。

後半は、何故か藤原カムイさんの「H2O」を思い出しました。