「すみません。それは古墳時代のものですか?」
「だったらなんだ」
「いえ、双方の合意があれば、いくらで取引しようが構わないと思います。けれど、もし古いものであるというなら、目を瞑ることは出来ません」
売り手の顔色がおかしい。還暦の男は、先輩に怯える様子はないがいぶかしんで見ている。先輩は還暦の男を見る。
「すみません。もしよろしければ、勾玉の穴の部分を確認してもらえないでしょうか? 穴はどのように開いていますか?滑らかなあとですか?」
先輩の言葉に還暦の男は首を傾ける。
「なんでだ? 普通、綺麗なものだと逆に時代が新しいのではないのか?」
「いえ、昔は機械で開けることなく、砂と木や鉄の棒でひたすら穴をあけるという途方もないことをやっていました。それゆえ、傷は見えないはずです。あと付け加えると---


当時の製法で穴を開けると、穴の大きさは開け始めた方向の方が大きくなります。もしくは途中で裏返して反対から穴を開ければ、真ん中が狭まった砂時計形になるはずなのですが」

「この中に偽物が交っていませんか?」

(「薬屋のひとりごと」の日向夏さんの小説)

 

玉作部の日本海側の玉作遺跡分布を見て。

勾玉やビーズも、

完成までの村々での分業には気の長い作業を想像していました。

 

冬作業としては、手がかじかんで大変だったろうなと思います。
良い品を出荷できた時の喜びは、誇らしかったろうなぁ。

自信作を、春/夏に開かれた市(いち)に持っていき、

農機具に加工する鉄や、きれいな布や、毛皮など、

良いものと交換できたら村が潤います。それで、ごはんも食べられます。

 

 

自分は、目利きでも、コレクターでもありませんが

そんな仕事に代金を払えるなら万歳です。

時々取り出して眺めながら、酒をちびりちびり飲めたら素敵です。