汽車から見渡す限り、寸尺の土地も鋤を用いて熱心に耕されている。その大部分は米作のため灌漑されており、水流も豊富である。いたるところに村が散在し、灰色の草屋根におおわれた灰色の木造の家屋や、ふしぎな曲線を描いた屋根のある灰色の寺が姿を見せている。そのすべてが家庭的で、生活に適しており美しい。勤勉な国民の国土である。雑草は一本も見えない。どこでも人間が多いという点を除けば、一見したところ何も変わったところはなく、それほど目立つ特色もない。
関東平野についての一文。
絵も描く作者の印象が灰色一色なのが目を引きます。
木材は、油を塗らずにそのまま経年劣化していくとシルバー(灰色)に。
雑草が見えないほど毎日手入れを欠かさない畑と、
建物、景色の色合いの対比がまぶたに浮かびます。
今の自分が当時にタイムスリップしたら似た衝撃を受けるのだろうなと思います。