保江
月がどうやってできたかという説は三つあり、どれが正しいかは、徐々にわかりつつあります。 まず、月と地球が同時に生まれたという双子説、次に地球の一部がとび出してできたという親子説。でも、昔、アポロ宇宙船が月面に行って、石を採取して調べたら、地球は47億年前にできたのに、月の石は53億年前にできている。月のほうが古いので、同じ時期に生まれた双子星とか、地球の一部から月が生まれたという親子説は消えたんです。 そしてもう一つが、彗星なり何かが遠くからやってきて、地球のまわりを回るようになったという説。ただし、これは物理学上、あり得ないことです。
稲葉
あり得ない?
保江
もちろん。
稲葉
だって木内さんは…。
保江
通常の物理学的常識では、絶対にあり得ない。まず、そこから説明します。地球の近くに、どこかよそから何かの天体がくる。すると---高校の時に習いませんでした?「エネルギー保存の法則」というの。(略)
これは彗星でも同じです。地球にぶつからずにそばにくるだけでも同じ。遠くから地球にやってきたやつは、必ず遠くに戻らなくちゃいけない。絶対に。
稲葉
そうなりますね。
保江
止めるには、ロケットエンジンをふかしてスピードをおとさなくちゃいけない。(略)
そうしない限り地球のまわりを回るようにはできなくて、飛んで行っちゃう。
稲葉
でも、木内さんは彗星が月になったといっていますよね。
保江
そう。だからすごいんです。この理論を知っていたら、普通はそんなこと誰もいわない。もちろん木内さんだって、この理論は知っていますよ。でも彼は見てきたから、見たままをいう。そこでは、通常の物理法則をくつがえす現象が起こったわけです。
稲葉
どんな?
保江
そこで出てくるのが先ほどの「水」です。
月と地球の間には水があった。溶けた大量の水が引力で地球に引っ張られたと、先程話しましたよね。
本来なら、その彗星はスーッと近づいて、また同じように遠ざかるはずだったのに、水が地球に引き寄せられた。水というのは、粘性が強い液体です。吸着力があるんです。それで、水によって彗星が地球と吸着されて結ばれた状態になることで、スピードが落ちた。その結果、水を地球に落としながら、地球のまわりをグルグル回るようになったんです。
稲葉
面白いですねぇ
保江
しかも、そのとき、水で結ばれて周囲を回るから常に一面だけを地球に向けるようになった。
稲葉
ヒモが付いているみたいに。
保江
そうそう。その水が全部吸い取られたあとも、そのまま地球に常に一つの面を向けるようにしか回れなくなった。これも「地球と月が水で結ばれていた」というこの理論でしか説明ができません。木内さんがもし見ていなかったら、とてもこんな発想はしないでしょう。物理学の力学理論では、遠くから来たやつは必ず遠くに戻らないといけない。それを熟知しているからか、机上ではそんな発想はしないけれど、彼は実際に見てしまった。
水が月から地球にジャージャーと流れてきた。「あ、水の粘性でストップしたのか」と。
稲葉
すごいですね。大発見ですね。
保江
大発見ですよ。だから彼も堂々と(略)論文に書けばいいのに、やっぱりちょっと、物理学会の論文には書きにくいみたいですね(笑)