15年以上前に秩父町層の産地で採取したツノザメの仲間の歯化石を二つアップします。



一つ目は
高さ4mm、幅8mmで、ツノザメとしては大型です。


唇側面です。




舌側面です。



上(歯冠側)から撮影しました。
主咬頭の厚みが薄いのがわかります。



下(歯根側)から撮影しました。
歯根が上下(唇舌方向)に薄いのがわかります。




唇側面を拡大してみると…
主咬頭と遠心踵の切縁に鋸歯が見られます。


母岩から外す前の写真でも、鋸歯が良く分かります。


秩父町層が約1500万年前の中新世の地層であることや、スクアルスとしては大型であること、鋸歯があることなどから、メガスクアルス属の歯化石だと考えています。

Megasqualus sp. (Chichibumachi formation, Saitama)

メガスクアルス属は主に中新世の地層からの産出が報告されており、絶滅種です。






二つ目は
高さ2mm、幅4mmで、歯冠、歯根に一部欠落した部分がありますが、スクアルス属だと考えています。


唇側面です。



舌側面です。
Squalus sp. (Chichibumachi formation, Saitama)



上(歯冠側)から撮影しました。
主咬頭の厚みが薄いのがわかります。


下(歯根側)から撮影しました。
上下(唇舌方向)に薄いのがわかります。


Megasqualus属、Squalus属のサメの歯化石とも前回までアップしていたProtosqualus属のサメの歯化石に比べて唇舌方向に薄くなっていることがわかります。



今回アップした二つの化石の大きさの違いを見るために、並べて撮影しました。




メガスクアルスが大きいことが良くわかります。



白亜紀後期の足沢層(約8900万年前)と新生代中新世の秩父町層(約1500万年前)のツノザメの仲間の化石をアップしてきましたが、これで、ツノザメ科をなすProtosqualus属、Megasqualus属、Squalus属のサメの歯化石をアップできました。

暑くて化石採集に出掛けられないので、これまで採集してきたツノザメの仲間のサメの歯化石を深度合成で撮影し、6回に渡り纏めてきました。
ご覧頂きありがとうございました。

双葉層群足沢層で採取したツノザメの仲間の特徴、形状や大きさを見るために、新たなツノザメの仲間の写真をアップします。2021年に採取しました。


高さ2mm、幅3mmのプロトスクアルス属のサメの歯化石です。



唇側面です。


舌側面です。
Protosqualus sp. (Ashizawa formation, Futaba group, Fukushima)




上(歯冠側)から撮影しました。
主咬頭に厚みがあります。これは、プロトスクアルス属の特徴の一つです。



下(歯根側)から撮影しました。
歯根が写真上下(唇舌方向)に幅広になっています。これも、プロトスクアルス属の特徴です。




高さ2mm、歯3mmのプロトスクアルス属のサメの歯化石が如何に小さいか、10円玉と比較して見ました。

非常に小さいことが分かります。
これだけ小さいと、採集時に見逃してしまうこともあると思いますし、採取できてもクリーニングが大変です。
しかし、貴重な化石ですので、大切に扱っていきたいと思っています。
双葉層群足沢層で採取したツノザメの仲間の歯化石を二つアップします。



その1です。
このサメの歯化石は以前にもアップしました。
母岩についたままで、唇側面が見えています。
プロトスクアルス属だと思われます。
Protosqualus sp. (Ashizawa formation, Futaba group, Fukushima)

が… 


主咬頭を拡大してみると…


切縁に鋸歯が見られます。


これまでにアップした足沢層のプロトスクアルス属のサメの歯化石には、主咬頭の切縁に鋸歯は見られませんでした。
プロトスクアルス属には主咬頭の切縁に鋸歯がある種もあるとのことですので、これまでにアップしたものとは異なる種かも知れません。


その2です。


母岩についたままで、唇側面が見えています。
高さ3mm、幅5mmです。
エプロンが非常に明瞭で、遠心踵も上方に発達しており、スクアルス属の特徴が見られます。
このサメの歯化石はスクアルス属だと考えています。

Squalus sp. (Ashizawa formation, Futaba group, Fukushima)

一連の同定が正しければ、双葉層群足沢層からは幾つかの異なる属、種のツノザメの仲間の歯化石が産出すると考えられます。


以前 足沢層で採取した高さ3mm 、幅5mmのツノザメの歯化石です。
その形状(エプロン、歯根、遠心踵)からプロトスクアルス属に分類されると考えています。

唇側面です。

エプロンの形状が三角形に近く、これが、プロトスクアルス属の特徴の一つと言われています。

舌側面です。

Protosqualus sp. (Ashizawa formation, Futaba group, Fukushima)

このサメの歯化石も遠心踵を拡大してみると


突起が一つ確認できます。鋸歯か?

前回、前々回アップした化石の遠心踵と比較してみます。鋸歯状の突起の数が3、2、1と並べてみます。





鋸歯だと面白いなと思います。

いずれの遠心踵も上方にあまり発達しておらず、これもプロトスクアルス属の特徴の一つと言われています。


更にもう一つ、双葉層群足沢層で採取したツノザメの歯化石をアップします。高さ2.5mm、幅5mmです。

唇側面です。


先にアップした化石に比べるとエプロンがややはっきりしてきますが、三角形に近く、やはりプロトスクアルス属の特徴に近いのではないかと思います。


舌側面です。




遠心踵を拡大してみると

遠心踵にこれまでにアップした足沢層産出のツノザメの歯化石の様な鋸歯状の突起はみられません。
また、遠心踵がこれまでにアップしたツノザメの歯化石に比べて上方に発達しており、遠心踵が上方に大きく発達するのはスクアルス属の特徴の一つと言われていますが、その他の特徴から、このサメの歯化石も、やはり、プロトスクアルス属であろうと考えています。

Protosqualus sp. (Ashizawa formation, Futaba group, Fukushima)

プロトスクアルス属のサメの歯化石は、白亜紀のサメの歯化石として報告されており、日本国内では北海道と福島県でしか産出が報告されていないようです。


(参考文献)
渡部世利英(2022 MS) 福島県いわき市の上部白亜系双葉層群足沢層より産出した板鰓類化石群集, 筑波大学大学院生命地球科学研究群地球科学学位プログラム修士論文.

田中猛(2023) サメの歯化石図鑑



双葉層群足沢層の化石産地で写真のサメの歯化石をゲットしました。






非常に小さな化石で、慎重に周りの岩を取り除いたところ…






ツノザメの仲間の唇側面が現れました。




更にクリーニングを続け、母岩から外しました。



唇側面です。


舌側面です。
高さ1.8mm、幅3mmの小さな化石で、エプロン、歯根の形状などから、プロトスクアルスの歯化石と考えました。

Protosqualus sp. (Ashizawa formation, Futaba group, Fukushima)




このサメの歯化石も遠心踵を拡大してみると




鋸歯?が二つ確認できます。
前回アップしたものは、鋸歯?が三つ確認できています。

偶然か、はたまたこんな形状の遠心踵なのか?
妄想はますます膨らみます。


深度合成と言う撮影方法が使える様になり、小さな化石を拡大しても、ピンボケになりにくくなったのでこれまでに採集したツノザメも含めて比較してみたいと思います。