②武器輸出のシェア拡大を図る中国

かくして中国は軍事超大国の仲間入りを果たしたわけだが、中国の世界における軍事影響力はこれにとどまらない。中国は現在野心的な武器輸出戦略を遂行中である。

中国はひんぱんに自らの先進的(軍事)技術を、それを有さぬ国、あるいは同盟国がかかる技術をなかなか渡してくれない国にすすんで売り渡している。軍事用ドローンに対する市場がその一例である。この技術は急速に発展してきたものであるが、非軍事技術と軍事技術との境界に大きな問題を投げかけている。アメリカはこの分野における第一人者であるが、アメリカはこの軍事用ドローンの販売をNATO同盟国でも英国等最も緊密な数ヵ国を除いて拒絶している。フランスは現在、バインダー用のドローンの提供を受け、これを軍事用ドローンに改造する計画をたてている。

中国はかかる制限にしばられない。世界の兵器展覧会において、(中国側が)展示する無人型飛行兵器の横に並べられた、搭載可能な装備は人の目を引きつけるものである。「ミリタリー・バランス」によると、中国はかかる武装型UAVを数多くの国に販売しているという。その国とは、例えばエジプト、ナイジェリア、パキスタン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ミャンマーなどである。

このことは意図せざる結果をもたらした好例である。米国は無人兵器技術の移転に二の足を踏んだが、このことは中国に(兵器)市場を「開放する」結果となっている。かかる躊躇が無人兵器の拡散に大きな役割を果たしたことは免れがたく、UAVを単に情報収集のみに用いている国が、かかる無人機の武装化型の追求を促進する結果となっている。

(下図;世界における武装型UAVの市場領域図。アメリカ(緑)がEUの一部にしか武装型UAVを販売していないのに対し、中国(紅)は中東諸国、アフリカ等広範に自国製UAVを売り渡している)

米国と西欧の武器商人たちは、中国を、増大する商業上の脅威とみなしている。

10年前と比較すると、市場において高性能な兵器を提供する中国の存在は重大なものとなっている。武装型UAVの例が示すように、中国は、西欧の企業やその政府の多くが神経質になっている市場の参入に積極的である。

IISSの専門家が語ったところによると、中国は取引における全ての面で勝ち続けているという。例えば中国からは、西欧の技術の4分の3の能力で作られた兵器を西欧の半分の価格で入手できるのである。ビジネス上十分お買い得である。

地上兵器の輸出については、中国は航空産業ほど注目をあびていない。顧客に関しては、いまだにロシアやウクライナのような国と競争している。だが、ウクライナが2014年にタイとの戦車取引をするための時間を作ることができなかった間に、タイは、中国からVT4戦車を購入してしまった。去年(2017年)、タイは中国から戦車をさらに注文している。

IISSの専門家によれば、中国は特定の市場向けの兵器を開発予定という。

専門家が指摘しているのは、例えばアフリカ諸国向けの新型軽量型戦車のことである。アフリカ諸国の道路やインフラ施設は、他の国家が提供する重量型モデルでは対応できないのである。

 

③結語

精巧な兵器類の供給源として、中国はその役割をますます増大させており、この事実は隣国のみならず多くの国を憂慮させるものである。西欧の空軍は30年にわたってその優位を享受してきた。だが、“反介入”戦略に基づき、中国が武器を提供し続ければ、他の国は中国に容易に追随するようになるだろう。

西欧は中国と衝突することなどないと考えていたが、精巧な中国製兵器システムが他国の手にわたることは十分ありうることである。あるIISSの専門家が示すように、「外国に干渉する方が受ける危険性は低いだろうという考えは、問い直される時期にきている」