「中国」の台頭は欧米にとって愛憎相半ばするものである。中でも「ソフト・パワー(軟実力)」のおかげで中国の国際的影響力が上昇したことについては、それを認める人もいるが、それを「苦々しく」思う人もいる。

 

イギリスの「エコノミスト」は、ここ数年の中国の台頭は決して「ソフト・パワー」の体現ではなく、一種の「鋭実力(Sharp power)」、すなわち「文化の壁を貫き、西洋の価値観を改変する刃」であるとしている。 「エコノミスト」はその文章の中で、中国がどのようにして他の国家に浸透し、西洋国家のオピニオンリーダーを統制するかを分析している。そして、オーストラリアとドイツを最も早くその被害を受けた国家の例としてあげ、西洋は早く連携して中国の干渉から免れ、国家の政策と民意を規制すべきであるとしている。

「エコノミスト」は、オーストラリアが最初に中国に「五星紅旗を立てられた」国家であると指摘する。

オーストラリア政府は1月5日、ある外国の「前代未聞にしてますます顕著になった」浸透工作に対処するための法案を提出した。その週、オーストラリアの野党の代表者でベテランの上院議員が、中国からの金銭収受の嫌疑で議員を辞職している。ドイツでは1月10日、中国がドイツの政治家や官僚を養成しようとしていることを非難している。1月13日、アメリカ議会は北京政府の浸透工作についての公聴会を開催した。

 

中国のこれらの策略について「エコノミスト」は「シャープ・パワー」と呼んでいるが、その名称はすでにアメリカの「全米民主主義基金」によって提起されたものである。

ソフト・パワーとは文化や価値観により一国家の対外的影響力を強化するものであるが、シャープ・パワーとは専制国家の対外的影響力の強化であり、その狙いは民意の操作である。

シャープ・パワー(鋭実力)のカギは「鋭」の字にある。穿透性(壁を貫くこと)であり、その目標は塑造性(型にはめること)である。

 

「エコノミスト」の文章によれば、中国は一貫して入国証、援助金、投資等の手段でその目的を達成しようと計画してきたが、この種の行為は最近、威嚇性と全面性を具えたものに変化した。

シャープパワーには扇動、虐待、圧力という手順が含まれており、影響を与えている国家が自己規制を行わざるをえないように仕向け、最終的にはそれらの手段を全く使うことなしに中国資本や中国からの利益を失うことを恐れる国家が中国に無条件臣従することにあるという。

オーストラリアやニュージーランドでは、中国の資金には、政党や個々の政治家に対する献金による政治的影響力の買収の嫌疑がかけられている。ドイツの情報機関によれば、中国人工作員は人材募集者やシンクタンク役員になりすまし、商業用の求職情報サイトにリンクインして、旅費免除により政治家や政府役員を勧誘しているという。

中国側の圧力が上昇すると脅迫の段階まで至るが、ある時はそれが大胆な行動に至ることがある。例えば北京政府はノルウェー政府がノーベル平和賞を劉暁波に授与したことを理由に、ノルウェー政府に懲罰を与えている。

別の学者はかつて中国に批判的であったために論壇への出席を拒まれたり講演を阻まれたりしている。学者たちの中には中国が「敏感視する」テーマについて研究を避けている者がいる。

 

「エコノミスト」の文章では、「孔子学院」は中国政府の「武器」となったといわれている。

「孔子学院は対外交流を行い、中国語教授の奥深さのゆえに外国人に喜ばれているが、注意しておかないと、中国語を学ぶ学生らが中国の「集権主義」に対して恋慕の情が生まれることになる」

数多くの大学がすでに孔子学院の中国語科目を自分の大学の言語科目として代替しているという。

「これは中国政府による集中的投資の結果である」

 

「エコノミスト」はいう。「中国の“平和的台頭”を確保してやるために、西洋は北京政府に発揮させるための隙間を与えたが、このことは中国が何をしても許されることを意味しない。透明で公開された社会であれば中国のシャープ・パワーも失敗に終わることもあるだろう。情報に批判的で、公正で独立したメディアこそ、扇動に対抗する最も優れた防御である」