最近知り合った女性が、両親を10年間介護して看取ったと知った。
父親は腎臓を患い、母親は認知症。
家族は他に誰もいない。
父親のベッドの下の床に寝る日々。
自宅はバリアフリーではなく、老人には危ないので、売ってマンションに引っ越した。部屋の造作をなるべく同じにして、環境が変わったと感じさせないようにした。
母親は他人に看られるのがいやで、自分じゃないとだめだった。
結局二人は7年前、4ヶ月のうちに、相次いでこの世を去った。
「家も何もなくなったけど、私には何の後悔もない。」
とその女性は言い切った。
私が今いるトンネルを抜けた人が目の前にいる。
いつかは抜けられるのだ。この人のように。
そう思うだけで少し心が明るくなった。
またすぐ暗くなりそうだけど…。
しばらくは彼女のことを思って、心の平静を保とう。