日銀の通貨発行益について-----------佐野雄二 | ワールドフォーラム・レポート

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「日銀は、財務省・造幣局を通貨発行権付きで500兆円で買うべし!」

という、私の前回のメルマガにつき、何人かからコメント乃至質問を受けました。その内、身元のはっきりしている方の質問につき、以下に答えさせていただきます。質問は多岐に渡るため、答えやすいものから答えていきます。


 日銀券は日銀にとって借用証書であり、債権者は日銀券を保有している人である。それゆえ日銀が発行券残高を負債に載せるのは妥当ではないか?

・・・・・日銀が、製造原価20円の1万円札で9980円の利益を得ながら通貨発行収入を計上せず、負債の部に計上しているのは法人税逃れであることは間違いありません。民間企業でこんなことをやったら「売上隠し」で、罰金ものです。

「負債」であるという論者は、「日銀券は日銀にとっては借用証書。債権者は日銀券を保有している人」と言いますが、では、その債権者への支払期限はいつで、支払の呈示があったら、日銀は何をもって支払いますか?



日銀券は、「支払手形のような、いずれ満期が来て支払い義務のある負債」とは明らかに違います。

「負債」とは、法律的な支払義務のある債務に限り、それ以外は備忘記録として「貸方」に載せているだけです。日銀発行券残高は後者に当たります。


ちなみに、日銀は、通貨発行益を売上計上しないことにつき、「将来、電子マネーの普及などで日銀券発行残高が減少する可能性を考慮して、保守的な会計を行っている」との主張のようですが、創立以来126年間、1度も売上計上しないのは保守主義の枠を外れています。



政府貨幣もかっては、発行額の100%を準備金として積み立て、内部に利益をため込んでいましたが、1982年からは、回収リスクとして5%の準備金を積み立てるだけにしています。原則として日銀もこれに習えば良いでしょう。


⑵「国債所有者が市中銀行から日銀に移っただけでは、国債の償却にはならないのでは?

・・・・もちろんなりません。私が述べたのは、「通貨発行権つきで造幣局を日銀が400兆円(金額は少し、落とさせて頂きます)で買い取る。その対価として、手持ちの国債65兆円、残り335兆円は、インフレにならないよう注意しながら、買いオぺの対象を当分、国債に限り、買い取った国債で約30年分割で政府に支払う」という意味です。

買い取った国債を(すぐに対価なしで)政府に渡すわけですから、国債償却になります。


 日銀が市中にお金を流す方法として、企業の社債やCP(コマーシャルペーパー)を直接購入するのではなく、市中銀行の持つ国債を優先的に買いオペの対象とする。そして取得した国債を造幣局の買い取り資金に充てる。市中銀行は、国債の売却代金を企業の社債やCP購入に充てるよう指導する。

・・・私の言っていることに矛盾は無いと思いますが?

なお、米国債は金利が高いですが、日本の国債は低金利ですので、銀行も国債の売却代金で企業の社債やCPを買う、というので良いと思います。問題は、日銀は企業金融に直接乗り出すな、市中銀行を通じて行え、という点が重要です(tuduku)