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トービン税=通貨取引税と「半固定・半変動性為替システム」との比較

                      文責  佐野 雄二(王道日本代表)


2008年2月、日本において、国際通貨取引税推進の国会議員団がつくられた。財務省や外務省なども課税検討に前向きになってきているこの制度と、私の提唱する「半固定・半変動性」の為替システムとの比較をしておくことは有意義なことと思われる。 


国際通貨取引税は、通貨のグローバリズムを規制するための税として、イエール大学のトービン博士が提唱した「トービン税」の流れの中にある。これが注目を浴びたのは、アジア通貨危機の発生による。


経済にとって国際取引決済の手段であるはずの通貨価値が、投機によって変動する。「何とか通貨への投機を減らして通貨価値を安定させることはできないか」という問題意識に、税収を南北問題を解決するために使えないかという要望が後押しして、税率を低くしてでも導入しようという機運が盛り上がりつつある。


 だが、この通貨取引税は、次のような問題を抱えている。 

  1. 通貨取引税は1国だけの導入では実効性がない。課税国を避けて通貨が取引されるからである。だが、多数の主要国で一斉に導入することは困難とされる。
  2. また、通貨取引税は、あらゆる通貨取引形態に対して課税する必要がある。課税できない取引形態のものがあると、租税回避されるからで、この点も多様化する為替取引形態の中で問題である。
  3. トービン税への批判として、「投機でない取引にも課税してしまう」、「税率を低くすれば、それ以上の利益を生むであろう集中した投機には無力である」というものがある。この批判に対し、二段階トービン税が提案されたが、検討はあまり進んでいない。
  4. 世界同時に課税しなければ効果が薄いとすると、税収の使途もIMFやWТOといった国際的官僚機関が介在しやすい。だが、彼らに税収の運用を決めさせるのは問題である。何故なら、それらの国際機関こそグローバリズムを推進してきたからである。援助を受ける側の途上国や民衆の意見を反映させるグローバル民主主義が必要とされるが、実現の道は遠そうである。
  5. 通貨取引税を課税し、ODAなどの対外援助財源にしたとしても、たとえば現在のアフリカでは4日間で280億円もの金額が債務返済のために消えてしまうという現実がある。このため、一方で債務免除の必要性が主張されているが、債務免除したとしても、並行して途上国の自立を考えなければ、南北問題の真の解決は困難である。

    つまり採用国の経済的自立を促す通貨制度が必要で、こうした要請に答えられるのは、私の提唱する「半固定・半変動性の為替システム」であると考える。


    王道日本の会