
今回は、【世界の論考 – 異論反論】高市早苗首相、就任2年目の展望、というテーマで、最近の論考を、論点整理したいと思います。毎回ホットなテーマで、世界の論考を、概略(未定稿ですが)紹介します。皆さんの知的関心の一助になれば幸いです。
高市早苗首相が6ヶ月前の衆議院選挙で自民党を率いて3分の2の議席を獲得して以来、彼女は野心的かつ時に意見の対立を招く法案に取り組む中で、党内や連立与党からの課題に直面してきました。
しかし、比較的堅調な国民の支持と、過去の極めて人気が高く政治的に強靭だった首相たちに見られたのと同様の世論調査の傾向に支えられ、彼女は依然として強固な地位を保っています。
こうした国民からの支持は彼女に「支持率という盾」をもたらし、批判者やライバルが彼女に挑もうとする意欲を削ぐ要因となっています。
ただし、この盾には条件があります。それを維持するには、彼女の政策課題が有権者の優先事項に合致していることを示す必要があります。秋の国会に向けて準備を進める中、彼女がこの「政治的資本」をいかに効果的に活用し、党内や連立与党の幅広い関係者を結束させ続けられるかが試されることになります。具体的には、間近に迫った内閣改造、国内政策の主要項目の実行に向けた推進、そして対外的な公約の維持といった課題が待ち受けています。
高市内閣の支持率は昨年10月の就任時と比べて低下しましたが、主要な世論調査において支持と不支持の間に大きな開きがあることは、高市氏が現在享受している優位性の大きさを物語っています。支持率は当初の高水準から低下したものの、その差は近年の基準から見れば異例なほど大きく、支持と不支持が逆転する兆しはまだ見えません。その推移のパターンは、過去数人の首相に見られたような急速な支持の崩壊とは異なり、むしろ安倍晋三元首相の第2次政権発足当初の力強い状況に似ています。もっとも、安倍氏の長期政権の例が示すように、政治的に強靭な指導者であっても、やがてはその「支持のクッション」を失う可能性があることには留意が必要です。
高市氏への支持率は、政権発足時の64.4%から共同通信の最新の世論調査では50.2%へと低下しましたが、その支持の内訳を見ると、彼女の政治的基盤はこの数字だけから受ける印象よりも強固であることがうかがえます。日本における内閣支持率は、しばしば消極的な支持を反映しているものだからです。例えば、2022年5月の共同通信の世論調査では、当時の岸田文雄首相の支持率が61.5%に達した際、支持理由のトップは「他に適任者がいない」(43.3%)でした。これは近年の歴代政権において、しばしば40〜50%台で推移してきた傾向です。
一方、高市氏の場合、この数字は昨年10月の18.1%から直近の8月調査では30.5%へと上昇を続け、支持理由として最大の割合を占めるに至っています。とはいえ、同調査において彼女を支持する層の約61%は、経済・外交政策への期待、首相への信頼、リーダーシップへの確信など、より積極的なリーダーシップや政策に関連する理由を挙げています。現時点では、彼女が多くの前任者よりも強固な国民的基盤を維持していることを示唆しています。
高市氏の国民からの支持は、自民党内での立ち位置にも影響を及ぼしています。「首相プレミアム」(内閣支持率から与党支持率を差し引いた値)は、近年の水準から見ると大きく、2000年代初頭に高い人気を誇った改革派の小泉純一郎氏の時代に見られたレベルに匹敵します。これは、彼女の政治力が単なる自民党への党派的支持だけでなく、彼女自身の個人的な魅力にも一部支えられていることを示唆しており、政策課題の形成や政治的に困難な決断を行う上で、より大きな裁量をもたらしています。
自民党内において、高市氏に対する深刻な挑戦の動きは今のところ見られません。しかし、高市氏には自身の派閥基盤がありません。高市氏の長年の盟友である山田宏氏が5月に立ち上げた「国力研究会」は、メディアから大きな注目を集めました。同会は、以前高市氏に関連していた政策勉強会から発展したものですが、高市氏自身はこの新しい会合のメンバーではありません。報道によれば、麻生太郎元首相や、かつて高市氏と党役員ポストを争った数名を含む、自民党議員の8割以上が参加しているとされています。しかし、「国力研究会」は、特定の政治グループや派閥の結成を示すものというよりは、むしろ政府・与党間の調整や、財政出動・安全保障政策・情報機関改革といった政権の重要課題について、自民党内の幅広い関係者が意見を交わすための広範な政策フォーラムとして捉えるのが適切でしょう。同会のこうした裾野の広さは、高市氏の政策課題に多くの議員を巻き込む助けとなる可能性がある一方で、結束力を削ぐ要因にもなり得るため、同氏にとっての確固たる支持基盤としての役割を果たせるかどうかは不透明です。
数字の上で見れば、7月に閉会した国会は高市氏にとって成功と言えるものでした。政府提出法案はすべて衆参両院を通過し、政府として法案成立率100%を達成したのは戦後わずか4回目のことでした。しかし、そうした統計の裏には、国会運営をめぐる政治的な摩擦が隠されています。その摩擦の多くは、自民党と、新たな連立パートナーである大阪を拠点とする日本維新の会の双方の優先事項が入り混じった、過密な議事日程を調整する難しさから生じていました。
東京以外の場所に「予備の首都」を設けるという日本維新の会主導の法案や、自民党保守派にとって重要な皇室関連法案などは、高市氏が連立政権内でバランスを取らなければならなかった優先事項の違いを反映していました。再審制度改革や国家情報局設置法案といった他の法案も、議事日程をさらに複雑にしました。野党は、与党による強引な議事運営を批判し、時には委員会をボイコットしたり、採決を遅らせるために退席したりするなどの行動に出ました。また、野党は、高市氏のライバルを攻撃する動画をめぐる選挙関連の疑惑についても彼女を追及しました。最終的に国会会期は8日間延長されましたが、これは、選挙で強力な信任を得たからといって、必ずしも円滑な政権運営ができるわけではないことを浮き彫りにしました。
さらに、世論調査の結果は、高市氏が政策課題を推進したことには、ある程度の政治的代償が伴った可能性を示唆しています。日本テレビの世論調査では、国民の関心事と政府の法案・政策課題との間に乖離があることが指摘されており、これが高市氏の支持率低下の一因となった可能性があります。2025年10月の調査では、回答者の92%が、新内閣には物価高対策を優先してほしいと回答しました。8月時点では、64%が政府のインフレ対策を評価しないと答えています。政府は64本もの法案を抱える過密な議事日程を推進しましたが、それらの法案は一見したところ、国民の日常生活における経済的な懸念とは直接的な関わりが薄いものでした。同じ7月の調査では、無党派層の72%、与党支持層の45%が、政府は法案や政策について十分な説明を行っていないと考えていると回答しました。
高市氏が飲食料品を対象とした一時的な消費税減税の推進を決定したことは、インフレに対する政府の対応に国民の不満が高まる中、勢いを取り戻そうとする彼女にとって、政治手腕が問われる新たな試金石となっています。彼女はこの案を当初、1月の早期選挙(解散総選挙)の発表時に提示しましたが、党内では意見が割れていました。7月、高市氏は党に対し、2027年4月から2年間にわたり、飲食料品の消費税率を現在の軽減税率である8%から1%に引き下げる法案の準備を指示しました。同時に、低・中所得者向けの現金給付も組み合わせる方針を示しました。この動きは党内で議論を呼び、複数の党幹部は依然として慎重な姿勢を崩していません。
慎重論の多くは、財源と財政の持続可能性に関するものです。消費税収は社会保障を支える財源であり、提案されている減税は年間約5兆円(317億ドル)の税収減をもたらすと見込まれています。また、高所得世帯も減税の恩恵を受ける上、食費の支出額が大きいために受ける恩恵の絶対額も大きくなりがちであることから、この減税策が適切な対象に向けたものなのかという疑問も呈されています。財政面や事務手続きの複雑さが増すにもかかわらず、政府が1%という税率と低・中所得世帯向けの現金給付を組み合わせた背景には、こうした事情があります。
世論にも同様の葛藤が見られます。NHKの世論調査では、高市氏の提案を支持する回答が49%だったのに対し、反対は39%でした。一方で、財政への影響を懸念する声は67%に上りました。首相自身がこの提案を推進する姿勢を明確にした以上、党内も足並みを揃えるものと見られます。しかし、この減税策がプラスに働くかマイナスに働くかは、政府が説得力のある財源計画を明確に提示できるか、そして、この複合的な施策がインフレに対する国民の懸念に効果的に対処できることを示せるかどうかに大きくかかっています。
高市首相は9月、党幹部の任期満了に合わせて内閣改造および自民党役員人事を行う見通しです。高市氏にとってより大きな課題は、党内での相対的な独自性や首相官邸主導のトップダウン型意思決定を好む姿勢と、党全体からの支持維持とのバランスをどう取るかという点にあります。これまでのところ、メディアの関心は、昨秋の党総裁選での勝利に不可欠な役割を果たし、来年の次期総裁選でも再び重要となり得る麻生派への対応に集まっています。初期の報道によれば、今回の改造は全面的な刷新にはならない可能性があります。注目されるのは、高市氏が党の重鎮やかつての総裁選のライバルを主要ポストに留任させるかどうか、そして日本維新の会との連立の枠組みをどのように正式なものにするかといった点です。また、円安への対応、消費税減税の財源確保、米国との在日米軍駐留経費負担交渉、さらには2025年の日米貿易協定に伴う投資コミットメントなど、日本が直面する課題を前に、経済政策担当チームを調整するかどうかも関心事となっています。
新内閣の発足後、高市氏は再び国会における連立の力学を舵取りしていく必要があります。次期国会では、消費税減税に関する法案が審議されるほか、野党の抵抗により継続審議となっていた日本維新の会主導の衆議院定数削減法案が再び取り上げられる見込みです。衆議院とは異なり、参議院では自民党と日本維新の会の連立与党だけでは過半数に届きません。そのため高市氏は、消費税減税に反対する国民民主党などの野党に対し、個別の課題ごとに協力を求める必要に迫られます。こうした立場の違いを埋め、他の重要政策において国民民主党とのより広範な協力関係への道を開けるかどうかが、今後数ヶ月間の自民党にとってのもう一つの課題となるでしょう。
これらすべての局面において、当面の間、高市氏にとって最大の「盾」となるのは、比較的高い世論の支持率です。支持率が維持される限り、衆議院選挙で歴史的勝利をもたらした首相に公然と異を唱える動機を持つ自民党議員はほとんどいないでしょう。就任から1年という節目を迎え、秋の政治日程は、彼女の政治的基盤と世論の支持を維持できるかどうかを左右するものとなるはずです。
外交政策への影響を考える際、重要なのは方針の転換そのものというより、高市氏が政策の実行に向けてどれだけの政治的資本を投じられるかという点にあります。インド太平洋地域やそれ以外の地域のパートナーと積極的に外交を展開する彼女の姿勢は、日本の対外的な関与における継続性を際立たせています。また、防衛費の増額、防衛産業基盤の連携、同志国とのパートナーシップ、経済安全保障の重視といった日米同盟の核心的な優先事項について、自民党内や日本の政策コミュニティの間で幅広い合意形成がなされていることも、彼女にとって追い風となっています。
日本の近年の防衛改革も、こうした継続性を裏付けるものです。3代にわたる首相交代や当初の財源への懸念があったにもかかわらず、日本政府は2022年の戦略文書で掲げた防衛費増額をすでに実現し、GDP比2%という目標を当初の予定より2年前倒しで達成しました。政府は今後、国家安全保障および防衛政策の指針となる3つの戦略文書の改定も進める予定であり、その中にはドローン戦などの新たな脅威に対応するための最新の脅威評価も盛り込まれる見通しです。この改定作業は次年度予算の編成と並行して進められ、いずれも年内に最終決定される予定です。
日本が戦略的ビジョンを更新する中で、高市氏が比較的堅調な国民の支持と衆議院における強力な基盤を有していることは、彼女がこうした政策実行の実績を維持し、日米同盟の課題に対する日本の変わらぬコミットメントを示す好機となるはずです。
以上です。
【世界の論考 – 異論反論】高市早苗首相、就任2年目の展望
毎回ホットなテーマで、世界の論考を、概略(未定稿ですが)紹介します。皆さんの知的関心の一助になれば幸いです。
