夏の初めにラオバンが連れて来た西蔵犬もようやく暑い時期を越した。チベット高原の一年の大半は寒冷で牛もヤクも長い毛を垂らしている。西蔵犬もたてがみを生やし寒さに備えている。寒冷地育ちの西蔵犬を亜熱帯地の広州の都会でペットとして飼うのはいかがなものだろうか。
数年前、金持連中の間で一頭数千万円で取引されたそうだが、景気が後退し現在は価値はなく、一部は食用とされている。工場の西蔵犬はほぼ一日中工場裏に作った犬小屋で過ごしている。
ただ、毎朝十分間ほどは係りの者が工場の周りを散歩させている。
朝のほんのひと時、工場敷地内のわずかな草むらに横になるとじっと動かなくなる。遥か遠い西蔵高原に思いを馳せているのだろうか。
ただ人間の虚栄心を満足させるために飼われている西蔵犬、なんだかうつろで悲しげな眼をしている。
