育て!女性経営者
中小後継者不足解消に
高度成長期に創業した中小企業が、経営者の引退問題に直面している。深刻な後継者難のため、廃業に追い込まれる中小企業も多い中、女性を後継者として育成しようとする動きが注目を集めている。
阪南大で基礎講座◇大阪市は起業支援
大阪市中央区のビルの一室で昨年12月、中小企業の男性社長が熱弁を振るい、19~50歳の女性ばかり18人が真剣な表情でメモを取った。阪南大(大阪府松原市)が今年2月まで計10回開いている「女性経営者育成講座」の一こまで、中小企業の後継者や起業を目指す女性らが、会社経営の基礎知識を学んでいる。
この講座の狙いは、中小企業の後継者不足の解消だ。高度成長期の1950~70年代に創業した当時の若手経営者が、引退の年齢にさしかかっているからだ。
2006年版の中小企業白書によると、04年の中小企業数は約430万社。01~04年に年平均で29万社が廃業し、うち約4分の1は後継者の不在を理由に挙げる。企業の合併・買収(M&A)による会社存続も増えつつあるが、経営権の譲渡に拒否感を示す経営者が多い。「男の後継ぎ」にこだわる風潮も根強い。
創業家に大きな権限が集中しやすい中小企業の場合、世襲制という“筋書き”が狂えば、会社の存続さえ危ぶまれる。
総菜製造販売の大鶴食品工業(大阪市)の下林浩子社長は、先代社長の夫が94年、55歳で急死し、専業主婦から転身を余儀なくされた。健康を害していた長男も04年、42歳で病死した。「当初は仕入れから労使関係まで、わからないことばかり。先行きが見えるようになるまでに約10年かかった」と振り返る。苦労を重ね、今では「きめ細かな心配りなど、女性経営者ならではの長所を生かせば、男性に引けを取らない」と思えるようになったという。
少子高齢化が進む中、女性後継者の育成だけでは十分でない。女性の起業を支援する取り組みも、活発化している。大阪市は昨年10月、市立男女共同参画センター・北部館(クレオ大阪北)に、女性限定の起業準備スペース「チャレンジオフィス」を設けた。六つの専用ブース(2・6平方メートル)を月9000円で貸し出している。実務経験に乏しい女性でもスムーズに起業できるよう、事業計画策定の勉強会を開くなど、手厚く支援する。
女性経営者の横のつながりも広がっている。95年発足の大阪市女性起業家情報交流協会では、講演会や交流会に加え、異業種交流と商談を兼ねたイベント「ウーマンズ・メッセ」を開催している。全国の中小企業家同友会でも、女性部の活動が盛んだ。
帝国データバンクによると、全国の企業で女性社長の占める割合は05年、25年連続で増加して5・71%となった。日本経済を下支えする中小企業の将来を、女性の力が左右する時代が、少しずつ近付いている。