ものづくりの現場で  | WORK-LINK

ものづくりの現場で 

12月26日: 朝日新聞(asahi.com)経済気象台ここから本文エリア より

 忘年会で、あるオーナー社長の話を聞いた。その社長の会社は、日本を代表する大手メーカーの現場で作業を請け負っている。そのメーカーの事業は目下絶好調、大変な高生産で現場は多忙を極めている。その社長の会社も人を募集しているが集まらず従業員の残業でしのいでいるとのこと。ところが何と、社長の請け負っている仕事は赤字なのだという。

 

 このメーカーはコスト削減至上主義、「ミスターコストリダクション」の異名をとった中興の祖以来の伝統で下請け会社には毎年契約単価ダウンのノルマを与える。下請け会社は力関係上黙って受けるしかない。社長の仕事もその過去からの積み重ねで赤字状態が続いているとのこと。今のような好況時にはさすがに下請け会社にも従業員のボーナスを増やすようにと財源を上乗せするようだが、それとは別に契約単価引き下げのノルマは必ず課されるため、従業員の処遇は改善しても会社の業績としてはむしろ悪化するという。


 そういう会社だから、そのメーカーの本社部門は「コスト削減額」で工場の責任者や契約担当者の業績を測っているらしい。彼らが昇進するかどうかはその本社部門の判断によるようだ。


 ずっと厳しい状況をしのいできた我が国製造業の実態は皆こういうものかも知れない。だがメーカーに競争力を持たせるはずの現場のコスト削減の取り組みが、いつの間にか「蛸(たこ)が自分の足を食っている」ようなことになっているとしたら、我が国の「ものづくり」は現場から崩れていきかねないと正直思った。もちろん社長にとっては「ものづくり」の将来のことよりも自分の会社の足元のほうが大事である。酔いもまわって「現場に公正取引委員会が調査に入り是正勧告をした。工場の責任者はコンプライアンス上問題があったとして更迭された」そんな初夢でも見てみたいと呟(つぶや)いた。(啄木鳥)