精神障害者の夜間・休日相談窓口 地域生活センター増設に“暗雲” | WORK-LINK

精神障害者の夜間・休日相談窓口 地域生活センター増設に“暗雲”

2006/01/25 神戸新聞
 精神障害者の夜間や休日の相談に対応する「地域生活支援センター」。保健所など公的機関の閉庁時間帯に、障害者からの相談を受け付ける。10年前に国の補助事業となり全国に普及、阪神間でも今年6月、初めて尼崎市に開所する。しかし今秋には、国から各自治体に補助の主体が移るなど今後開設が進むかどうかは不透明で、関係者からは戸惑う声が上がっている。(阪神総局 斉藤正志)

支援法成立受け 国の補助事業終了/自治体、法人の負担重く 

 「夜一人になると不安になる。夜中でも話を聞いてくれる窓口があるだけでも安心できる」

 尼崎市の作業所に通う男性(50)。三十代で統合失調症を発病し、二十年近く勤めた工場を辞めた。作業所に通い始めてから友人もでき病状も治まってきたが、「万一、再発したら」と同センターの開設を待ち望む。

 兵庫県では、深夜など保健所の時間外に対応する精神障害者向けの救急窓口を県独自に設け、受け入れ病院などを紹介しているが、それも緊急の治療が必要な場合に限られる。症状が軽い場合には、患者本人や家族も遠慮してしまうという。

 全国の精神障害の患者数は、推計二百五十八万人(二〇〇二年、厚生労働省調べ)。患者らの不安に応えるため、国は一九九六年度から運営費を補助する形で、民間団体や自治体による同センターの開設を勧めてきた。

 現在全国に四百九十カ所、兵庫県内では神戸市の七カ所を含め、姫路、洲本、明石、篠山、赤穂、豊岡市に計十三カ所ができた。兵庫県の福祉プランでは、神戸市を除く県内であと十三カ所が必要としている。

 しかし、厚労省の事業採択は年々狭き門になっている。二〇〇二年度まで補助の申請を全件採択してきたが、緊縮財政から〇四年度の採択は五十件中二十件。〇五年度も六十件中三十件にとどまった。

 さらに、障害者自立支援法の成立も影響を及ぼす。同法は国が各市町村に交付金を出し、相談支援や地域活動支援などの各事業を義務付けた。地域生活支援センターへの補助金を含む障害者の支援事業は各自治体の裁量に委ねられ、国の補助は今年十月で終わる。

 同省精神保健福祉課は「法律で各事業を義務化することで自治体間のサービスのばらつきをなくせる。センターが必要という考え方は変わらない」とする。

 尼崎市に開所する地域生活支援センター「ポルタ」は、社会福祉法人・尼崎あすなろ福祉会が運営し、本年度は県内で唯一、採択された。総事業費五千万円のうち国と県が半分以上を補助し、同法人は約二千万円を負担する。

 同法人は二年前からセンター用地を月八万円で借りている。理事の瀧本通代さん(41)は「作業所も運営しており、これ以上の出費は法人自体の運営を危うくする。新しい支援法では今後補助がどうなるか分からず不安」と打ち明けた。

 宝塚市は社会福祉協議会の建物を改修して同センターを開設する計画で、〇三年から申請しているが採択されないまま。市障害福祉課は「来年度認められなければ、形を変えた支援も検討しなければ」と渋い顔だ。

 西宮市の特定非営利活動法人(NPO法人)「ハートフル」も、ほかの作業所や家族会と連携し開設を探っているが、資金不足で具体化していない。同法人副理事長の水野燿子さん(58)は「相談以外に本人の居場所にもなる。センターは必要」と模索を続ける。

<現場の声聞いて>

 精神障害者の福祉問題に詳しい佛教大学社会福祉学科の岡村正幸教授の話 支援法成立など障害者を取り巻く環境の急な変化に、現場も自治体もついていけないのが現状。国は、最前線で働く人たちの声をもっと聞く必要がある。