最近、宇宙飛行士に関する本を何冊か読んだ。その中で気に入ったのが
「うまくできないなら、せめて異彩をはなて」という言葉。
これは人類で始めて月面に一歩を踏み出した、ニール・アームストロングの言葉で
同僚の宇宙飛行士デイビッド・スコットがニールに言われた印象深い言葉として
彼の著書の中で紹介している。
ニール・アームストロングはアポロ11号で人類初の月面着陸を行う約3年前に、
ジェミニ8号でデイビッド・スコットと一緒に宇宙を飛んだ。
この宇宙飛行は失敗で、ニールとデイビッドはあやうく「宇宙空間で死んだはじめての宇宙飛行士」になりかけた。
ジェミニ8号のミッションは、直前に打ち上げられたアジェナという宇宙船と宇宙空間でドッキングを行い、
その後70時間もの宇宙飛行の間に、船外活動を行うという高度なもの。
ジェミニ8号は打ち上げ約6時間半後に無事アジェナとのドッキングを成功させせた。
しかし、一同喜びの声をあげたのもつかの間、ジェミニがくるくると回転し始めた。
トラブルの原因はアジェナにあるとふんだニールは、ただちにアジェナを切り放したが回転はとまらない。
故障していたのはジェミニのほうだったのだ!!
「縦揺れ、横揺れ、偏揺れの3軸すべてが毎秒20度以上揺れていた」というのはどういう感じだろう?
ガチャ玉の中に入れられて、小さな子どもの手の中で揺さぶられる感じだろうか?
とにかくとんでもない揺れで、宇宙飛行士になる前はジェット戦闘機をガンガン飛ばしていたニールでさえ
「気絶するかと心配になった」そうだ。
しかしそんな状況の中にあっても、「ミスタークール」と呼ばれたニールは冷静さを失わず、
頭上にあるロケットエンジンの制御パネルがだんだんぼやけ始めてくるのを必死ににらみつけ、
正しい操作を行って、打ち上げ約10時間半後に無事、地球に帰還した。
ジェミニ8号のミッションは失敗に終わった。
失敗の原因はジェミニの故障だったが、「ジェミニ8号のクルーが適切な行動をしなかったからだ」と非難した人もいたらしい。
けれども、この危機的状況からの生還劇が、ニールの飛行技術と危機対応力の高さを証明し、
アポロ11号の船長抜擢への布石となったという人もいる。
全世界が注目する中、アポロ11号で月へと向うニールに、
ニールの言葉を借りてデイビッドはこう言ったそうだ。
「前回は異彩を放った。今度はうまくやれよ」
そしてニールはすべてをうまくやりとげ、
「That's one small step for man,giant leap for mankind」
という名言を歴史に残したのである。