フランス一人旅…の思い出。
前回は
周りの皆様に大変ご心配をおかけしたので今回はひっそりと出発。
初めての南フランスとモナコ。
パリCDGから乗り継いでモンテカルロへ。
CDGではハプニングの連続で
命にかかわるものではないけれど
フランスが嫌いになる人がいてもおかしくないほどの涙モノの出来事で
少しくらいのことではへこたれない私も
ニース、コートダジュール空港に到着したときはヘトヘト、ヨレヨレ、グッタリ…
ずっと泊まりたいと思っていたホテルに着いて部屋に用意して下さっていたクリコを飲んだら元気になって
翌日から南フランスならではの旅。
マティスも
レジェも
ピカソも
この土地でしか見ることができない作品を追いかけてやってきた南フランス。
3人の画家の作品には
いろんな思い出があって…
特にレジェは美術の面白さと奥深さを教えてくれた画家の一人。
調べれば調べるほどレジェをはじめ
フランスの画家たちについて知りたくなって、レジェが晩年を過ごしたビオットに
どうしても行ってみたくなった。
ピカソが過ごしたアンティーブにも。
アンティーブにはこの方の小さな美術館もあって
立ち寄ってみたら意外な作品に出会うことができて嬉しくなった。
画家たちを魅了した南フランスの太陽。
滞在中は太陽に恵まれて
美しい青の地中海を見ることができたのは
運が良かった。
そしてニースのほろ苦い思い出。
マティス美術館を訪れた帰り
バス停で一緒になったマダム。
時刻表通りに来る気配のないバスを待ちながら自然と言葉を交わすうちにわかったことは、ご主人がアルツハイマーを患い
近くの病院に入院されていること。
「病気が進んで、もう私が誰かもわからないのよ。それでも生きている限り毎日会いに行くと決めたの。」と話してくれた。
若い頃はきっと美人だっただろうなと
思わせる鼻筋の通った顔立ちと
きちんとセットした髪。
お子さんたちは独立されて
パリに住んでいるのでめったに会えないそう。
運転していた車はご主人の入院と同時に
お孫さんに譲り、バスで病院に通う日々はもう3年。
「誰もいない家に帰るのはとても淋しいわ。」と言って身の上話をしてくれた。
エンジニアだったご主人と子供たちとセネガルに住んでいたときは、メイドさんを連れて買い物に行って、毎日家族で食卓を囲んで一番幸せな時期だった。
旅が大好きだったご主人と
世界中を旅して中国にも行ったことがあって「日本には行くことはできなかったけど…」と私の顔を見て少し申し訳なさそうに俯いた。
88歳のマダム。
「元気なうちにやりたいことをやりなさい。そして家族を大事にしてね。」
彼女が乗るバスが先にやって来て
40分程の会話だったけれど
彼女の言葉一つ一つが心に響いて
当たり前のようでいて、なかなか気が付かない大切なことを教えてもらった。
別れ際、マダムは私の手を握って
「Profitez de la vie. (人生を楽しんでね)」と
言ってバスに乗り
窓からずっと手を振ってくれた。
全く知らない人だけど
別れが惜しくなって、心がジーンとなって
南フランスが好きになって、バスが時間通りに来なかったことに感謝した。
今回は
シャガール美術館が改装のため閉館中。
この美術館にもどうしても行ってみたくて再びニースを訪れる日を目標に
マダムの言葉を心に留めて
毎日を丁寧に、そして大切に過ごしたい。
ノエルの季節
あのマダムはきっと病院で
ご主人と一緒に過ごしているんだろうな。