大法院

第2部

判 決

 

事件           2022ダ223358 特許侵害禁止請求の訴

原告、上告人   ヴィクトリックカンパニー(Victaulic Company)

               訴訟代理人 弁護士 キム ヨンドック外2名

被告、被上告人 株式会社ニューアセア

             (変更前の商号 株式会社ニューアセアジョイント)

               訴訟代理人 法務法人(有限)ユルチョン

               担当弁護士 キム ハヨン外2名

原審判決       特許法院2022.01.27.宣告2020ナ2189判決

判決宣告       2022.10.14.

 

主文

原審判決を破棄し、この事件を特許法院に差し戻す。

 

理由

 

上告理由(上告理由書の提出期間が過ぎてから提出した上告理由補充書の記載は上告理由を補う範囲で)を判断する。

1.特許権侵害訴訟の相手が製造する製品又は使用する方法など(以下「侵害製品など」とする)が特許権を侵害するとするためには、特許発明の請求範囲に記載された各構成要素と、その構成要素間の有機的な結合関係が侵害製品などにそのまま含まれていなければならない。侵害製品などに特許発明の請求範囲に記載された構成のうち変更された部分がある場合にも、特許発明と課題解決の原理が同一であり、特許発明と実質的に同一の作用効果を示し、そのように変更することがその発明が属する技術分野において通常の知識を有する者の誰でも容易に考え出せる程度であるのなら、特別な事情がない限り、侵害製品などは特許発明の請求範囲に記載された構成と均等なものであって、依然として特許権を侵害するとみなすべきである(大法院2019.01.31.宣告2017フ424判決、大法院2020.04.29.宣告2016フ2546判決などを参照)。

2.前記法理と記録に鑑みる。

イ.文言侵害可否

1)名称を「変更可能な機械的パイプカップリング」とするこの事件特許発明(特許番号は省略)の請求範囲第1項(以下「この事件第1項発明」とする)のパイプカップリングセグメントと一対のパイプ要素からなる組合せ体に関する発明である。

2)被告製品は、パイプカップリングセグメントに関するものであって「パイプ要素」を除いてこの事件第1項発明の構成要素1ないし7、9ないし12をそのまま含んでいる。

3)この事件第1項の発明の構成要素8は、「カップリングセグメントが円周方向グルーブ内においてパイプ要素の外部面にアーチ形表面の曲率を一致させるために連結部材が締め付けられるときに変形されるもの」であるが、請求範囲の文言に記されている一般的な意味と内容に基づいて発明の説明と図面を参酌してみると、構成要素8の「曲率を一致させるために」部分は単に曲率変形に関する主観的な目的を記載したものではなく、連結部材が締め付けられたとき、カップリングセグメントのアーチ形表面の曲率が円周方向グルーブ内でパイプの外部面の曲率と一致する程度まで変形することができる点を限定したものであると解釈するのが妥当である。ただし、このとき「曲率の一致」とは微細な誤差もない完全な曲率の一致を意味するものではなく、漏れ防止などのようなパイプカップリングとしての正常な機能を発揮できるほど、セグメントのアーチ形表面とグルーブ内でパイプの外部面が実質的に合致した状態を意味するものと解釈される。

4)第1審の鑑定結果によると、鑑定目的物として使用した被告製品のうち一部製品(製品名1省略)を除いた大部分の製品[(製品名2省略)、(製品名3省略)、(製品名4省略)]は、連結部材の締め付けによってアーチ形表面が曲げ変形されてアーチ形表面とグルーブ内のパイプ外部面(アンドキャップ)との間の隙間が減少し、最終的にはアーチ形表面がグルーブ内のパイプ外部面(アンドキャップ)に密着することが分かる。さらに、被告製品は連結部材の締め付けに伴い漏れ防止のようなパイプカップリングの正常な機能を発揮するのに十分なほど、アーチ形表面とパイプ要素とが結合するものと思われます。このような点に鑑みると、被告製品のうち(製品名2省略)、(製品名3省略)、(製品名4省略)製品は、連結部材が締め付けられる際にアーチ形表面の曲率が漏れ防止のようなパイプカップリングとしての正常的な機能を発揮できる程度にグルーブ内においてパイプの外部面と実質的に合致する程度まで変形されるとみなすのに十分であるので、構成要素8を含んでいると見ることができる。

5)被告製品のうち(製品名1省略)の場合にも、鑑定対象製品4つのうち3つにおいて連結部材を締め付ける場合、他の製品に比べてアーチ形表面がパイプ外部面にあまり密着しないことに示されたとしても、依然として残り1つは(製品名2省略)、(製品名3省略)、(製品名4省略)製品と同程度によく密着することを見せ、(製品名1省略)製品もまた米国認証機関の認証基準を満たして市販中の製品である点から、他の製品と同様にアーチ形表面の曲率が漏れ防止のようなパイプカップリングとしての正常的な機能を発揮できる程度に、グルーブ内においてパイプの外部面と実質的に合致する程度まで変形するとみなす余地もある。

6)にもかかわらず、原審は、その判示のような事情のみを理由に、被告製品全体に関して構成要素8を備えていないと判断した。このような原審の判断には被告製品の構造及び変形程度に関して必要な審理を尽くしておらず、文言侵害に関する法理を誤解するなどで判決に影響を及ぼした誤りがある。

ロ.均等侵害の可否

1)たとえ被告製品が、特に一部製品(製品名1省略)が連結部位が締め付けられる際に変形する程度がこの事件第1項発明の構成要素8の実質合致の程度には及ばないため文言侵害が成立しないとみなすとしても、以下のような点で被告製品は特許発明と課題解決原理が同一であり、特許発明と実質的に同一の作用効果を示し、そのように変形することがその発明が属する技術分野において通常の知識を有する者(以下「通常の技術者」とする)であれば誰でも容易に考え出せる程度であって、この事件第1項発明の構成要素8と均等な構成を含んでいると見ることができる。

イ)この事件特許発明の説明及び出願当時の公知技術等を参酌してみると、この事件第1項発明の課題解決原理は、「対向して離隔している180°以下の角度をなすカップリングセグメントのアーチ形表面の曲率をパイプ要素の外部面の曲率より大きくし、カップリングセグメントの離隔間隔をパイプ要素に挿入するのに十分な間隔に維持できるようにシール部の外径の寸法を設定し、カップリングを分解せずともパイプ要素に挿入できるようにした後、接続部材の締め付けに応じてカップリングセグメントのアーチ形表面の曲率が漏れにならない程度に変形するようにして、カップリングとパイプ要素が速やかに結合するようにすること」と言え、これは被告製品にもそのまま含まれているので、課題解決原理が同一であり、従前にこのような技術思想が公知であったとみなし難い。

ロ)被告製品も仮組立状態のカップリングセグメントを分解なしに設置できるようにしてコストと時間を節減できるという点で、この事件第1項発明と作用効果が同一である。

ハ)この事件第1項発明において連結部材の締め付けによるセグメントアーチ形表面の曲率変形の程度は、漏水防止のようなパイプカップリングの正常的な機能を発揮できるようにする範囲内で必要に応じて適宜調節できるものであって、通常の技術者であれば、特別な努力なしに簡単にできるほどの変更に該当する。

2)したがって、被告製品は、「パイプ要素」を除いてはこの事件第1項の発明と同一であるか、均等な構成要素とその構成要素間の有機的結合関係をそのまま含んでいるので、原審としてはパイプカップリングセグメントに関する被告製品が、パイプカップリングセグメントと一対のパイプ要素からなる組合せ体に関するこの事件第1項発明の物の生産にのみ使用する物であるかを審理し、この事件第1項発明の特許権を間接侵害するかどうかを判断しなければならない。それでも原審は、判示のような理由で被告製品がこの事件第1項発明の構成要素8と均等な構成を含んでいないという理由でこの事件第1項発明を侵害していないと判断した。このような原審判決には均等侵害に関する法理を誤解し、必要な審理を尽くさないなどとして判決に影響を及ぼした誤りがある。

3.結論

よって、原審判決を破棄し、事件を再び審理・判断するように原審法院に差し戻すこととし、関与大法官の一致した意見で主文のとおり判決する。

 

裁判長  大法官 ミン ユスック

     大法官 チョ ゼヨン

     大法官 イ ドンウォン

主 審  大法官 チョン デヨップ

 

特許法人元全(WONJON)