大法院

第2部

判 決

 

事  件       2021ダ280835 損害賠償(チ)

原告、被上告人  ボカス株式会社

               訴訟代理人 法務法人(有限)ユルチョン

               担当弁護士 キム ハヨン外2名

被告、上告人    被告

               訴訟代理人 弁護士 パク チンウ

原審判決       特許法院2021.09.16.宣告2019ナ1609判決

判決宣告       2022.09.07.

 

主文

上告を棄却する。

上告費用は原告が負担する。

 

理由

上告理由(上告理由書の提出期間が過ぎてから提出した上告理由補充書の記載は上告理由を補う範囲で)を判断する。

 

1.請求範囲の解析について

イ.原審は判示のような理由から次のように判断した。

(1)名称を「マイクロカッターが形成された角質除去板とこれを用いた角質除去器」とするこの事件特許発明(特許番号第1184144号)の請求範囲第1項(以下、「この事件第1項発明」とし、他の請求範囲も同様の方式で表示する)の構成要素「円形または多角形の平面からなる突出板」において、「円形」は、「丸く描かれた模様や形状」または「円の一部からなる形状」をすべて含むものではなく、少なくとも全体的に見て単一の「円」の形状をなしていることを意味し、「多角形」はほとんど直線からなる平面図形を意味する。

(2)したがって、2つの円形の一部が重なり合いながら中央が凹んだヒョウタン状であって、ほとんど曲線からなる被告が製造・販売した角質除去器(以下「被告製品」とする)の突出板は、この事件第1項発明の「円形」または「多角形」の突出板に該当しない。

ロ.原審判決理由を関連法理と記録に鑑みると、原審の判断に上告理由主張のように請求範囲の解釈に関する法理を誤解するなどで判決に影響を及ぼした過ちがない。

2.均等侵害の可否について

イ.(1)特許権侵害訴訟の相手が製造する製品又は使用する方法など(以下「侵害製品など」とする)が特許権を侵害するとするためには、特許発明の請求範囲に記載された各構成要素と、その構成要素間の有機的な結合関係が侵害製品などにそのまま含まれていなければならない。侵害製品などに特許発明の請求範囲に記載された構成のうち変更された部分がある場合にも、特許発明と課題解決の原理が同一であり、特許発明と実質的に同一の作用効果を示し、そのように変更することがその発明が属する技術分野において通常の知識を有する者の誰でも容易に考え出せる程度であるのなら、特別な事情がない限り、侵害製品などは特許発明の請求範囲に記載された構成と均等なものであって、依然として特許権を侵害するとみなすべきである。

  ここで侵害製品などと特許発明の課題解決の原理が同一であるか否かを見分ける際には、請求範囲に記載された構成の一部を形式的に抽出するのではなく、明細書に記された発明の説明の記載と、出願当時の公知技術などとを参酌して先行技術と対比してみるとき、特許発明に特有の解決手段が基づいている技術思想の核心が何であるかを実質的に探求して判断すべきである(大法院2019.01.31.宣告2017フ424判決、大法院2020.04.29.宣告2016フ2546判決など参照)。

(2)作用効果が実質的に同一であるかの可否は、先行技術において解決されていなかった技術課題であって特許発明が解決した課題を、侵害製品なども解決するかどうかを中心に判断すべきである。したがって、発明の説明の記載と、出願当時の公知技術などとを参酌して把握される特許発明に特有の解決手段が基づいている技術思想の核心が侵害製品などにおいても具現されているのであれば、作用効果が実質的に同一であるとみるのが原則である。しかし、前記のような技術思想の核心が特許発明の出願当時に既に公知であったり、それと同然のものに過ぎない場合には、このような技術思想の核心が特許発明に特有であるとみなせず、特許発明が先行技術において解決されなかった技術課題を解決したとも言えない。このようなときには、特許発明の技術思想の核心が侵害製品などにおいて具現されているかどうかをもって作用効果が実質的に同一であるかの可否を判断することができず、均等可否が問題となる構成要素の個別的な機能や役割などを比較して判断すべきである(大法院2019.01.31.宣告2018ダ267252判決、大法院2019.02.14.宣告2015フ2327判決など参照)。

ロ.原審は判示のような理由から次のように判断した。

(1)この事件第1項発明の課題解決原理は「多数の突出マイクロカッターを用いて安全かつ効率的に角質を切削できる角質除去器を提供すること」であると把握され、これは被告製品にもそのまま表れている。

(2)一方、前記のようなこの事件第1項発明の課題解決原理は既に先行発明に公知であるので、この事件第1項発明と被告製品の作用効果が実質的に同一であるかの可否は、差異のある構成であるこの事件第1項発明の「円形又は多角形である平面突出板」と被告製品の「2つの円形の一部が重なり合いながら中央が凹んだヒョウタン状の平面突出板」の個別的機能や役割などを比較して判断しなければならない。

(3)ところで、被告製品はヒョウタン状によりこの事件第1項発明と違って角質を広い面積で切削することができ、曲線の切削刃により切削された角質が側面刃の間に集められると中央の凹部でさらに切削されてその作用効果に差異があり、この事件第1項発明からこのような形状に変更することが容易であると見ることもできないので、この事件第1項発明に対する均等侵害が成立しない。

(4)さらに、被告製品はその従属項発明であるこの事件第3項、第4項発明に関する特許権も侵害しているとみなせない。

ハ.前記の法理と記録に鑑みると、この事件第1項発明の課題解決原理は「多数の突出マイクロカッターを用いるだけでなく、様々な方向での切削を通じて安全、且つ効率的な角質除去ができるようにすること」として把握しなければならないという点で、原審がこの事件第1項特許発明の課題解決原理を多少広く把握した点はある。しかし、前記のような課題解決原理が先行発明に公知されており、平面突出板の形状の差により作用効果に差異があり、変更が容易でないため均等侵害が成立しないという結論は正当である。したがって、原審判決に上告理由の主張のように必要な審理を尽くさず、論理と経験の法則に違反して自由心証主義の限界を逸脱したり、特許発明の均等侵害に関する法理を誤解するなどして判決に影響を及ぼした過ちはない。

3.結論

よって、上告を棄却し、上告費用は敗訴者が負担するようにし、関与大法官の一致した意見で主文のとおり判決する。

 

裁判長 大法官 イ ドンウォン

主 審 大法官 チョ ゼヨン

    大法官 ミン ユスック

    大法官 チョン デヨップ

 

特許法人元全(WONJON)