発明の詳細な説明の記載要件(人工知能)
 

(1)相関関係の具体的記載が必要

入力データ(教師データ)と学習されたモデルの出力データとの間の相関関係を具体的に
記載していない場合
には、実施可能要件を満たしていないものとみなす。ただし、当業者が出願時の技術常識により発明の詳細な説明に記載された実施例を介してその相関関係を推定または特定できる場合には、実施可能要件を満たしていると見ることができる。入力データと学習されたモデルの出力データとの間の相関関係が具体的に記載されている場合とは、①学習データが特定されており、②学習データの特性相互間に発明の技術的課題を解決するための相関関係が存在し、③学習データを利用して学習させようとする学習モデルまたは学習方法が具体的に記載されており、④このような学習データと学習方法によって発明の技術的課題を解決するための学習されたモデルが生成される場合を意味する。
例えば、人工ニューラルネットワークのアンサンブルを利用して学習完了モデルを生成する発明で、発明の詳細な説明にアンサンブルに利用される人工ニューラルネットワークが何なのか特定されておらず、学習完了モデルを生成するための手段または工程が具体的に記載されていない場合に、実施可能要件を満たしていないものとみなす。
別の例として、気象データと環境データを学習データとして、機械学習モデルを利用して住宅の温度を自動的に制御する発明で、発明の詳細な説明に環境データが入力データとして記載されているだけで、環境データと出力データ(住宅の温度自動制御情報)との間の相関関係が具体的に記載されていない場合に、実施可能要件を満たしていないものとみなす。

 

(2)機械学習の応用に特徴がある場合

機械学習の応用に特徴がある場合には、通常の機械学習方法を活用して発明の技術的課題を解決することができ、且つ発明の効果を確認することができれば、学習データを利用して学習させようとする学習モデルまたは学習方法が具体的に記載されておらず、単に通常の機械学習方法だけが記載されていても、実施可能要件を満たすものと見ることができる。
通常の機械学習方法の例としては、畳み込みニューラルネットワーク、循環ニューラルネットワーク、バックプロパゲーション(back-propagation)、確率的勾配降下法(Stochastic Gradient Descent、SGD)、AdaGrad、AdaDelta法などがある。


(3)機械学習ベースの人工知能関連発明
機械学習ベースの人工知能関連発明で収集された生(raw)データを学習用データに変更するデータ前処理が発明の特徴的技術である場合には、発明の詳細な説明に収集された生データを学習用データとして作成、変更、追加、または削除するためにデータの前処理段階や機能をどのように実行ないし実現するかについて記載していなかったり、収集された生データと学習用データとの間の相関関係を具体的に記載していない場合に、実施可能要件を満たしていないものとみなす。

 

(4)強化学習ベースの人工知能関連発明
強化学習ベースの人工知能関連発明は、エージェント(agent)、環境(environment)、状態(state)、行動(action)、補償(reward)の間の相関関係を含む強化学習の方法を具体的に記載していない場合には、実施可能要件を満たしていないものとみなす。

 

 

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