
Come Back As A Flower 花の精
1979年アルバム「シークレット・ライフ Journey Through The Secret Life Of Plants」収録
前回取り上げた「哀しみの恋人達」はシリータ・ライトのソロ作品でしたが、この曲も、シリータがメイン・ヴォーカルをとったナンバーです。ただ、「哀しみの・・・」と違うのは、前者がシリータのアルバム中の曲であったのに対し、この「花の精」は、あくまでスティーヴィーのアルバムの中の1曲ということです。1979年アルバム「シークレト・ライフ」に収録されたナンバーです。
実は、スティーヴィーのアルバムであるにもかかわらず、スティーヴィーではなく、別の人がヴォーカルをとったというケースが、過去3人いまして・・・
うち一人は、この曲を歌ったシリータ・ライト。
そして、1984年のアルバム「ウーマン・イン・レッド」収録の「モーメンツ・アーント・モーメンツ」を歌った、レーベル・メイトのディオンヌ・ワーウィック。
さらに、1991年アルバム「ジャングル・フィーヴァー」収録の「心の傷跡 If She Breaks Your Heart」を歌った、長年スティーヴィーのバック・コーラスを務めているキンバリー・ブリューワー。
この3人だけです。
いずれのアルバムも、“映画のサントラ”となっています。やはり、サントラという“企画もの”であるからこそ、他のヴォーカリストにメインを歌わせるという趣向もアリだったのかもしれませんね。
さて、今日取り上げるのは、そのうちの元妻 シリータ・ライトが歌った「Come Back As A Flower 花の精」です。
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先に挙げた3人の女性ヴォーカリストのうちでも、元妻であるシリータ・ライトはやはり特別な存在だったのでしょう。いままでに何度も書いてますけど、別れた後もお互いの才能を尊敬しあう、生涯の音楽パートナーだったのですからね。
ただ、シリータ・ライトは、残念ながら、2004年7月に乳がんのため、58歳という若さで亡くなりました。
あまりに早すぎるシリータの死は、スティーヴィーにとって大きなショックとなったようです。実はシリータが亡くなる1カ月前にも、スティーヴィーが尊敬するレイ・チャールズが亡くなっていて、尊敬する先輩、元妻を立て続けに失ったスティーヴィーは、当時リリース直前だったアルバムの制作を中断し、しばらく喪に服することとなったのでした。
シリータの葬儀には、スティーヴィーがシリータを想って作り、いずれ彼女とデュエットしようとも考えていた、「Shelter In The Rain シェルター・イン・ザ・レイン」という曲をシリータの墓前で熱唱し、捧げています。
Shelter In The Rain シェルター・イン・ザ・レイン

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学術映画のサウンドトラック、収録曲のほとんどがインスト・ナンバー……などといった理由からスティーヴィーの諸作品の中でもあまり聴かれる機会の少ない「シークレット・ライフ」ではありますが、中にはこのような素晴らしい名曲があるのです。学術映画のサントラだからといって、決して無視できないアルバムです。
作曲スティーヴィー、そして作詞はシリータ・ライト。
“花に生まれ変わって、優しい愛を広めたい・・・・”
このように歌われる、東洋哲学に造詣の深いシリータらしい歌詞も素晴らしいですが、澄んだ高音で優しげに歌われるシリータのヴォーカルもいい。穏やかで、聴くたびに心を癒してくれるバラードです。特に、シリータが亡くなった今となっては、この曲がシリータの遺言のような感じに聴こえてしまうのです・・・。