1.8にブログ友のマドモワゼル姐さんの記事でシドニー・ポワチエの訃報を知りました。前回のベティ・ホワイトに続いて2回連続追悼記事を書くとは思ってもいませんでした。初めてシドニー・ポワチエを知ったのは名画座でみた「夜の大走査線」と記憶しています。シドニー・ポワチエは、50年代でまだ黒人俳優には悪役などの端役しか与えられなかった黎明期の先駆的な存在でした。今日の映画は数多くある彼の作品の中でもシドニー・ポワチエという存在を知らしめた一作です

 

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「手錠のままの脱出」

1958年/アメリカ(97年)

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名匠スタンリー・クレイマー監督が人種差別という題材をベースに男たちの友情を描いた秀作!

 

 

<監督>

スタンリー・クレイマー

 

<キャスト>

 トニー・カーティス/ジャクソン

シドニー・ポワチエ/カレン

 

セオドア・ビケル/ミューラー保安官

ロン・チェイニー・ジュニア/サム(町の住人)

チャールズ・マッグロー/警部

カーラ・ウィリアムズ/ビリーの母

 

監督は「ニュールンベルグ裁判」(61)やスペンサー・トレーシー、シドニー・ポワチアなどが出演の「招かれざる客」(67)、隠れた名作と言われる「渚にて」(59)などの問題作を多く手掛けているスタンリー・クレイマー。主演の二人には、以前レビューしているマリリン・モンローの「お熱いのがお好き」(59)「隊長ブーリバ」(62)「求婚専科」(64)などのトニー・カーティスと、黒人男優として初のアカデミー主演男優賞を獲った「野のユリ」(63)「いのちの紐」(65)「招かれざる客」(67)、ロッド・スタイガーとの共演の「夜の大走査線」そして、晩年「ジャッカル」(97)でもFBI副長官役で好演したシドニー・ポワチエ。二人を追う保安官役にはこの作品でアカデミー助演男優賞にノミネートされた「アフリカの女王」(51)「眼下の敵」(57)のセオドア・ビゲル。少しですが怪奇映画のトップスターのロン・チェイニーも出ています

 

▲ トニー・カーティス/ジャクソン

▲シドニー・ポワチエ/カレン

▲セオドア・ビケル/ミューラー保安官(右)

 

夜の雨の中を走る1台の囚人護送車が田舎町を移動中に、転落事故を起こしてしまう。事故のどさくさに紛れて囚人のジャクソン( トニー・カーティス)とカレン(シドニー・ポワチエ)の二人が脱走するが、ジャクソンは白人、カレンは黒人で、お互い50cmの手錠で繋がれていた。二人は川を渡り、北部を走る鉄道を目指し逃亡を試みる。人種偏見からたびたび反発し合う二人だったが、追っ手から逃げるためには助け合うしかなかった・・・

 

原題は「Defiant Ones」

 

「ふてぶてしい奴」とか「挑戦的に奴」という意味でしょうか。「手錠のままの脱獄」という邦題についてはいろいろ言われてはおりますが、そもそも「脱獄」じゃなくて「脱走」です(笑)。「脱獄」という言葉のインパクトを期待したのでしょうが、そもそもアクション映画でもありません。当時の日本では理解しにくい題材でしたから、商業サイドから考えると仕方なかった邦題ともいえます。この映画でトニー・カーティスとシドニー・ポワチエの二人はアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされています。その時、同じくノミネートされていたのが「熱いトタン屋根の猫」のポール・ニューマン、「老人と海」のスペンサー・トレイシーで、結局「旅路」のデヴィット・ニーヴンが最優秀男優賞に輝きました。この5年後の1963年に、シドニー・ポワチエは「野のユリ」で黒人初のアカデミー賞主演男優賞を獲得しています

 

▲手錠に繋がれたままの二人
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▲いがみ合うだがお互いに協力しないと逃げきれない
 
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「追跡には及ばない、どうせすぐに殺し合うさ」 
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この映画は、人種差別をテーマにしたヒューマン・ドラマです。この映画が作られた58年は公民権運動の真っ最中で、そんな時代に作られた本作には、重く強いメッセージが込められています。日本でも人種的な差別はありましたがアメリカの比ではありますまい。この映画を含めて人種差別をテーマにした映画を何本も観ており、大いに感動し心打たれますが、私たちではその真義までは到底行きつけないないでしょう。でも、知ることにより寄りそうことは出来ます。そして、伝えることは出来ます。そんな貴重な映画の一本です!上に記したセリフは、白人と黒人が1本の鎖につながれ逃走した二人を追う保安官のセリフです。このセリフが本作の物語としてのスタートになります

 

人種差別をテーマにした秀作はたくさんあります。本作と同じスタンリー・クレイマー監督の「招かれざる客」(67)では、今回とは違う切り口で、黒人青年(シドニー・ポワチエ)と白人女性の結婚を巡る双方の家族の葛藤を描いています。その他にも以前レビューしたグレゴリー・ペック主演の名作「アラバマ物語」(62)、「グローリー/明日への行進」(14)、「デトロイト」(17)そしてアカデミー作品賞にも輝いた「グリーンブック」(18)などの秀作がたくさんあります。この機会に是非観ていただきたいですね

 

 

映画全般で黒人蔑視のセリフが多くあります。ラスト近くで、悲しい身の上の母子と出会い、その女性(カーラ・ウィリアムズ)の存在が物語に新たな展開を予想させますが、じつは彼女はひどい女で黒人蔑視をはっきり口にします。ひどいというのは私たちの感覚で、じつは当時としては自然のことだったのでしょう。黒人のカレン(シドニー・ポワチエ)を底なし沼へ案内し殺そうとした女性を非難したジャクソン(トニー・カーティス)に女性が言い放ちます

 

「黒人のことで怒るなんて、私が何か悪いことした?」

 

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バディ映画の傑作と言われる所以

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「すぐに捕まる」という追手の思惑とは裏腹に実はなかなか捕まらない。それは、手錠でつながれているからこそ、逃げ伸びるためには助け合わなければならず、手錠が外されたあとでも離れないところにこの映画のもうひとつのテーマがあります。今では、ありきたりの反目しながらも友情が芽生えていくバディもののはしりともいうべき作品です。何と言ってもこの映画の凄さは画力の強さです。二人が走って、飛んで、逃げてという疲労や、手首に繋がれた手錠の重みや痛みまで感じてきます。うまく言えませんが、この映画には遠慮がありません。常に緊張感が漂います。白人と黒人の差別問題を取り上げながら、骨太の娯楽作品に仕上げたスタンリー・クレイマー監督の手腕に拍手をおくりたいですね

 

バディ映画は、1930年代にすでにあったとされています。ディーン・マーティン&ジェリー・ルイスの「底抜けシリーズ」などもそのひとつですが、圧倒的にコメディが多かったようです。今では「48時間」「リーサル・ウェポン」「メン・イン・ブラック」などの刑事モノで定番のようになっていますが、他にも「真夜中のカーボーイ」「スケアクロウ」「ミッドナイト・ラン」などの秀作も数多くあります

 

 

おススメの2本を是非どうぞ!
 

▲ご存じ高倉健主演の「網走番外地」(65年)

 

この映画は、その後の多くの映画に影響を与えています。高倉健さんをスターダムに押し上げた「網走番外地」は、本作を元に作られたと言われています。そのほかにも、あの「西部警察」や人気アニメ「名探偵コナン」の中でも「高木刑事、手錠で逃走」の回で同じようなシチュエーションで作られています

 

▲最後は助け合って逃げようとするが・・・

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手錠のない手と手が伸ばすものは?

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二人は苦労してなんとか鉄道にたどり着き、近づいてくる列車にカレン(シドニー・ポワチエ)が先に飛び乗り、必死に走ってくるジョーカー(トニー・カーティス)に手を伸ばすが・・・前半、鎖につながれながら殴り合っていた2人が、あと一歩で逃げ切れるという間際、走る汽車に飛び乗り手を伸ばしあうシーンがいいですね。二人の間にはもう鎖がありません。でも、今度は自分たちの意志で手を伸ばし助け合おうとします

 

ラストは、迫りくる追手を歌をうたいながら待ちます

 

その歌は、冒頭護送車の中でつまらなそうに歌っていた曲と同じですが、どこか軽やかに聞こえます。黒人差別を描きながら、最後は、それを超える人とのつながりをサラリと描き切ったラストに好感が持てます

 

見るべき一本です、是非どうぞ!

 

ちなみにシドニー・ポワチエは、1976年に「冒険者たち」でアラン・ドロンとリノ・バンチュラと共演した美人女優ジョアンナ・シムカスと結婚し、彼女は俳優業を引退しています。わが愛しきレティシア(彼女の役名)を奪っていった憎きヤツなのです。合掌

 

アランドロン×リノ・バンチュラ×ジョアンナ・シムカス

 

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