この映画は、40年以上前に名画座で初めて観て以来、レンタルで数回観ております。数年前に再見するまでは同じ田宮二郎主演のテレビ版(78年)と内容が混同しておりましたが、改めて観ると重厚な作品で圧倒されます。奇しくも、この5月22日より5夜連続のテレビドラマでリメイクされるにあたりレビューしました!

 

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「白い巨塔」

1966年/日本(149分)

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医学界の内幕を描いた山崎豊子原作を映画化!山本薩夫監督の社会派ドラマの傑作!

 

 

◆監督

 

山本薩夫

 

◆脚本

 

橋本忍

 

◆原作

 

山崎豊子

 

◆音楽

 

池野成

 

◆キャスト

 

財前五郎/田宮二郎

  浪速大学医学部第一外科助教授 

東貞蔵/東野英治郎

  浪速大学医学部第一外科教授

里見脩二/田村高廣

  浪速大学医学部第1内科助教授

鵜飼雅行/小沢栄太郎

  浪速大学医学部長

菊川昇/船越英二

   金沢大学医学部外科教授

船尾厳/滝沢修

  東都大学医学部第二外科教授

東佐枝子/藤村志保

  東貞蔵の娘

花森ケイ子/小川真由美

  財前五郎の愛人

 

大河内教授/加藤嘉

  浪速大学医学部病理学教授

河野正徳/清水将夫

  被告側代理人、大阪弁護士会会長

財前又一/石山健二郎

  財前五郎の義父

岩田重吉/見明凡太朗

  大阪市北区医師会会長

野坂教授/加藤武

  浪速大学医学部整形外科教授

今津教授/下條正巳

  浪速大学医学部第二外科教授

関口仁/鈴木瑞穂

   原告側代理人

葉山教授/須賀不二男

   浪速大学医学部産婦人科教授


ご覧の通り、出演者の一部を見ただけでもわかりますが、1966年当時の日本映画の黄金期の作品にふさわしいトップスターの夢の共演です

 

田宮二郎/天才外科医の財前五郎役

東野英次郎/浪花大学医学部の東教授役

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医学界のタブーに挑んだ問題作!

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浪速大学医学部では、定年退官となる東教授(東野英治郎)の後任をめぐって、野望に燃える若き助教授である財前五郎(田宮二郎)が教授の座を射止めるべく権力闘争を練り広げていくが・・・

オープニングから度肝を抜かれます!


物語は、主人公である財前五郎の手術シーンから始まります。モノクロですがその分リアリティがあり、この映画を観る覚悟を試されているかのように感じます。この映画には、今ではとても映像化できない手術シーンがありますので心して観てください!さらに、医学界の腐敗、社会に潜む不条理に対して真っ向から立ち向かう堂々たる作品です!

 

田村高廣(里見助教授)と藤村志保(東教授の娘)

田宮二郎(財前五郎)と小川真由美(愛人)

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日本映画の黄金期にふさわしい豪華俳優陣!

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まさに、本物のスターたちがキラ星のごとく輝きを競っていた時代に、これだけの俳優陣の重厚な演技を見るだけでも一見の価値があります。前半は浪速大学教授選、後半は医療訴訟で、共に難しいテーマをわかり易く整理されており、且つ、俳優陣の迫真の演技に圧倒されっぱなしです!

 

この映画では、多くの男優陣の競演が見どころですが、財前五郎と愛人の小川真由美の目的の為には手段を選ばない、いわゆる体制側の象徴のカップルと、正義を謳う反体制側の里見助教授と彼を慕う東教授の娘のカップルとが対照的に描かれています。おなじモノクロ画像なのにシロさとクロさがその人物によって際立ってみえたのは自分だけでしょうか?

 

山崎豊子氏の原作の良さに加え、橋本忍氏の脚本のすばらしさ、俳優陣の卓越した演技で二時間半の長丁場を少しもダレることなく映像とストーリーに引き込まれます

 

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過去何度も映像化されている名作!

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「白い巨塔」は、本作(66年映画化)のあと何度もテレビドラマ化されており、その都度、好評を博している名作ですが時系列に沿って紹介します

 

66年/映画化(本作) 田宮二郎主演

67年/テレビドラマ 佐藤慶主演(全26回)

78年/テレビドラマ 田宮二郎主演(全31回)

90年/テレビドラマスペシャル 村上弘明主演

03年/テレビドラマ 唐沢寿明主演(全21回)

 

個人的には、この映画を観たあと、78年版テレビドラマを観ることをおススメします

 

この5月22日より五夜連続のスペシャルドラマで復活します。野心家でエネルギッシュな天才外科医の財前五郎役を岡田準一が演じるのも楽しみのひとつです

 

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財前五郎は田宮二郎以外は認めない!

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そう豪語していたのは映画好きの友人のひとりです。それがオーバーに聞こえないほど、確かにこの映画やドラマにおける田宮二郎は、素晴らしいというより凄かったです。傲慢で自信過剰のエリートイケメン外科医の顔と毎月田舎に残した母に仕送りをする顔の、このアンバランスさを見事に演じ切っていたように思います。この映画では描き切れなかった財前五郎の人物像などは、同じ田宮二郎主演の78年度版のドラマを観るとより楽しめると思います

 

ちなみに、主演の田宮二郎は78年12月にドラマ版「白い巨塔」の放映残り二話を残して43才で自殺しています

 

ラストは、財前教授の総回診で終わりますが、その陰で大学を追われた里見元助教授が、振り返ってみる「真っ白にそびえ立つ大学病院」のアップ、すなわち「白い巨塔」の画像がいつまでも心に残ります

 

この機会に併せてどうぞ!