今日の映画は、以前、開催させていただいた「角川映画祭」での皆さんの人気投票では番外でしたが、自身では8位に推した作品!この映画は東映と角川事務所の共同制作なので「魔界転生」などと並んで厳密には角川映画ではありませんが、角川春樹氏企画、制作なので「角川映画」のテーマにいれさせていただいています。

 

 

 

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「白昼の死角」

1979年/日本(154分)

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戦後の混乱期に法の死角を突き、完全犯罪を目論む男たちを描いた高木彬光の小説を村川透監督が映画化した、ピカレスクロマンの傑作!

 

 

◆ 監 督

 

村川透

 

◆ 原 作

 

高木彬光

 

◆ 音 楽

 

宇崎竜童

 

◆ キャスト

 

夏木勲/鶴岡七郎

中尾彬/仲間の九鬼

竜崎勝/仲間の木島

島田陽子/鶴岡の愛人あやか

丘みつこ/妻のたかこ

 

千葉真一


丹波哲郎

藤岡琢也

 

伊吹吾郎

岸田森

長門勇

佐藤慶

嵐寛寿郎
阿藤海

 

室田日出男

鈴木ヒロミツ

内田朝男

沢たまき

成田三樹夫
 

天地茂

 

何と言ってもこの映画の魅力のひとつは、角川映画特有の豪華メンバーにあります。天知茂、中尾彬、千葉真一、丹波哲郎、伊吹吾郎などそうそうたる顔ぶれが脇にまわり、佐藤慶、成田三樹夫、岸田森、室田日出男ら一癖も二癖もある面々が顔を揃えています。当時まだ無名だった柴田恭兵、西田敏行も出演しており、作者の高木彬光まで出演しています

 

 

戦争直後の昭和23年_

東大法学部始まって以来の秀才と言われた隅田(岸田森)が、同級生らと設立した「太陽クラブ」は世相に乗じて急成長をとげたが、やがてヤミ金融容疑で検挙されて自殺をする。その残党である鶴岡(夏八木勲)は、仲間の九鬼(中尾彬)と木島(竜崎勝)らと法の死角と盲点を突いた完全経済犯罪を繰り広げていくが・・・

 反逆のピカレスクロマン!

 

戦後の混乱期に、法律の死角をつき完全犯罪を目論む男たちの姿を描いています。今、改めて観ると展開も演出も雑に感じますが、角川映画特有の熱さで一本道を走り切ったような映画です。ギラギラとした欲望、痛快なストーリー、熱い演技などから「角川映画ナンバーワン」に推すコアなファンも多いと聞きます。さらに、この映画は、長らくDVD化されなかった「幻の傑作」と言われておりましたが、公開33年目にファン待望のDVD化されております

 

悪に賭け、悪に駆ける青春

完璧なはずの法にも死角があった

 

▲夏木勲/主役の鶴岡七郎役

▲天知茂/福永検事役

 

♣ 日本では珍しい知的ハードボイルド!

 

この物語は、高木彬光氏の原作を先に読んでおりました。もう30年以上前です。映画化にあたってキャストを見たときは少し意外だった記憶があります。当時、夏木勲はどちらかというと主役というより脇役のイメージが強かったですが、実際観ると、びっくりするくらい良かったです。ひとつは、彼自身にイメージが固まっていなかったことが大きいと思います。ギラギラしていてしたたかで、それでいて艶っぽい。この映画は彼で大正解だと思います。対して、それを追う福永検事役の天知茂の非の打ちどころがない正義漢ぶりがすばらしい!彼の当たり役のひとつの明智小五郎と同じくらいハマってます

 

主演の夏木勲は生涯300本以上の映画、ドラマに出演しており、角川映画にも「野生の証明」「戦国自衛隊」など数多く出演しています。個人的には脇で渋い演技の彼の方が持ち味が出ると思いますが、この映画はある意味、夏木勲の一世一代の映画です!この映画を観てサム・ペキンパー監督、ウォーレン・ウォーツ主演の「ガルシアの首」を思い出しました。ちなみに、「夏木勲」の名は78年から84年までのみ使われており、通常は「夏八木勲」の名を使っています

 

 

♣ ひと言でいうなら「ダサカッコイイ」映画!

 

「そんなバカな!」という展開が「そんなこともあるか」という、逆にリアリティを感じてしまうから不思議です

 

いつもなら、どちらかというと悪役が多い成田三樹夫や佐藤慶が真面目な会社役員を演じ騙されるというのも面白い。映画を見慣れてくると俳優を見ただけで「此奴らはいつか裏切る」とか「いい奴だけどいつか殺られる」みたいな先入観があります。それを承知で観るのもいいですが、今回はいい意味で裏切られました

 

この映画は、今で言う「コンゲーム」映画なのですが、「コンフィデンスマンJP」(19)、「インサイド・マン」(06)、古くは「スティング」(73)のようなスマートで爽快ではなく、いわゆる「詐欺師」の物語です。時代背景もありますが、泥臭くギラギラと脂ぎった作品で、そこが魅力のひとつでもあります

 

▲島田陽子/鶴岡の愛人あやか役

▲丘みつこ/鶴岡の妻のたかこ役

 

♣ 鶴岡(夏木勲)をとりまく二人の女!

 

この映画には二人の女性が登場します。丘みつ子と島田陽子で、二人とも当時は清純派のイメージが強かったですがハードなベッドシーンもあります。丘みつ子は一生懸命に演じているという印象ですが、一方の島田陽子はむしろ生き生きしていたように見えます。この二人の女は単に画面を彩るというより、より鶴岡(夏木勲)の悪を浮き上がらせた感があります。それにしても島田陽子は「砂の器」でもそうですが、一途な薄幸な女が似合いますね

 

主題歌のダウンタウン・ブギウギ・バンドの「欲望の街」は、数ある角川映画の中でも最高の名曲と推すひとも多く、「悪」に生きる男の生き様とそれに翻弄されつつも共に生きた女の情念のようなものを感じます

 

 

鬼才村川透監督、音楽の宇崎竜童、バイプレイヤーの夏木勲の男くささ満載の映画です

 

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キャッチコピーは

「狼は生きよ!ブタは死ね!」

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天才詐欺師の富岡七郎(夏木勲)が、始まってすぐ仲間と飲んでいる時に熱く語ったセリフからきています

 

「隅田(岸田森)は非情の精神が足りなかった。これからは豚を喰う狼が増えていくだろう。俺はその狼を喰う!つまり本物の犯罪をやるんだ!」

 

熱いエンターテイメント作品です

是非どうぞ!