今日の映画は「好きな映画ベスト100」などの企画には、必ず上位にランクされる映画で、初めて観たのが劇場公開時に銀座で、その後レンタルとテレビで数度観ております。自分の中では「とっておきの一本」です!

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ニュー・シネマ・パラダイス」

  1988年/イタリア

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

(124分/劇場版)

(173分/ディレクターズカット版)

 

シチリア島ののどかな村で育った少年トトと、町の映画館の映写技師アルフレードとの交流を描いた映画愛あふれるヒューマンドラマの名作!

 

 

<監督>

ジュゼッペ・トルナトーレ

この映画の舞台となったシチリア出身で、この映画は33才の時の作品!「海の上のピアニスト」、近年では「鑑定士と顔のない依頼人」が有名

 

<キャスト>

フィリップ・ノワレ/アルフレード(映写技師)

サルヴァトーレ・カシオ/トト(少年期)

マルコ・レオカルディ/トト(青年期)

ジャック・パラン/トト(中年期)

 

アニェーゼ・ナーレ/エレナ(若年期)トトの恋人

ブリジット・フォッセー/エレナ(中年期)*DC版のみ

 

ブリジット・フォッセー・・・聞き覚えがありませんか?実は彼女、あの「禁じられた遊び」の少女役ポーレットです!さらに、ベルモンドとドロンの名作「さらば友よ」にも出演しています。この映画には「DC版」のみの出演で、「劇場公開版」ではカットされています

 

<音楽>

エンニオ・モリコーネ

「荒野の用心棒」などの多くのマカロニウエスタン他「死刑台のエレベーター」、近年では「ヘイトフル・エイト」など多数。この映画の音楽はベストに推す人も多いのも頷けますね

 

 

第二次世界大戦の最中、シチリア島が舞台_

ローマで暮らす映画監督サルヴァトーレの元へある日、少年時代に過ごした映画館「パラダイス座」の映画技師アルフレードの訃報が届きます。そして、かつて少年時代、青年時代を過ごした日々を回想するのだが・・・

 

実は、この映画には3つバージョンがあります

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

●ディレクターズカット版(DC版)/173分

●オリジナル版(イタリア本国公開版)/155分

●劇場公開版/124分

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

多分、現在日本で観られるのは「DC版」「劇場公開版」の2種類だと思いますが、自分は両方観ています。基本的に両方とも素晴らしい映画には違いありませんが、上映時間がかなり違います。実は、この約50分の放映時間の違いにより、映画の主題が違っておりますが、今回のレビューでは「ディレクターズカット(DC版)」(173分)であることをご理解ください

 

銀座4丁目にある「シネスイッチ銀座」での興行収入並びに40週に及ぶ上映は、単一映画館では今でも破られていない記録だそうです。賞の有無は、あまり気にしておりませんが、この映画はアカデミー最優秀外国語賞、カンヌ国際映画祭審査員特別賞などさまざまな賞を受賞しており、多くの人々の支持を受けています

 

 

 

郷愁と映画への愛がつづられた作品で、イタリア映画の復活を内外に訴えた作品!

 

この映画は、小さい時に映画の楽しさを教えてくれた故郷シチリアの元映写技師アルフレードの訃報から始まります。前半はゆったりと丁寧にトトの少年時代とともに、当時唯一の娯楽だった映画と、それを取り巻く人々を描きます。自由でありながら規律や階級差別などを織り交ぜゆったりと進みます

 

当時の映画館(運営していたのは教会)の賑わいやそこに集う人々が映画と共に笑い、泣き、感動する様子は昭和の古き良き時代を思わせます。この時、村のみんなが見ていた映画は「どん底」「風と共に去りぬ」「街の灯」「にがい米」「美女と野獣」「郵便配達は二度ベルを鳴らす」など多数ありますが、いつか全部解明したいですねえ(笑)

 

長いトトの回想シーン・・・

 

こういう映画を観ていると、手作りの映画がかもし出す温かさはどんなに優れたテクノロジーでも表現できないことを痛感します

 

子供時代の映画好きの無邪気なトト

青年時代セレナとの出会いと別れ

そして、故郷を離れ映画監督として成功したトト

 

名言や名シーンの多いこの映画を、エンニオ・モリコーネの旋律によってさらなる感動へ誘います。やがて青年となったトトはセレナという女性と出会い恋に落ちます

 

「青い眼をした女は手強い!」

 

エレナが青い目をしていることを知ったアルフレードが、トトに言い放った言葉は身分違いの恋の行方を暗示した言葉でもあります

 

 

 

愛するセレナと別れ、トトは故郷を後にします。その時、アルフレードは青年トトに言い聞かせるセリフ

 

「人生はお前が見て来た映画と違う。もっと困難なものだ!行くんだ、そして決して帰ってくるな。お前は若い!ノスタルジーに惑わされるな!」

 

トトの非凡な才能と可能性を信じ、さらに、セレナとの身分違いの恋の行方についてもアルフレードは見抜いていたんでしょうねえ

 

「視力は失ったが、前よりもずっとよく見える」

 

 

 

30年ぶりに故郷に帰ってきて、アルフレードの形見としてトトに渡されたのは、古い映画のつなぎ合わせたフィルムでした

 

「もう映画は夢ではなくなりました」

 

子どもの頃の屈託のない笑顔とは対照的に、中年になり映画監督として成功したトトには笑顔がありません。それが、ラストのフィルムを観た時の涙のわけは?そして笑顔のわけは?

 

この映画は、ラストの「封印されたキスシーン」のためにすべてがあります!

 

「武器よさらば」1932年

ゲイリー・クーパーとヘレン・ヘイズのキスシーン

 

この映画の有名なラストのキスシーン映像(アルフレードがトトに遺した形見の映像)の意味とは?

 

これについては、いろいろな解釈があると思いますが、「劇場公開版」と「DC版」とでは若干、意味合いが違ってきます。「劇場公開版」では、トトやアルフレードを含めた「パラダイス座」を中心とした映画賛歌に対し、「DC版」では、それらに加え、トトの人生に重きが置かれ、おのずと「封印されたキスシーン」の意味も若干、違ってくると思います

 

アルフレードが奥さんに「トトが帰ってきたら渡してくれ」と渡したこのフィルムは、さて「いつ編集されたものなんでしょう?」

 

トトが子供の頃、上映される映画は検閲されキスシーンなどはカットされ、そのフルムを欲しがるトトにアルフレードは「お前には、まだ早い!俺が預かっておく」というシーンがあります。ラストシーンで流れるフィルムは、この時のキスシーンをつなぎ合わせたもので、約束を守ってくれたことと、楽しかった時代を思い出させる意味があったと思います。ただ、「DC版」ではそれに加え、結果としてセレナとの想いを断ち切らせてくれた(そう予想していた)アルフレードの深い愛情を同時に感じたのだと思います

 

「子供の時に映写室を愛したように、自分のしてきたことを愛せ」

 

このようなメッセージが込められていたように思います

 

だからそのフィルムを見てトトは笑った!だからトトは涙した!

 

ひとつの映画に二つの物語(基本的には一つですが)があり、それぞれ素晴らしいのですが、最も監督が言いたかったのは「DC版」の気がしてなりません!

 

「得たものもあれば失ったものもある。しかし、変わらないものもある、それが人生だ」

 

それを取り戻してくれるラストのキスシーン

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「劇場公開版」と「DC版」のどちらの映画がいいか、または好きかは個人の感性によるものですから、出来れば両方を観ることをおススメします!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この物語は、スクリーンに流れるあのつなぎ合わせたフィルムの「FINE」の文字と共に幕を閉じます

 

「映画っていいなあ~」と、しみじみ感じさせてくれる映画です。是非、ご覧あれ!