「原型製作」、いよいよ完了へ! | ワンダちゃんNEXT DOORプロジェクト 開発スタッフブログ

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キャラクターデザイン&イラスト担当の望月けいさんに対し、フィギュア造形における“モデリングスーパーバイザー”的なスタンスでの協力を要請した結果、みるみるうちにその完成度と説得力が高まりはじめたChilmiruさん(うろこもん)原型製作によるFILE:06版ワンダちゃん
というわけで今回は、原型製作編の続編を綴っていこうと思います(※今回、大変申し訳ないのですがかなり長めの回となります)。

まずは、前回のブログのラストに掲載した画像から、ほぼジャスト3ヶ月が経過した状態の原型製作途中画像から……。


▲まだ目(瞳)まわりに望月キャラ度数が足りていない気もしますが、独特の望月キャラ体型が各所に的確に反映され、完成度が一気に高まった感じです。また、マントの造形が非常に美麗で、「これ、何を素材にしてどうやって造形したんですか?」と問い合わせたところ、「……え? 普通にファンドで作っただけですけど」との回答。マントの布がきちんと平面裁断(広げたときにきちんと1枚の平たい布になっている)に見えるところが「さすが!」です

そしてこの段階での造形途中画像を見ていて気付いたのが、「望月さんのイラストどおりではあるのだけれど、これをそのまま立体化したらブーツにおけるソール裏面の間が確実に持たない」ということでした。
確かにブーツにはソール裏面がほぼツルツルなものも多数存在しますが、ただし、あくまで“フィギュア”として眺めた際、前方から見たときと後方から見たときの情報量格差が大きすぎてバランスが悪く、その情報量格差を埋めるためにはブーツのソール裏面にディテールを入れるしかないという考えに行き着いたわけです。

そうしたこちらからのそのリクエストに対し、望月さんが描き下ろしてくださったソール裏面のディテールが以下のものとなります。


▲望月さんがデザインしてくださったブーツのソール裏面のディテールはご覧のとおり。また、「ブーツのソール裏面とヘッドフォン側面にこういうロゴマークをタンポ印刷で入れてほしい」というリクエストがあり、同リクエストは実際のプロダクトでも反映されることになります


▲さらに望月さんが描き下ろしてくださった、こちらからの「目(瞳)まわりに望月キャラ度数が足りていない気がする」という意見に対する修正アドバイス。じつは目の修正に関してはこの後も長らく続いていくのですが、もう本当に微々たる修正の繰り返しだったのでそのあたりは割愛させていただきますね

さて。そんなこんなで造形に着手しはじてからほぼジャスト半年、相当な難産の上に、Chilmiruさんの原型製作はようやくフィニッシュを迎えます

こちらからお願いしたブーツのソール裏にディテールが追加されたのはもちろんのこと、望月さんからの幾度にもわたる詳細な修正アドバイスがほぼすべて拾われ反映されたそれは、まさしく「望月世界の住人」と称すにふさわしい完成度望月さんご本人も大納得の仕上がりとなりました。


▲部分的にピントが甘くてディテールが見えづらい箇所もあると思いますが、とくに肘の形状など、望月キャラ独特のラインがとてもキレイに再現させていることが分かると思います。また、わざわざ追加画稿を描いていただいたソール裏のディテールもじつに効果的なものと化したと言えるはずです


▲上の組み立て見本画像の撮影完了後、すべてのパーツを分解して並べパーツ点数を明確化すると同時に、ヘッドフォンのバンド部分を青でぐるっと囲み「このパーツが無茶苦茶壊れやすいです!」という注意書きが添えられた状態の画像。この後、同原型は大阪の海洋堂本社へ向け発送されました。……しかしマントのシワが自然、かつ美しい!

こうして完成した原型は海洋堂本社ですぐに複製にまわされ、ペイントマスター製作担当でもあるChilmiruさんの手元にピュアホワイトで成型されたレジンパーツが数セット送られることになったわけですが……正直なところ、ペイントマスター製作に関してはChilmiruさんのことを100%完璧に信頼していたので、こちらから「ここはこういう感じに塗装して仕上げてほしい」的な指示やお願いは一切出しませんでした

ただし唯一、企画製造協力をお願いしているグッドスマイルカンパニー(通称グッスマさん)の開発担当Y氏から「マントの内側は赤と紫の2色使いで塗り分けるんですか?」という質問が入ったので、「……いやいや、そういうことではないんですよ!」ということを説明するための画像をこちらがPhotoshopで作成し、グッスマさんの開発担当Y氏、望月さん、Chilmiruさんとのあいだで情報共有を図ることに。


▲左が望月さんのオリジナル原画、右がこちらでPhotoshop加工した「マントの内側は2色使いの塗り分けなのではなく、紫の部分はアニメ的手法に基づく赤の影色なんですよ」という説明用画稿。たとえば劇場版『機動戦士ガンダム』の描き下ろし作画パートにおける地球連邦軍の女性用制服などは、このように「影色がものすごく濃くて一瞬目が点になる」というようなことがありましたが、要は、それと同様の表現であるということだったわけです

その後Chilmiruさんの手によるペイントマスターが仕上がり広報写真用のスタジオ撮影が行われたのですが、望月さんのイラストと同角度から撮影されたChilmiruさん原型製作のフィギュアを見比べた際、マントの形状に関してはChilmiruさんの造形したフィギュアのほうが明らかに“+1D分”だけの説得力があったんですね。そのシワの形状においても、しなやかな布の流れ具合においても。
やはり絵というのはよくも悪くも“2D”なので、ある意味「だまし絵」的な要素が入り込んできてしまう余地が多々存在するわけです。

というわけで、望月さんのイラストと同角度から撮影されたChilmiruさんのペイントマスター画像を並べて、マントの形状を比較検証してみましょう。


▲こうして見比べたとき、望月さんのイラストのマント形状のほうが「2Dのイラストとしてのケレン味」を感じ取ることができます。ただし、本プロジェクトの根幹的なコンセプトを考えた際には……

……そう、望月さんのイラストのマント形状のほうが「2Dのイラストとしてのケレン味」を感じ取ることはできるのですが、本プロジェクトの根幹的なコンセプトは「とにかく2Dのイラストをそっくりそのまま3D化する」というところにあるため、こうしたケースの場合はChilmiruさんの造形に対しNGは出せないわけです。
その事実は望月さんも十二分に理解なさってくれていて、望月さんもご納得の上で「マントの形状をChilmiruさんのフィギュアに合わせて描き直したい」というご要望をいただけたのでした。

そうして仕上がったのが、下に掲載する「決定稿イラスト」です。上に掲載した左側の「準決定稿イラスト」とそのマント形状をよく見比べてみてください!




このように、まさしく「イラストレーター×原型師が等価な位置に属するコラボレーション」として仕上がった、望月けいさん×ChilmiruさんによるFILE:06版ワンダちゃん。
キャラクターデザイン&イラストも造形も難産に次ぐ難産でしたが、その分だけ、これまでのFILE:01〜05版ワンダちゃんとはさまざまな意味においてテイストの異なる小悪魔的でファッショナブルなワンダちゃんが誕生したと思っています。

……そんなこんなでじつはワンフェス開催まで残すところあともう9日(!)ということなので、次回はこの原型&ペイントマスターがいかにしてマスプロダクト化されたかを駆け足で一気に解説していきますね。

それでは、ワンフェス開催直前となる来週金曜日=27日のブログ更新にご期待ください!