増補版 図説 台湾の歴史 周婉窈
平凡社 2013年
台湾の歴史の本です。コレも台湾の方のものです。
元々97年頃に書かれた本のようですが、当時は終戦(光復)までの内容だったようですが
日本語版が出版されるにあたって、戦後について追加したものだそうです。
前回書いた認識台灣と同じように台湾人が台湾のことを知ろう、という流れの中で書かれたもののようです。
台湾は日本統治の50年、更に戒厳令下の40数年、台湾の歴史を学ぶことができなかった、
しかも、これまでの歴史はあくまで『漢人視点』での歴史であり、
そもそもあの地に古くから住んでいる原住民たちの視点が抜けており、
『台湾の歴史』という点においては視点が足りていない、と。
この本も細かく起こった出来事を一つ一つ取り上げて述べるということは少なく
こういう歴史的な流れの中で、こういう事が起こり、後のこういうことに繋がる、といった形で記されているため
非常にわかりやすかったのと(それぞれの事件については各々掘り下げる必要があるかもしれませんが)
確かに原住民側から見た視点というのも一部書かれていました。
残念だったのは戦後の部分で(228~戒厳令~民主化)原住民の視点や考えかたがもっと反映されていたら
更に多元的に台湾の現代社会を捉えることができていたのかなと言う気はします。
実のところこの本の中でいちばん重要なのは253ページ目からの数ページで、
現代の台湾社会(ほんとうの意味での2020年現在はここから更に10年程度は経っているため
また色々社会や人々の暮らし向きや考え方、あるいは台湾を取り巻く環境の変容などもあるので
当時とはまた少し違った感じになるかと思いますが)の根っこの所を捉えている部分かと思います。
とても乱暴に言ってしまうと(本当はもっとずっと複雑)本省人と外省人というところに問題の根っこがあり
更にそこにその前の50年に及ぶ日本による統治が更にこの問題を複雑かつ深刻にさせていると。
いや、本当はもっともっと複雑です。本当に複雑なことをしっかり書いてありますので是非読んでみてください。
私個人がどうこうできる問題ではありませんし、あくまで歴史の一部という認識でしかありませんが
日本人として知っておくべき現状なのかもしれません。この台湾周りの事は。
この253ページからの数ページだけでも読む価値がある本だと思いますし、
ある意味台湾に興味をもっている方にはぜひ読んでいただきたいと思える本です。
その上で、台湾人は親日の方が割と多いという点について(決してみんながみんな親日ってわけじゃないですよ!)
改めて考えてみつつ、実際に台湾に訪れて美味しいものを食べたり、
キレイな景色を眺めたり、現地の方と楽しくおしゃべりしてみると、よりよいのかのしれませんね。
是非!