#5 『ウルフさんの 個人サロンができるまで』
森の木々が赤く染まり、
落ち葉のじゅうたんがふかふかになった、
ある秋の昼下がりのことです。
ふかふかのじゅうたんを、
シャリシャリと気持ちいい音を立てながら歩いてくるオオカミがいました。
この森の中ではちょっとした有名人なので、
もうご存知の方もいるかもしれませんね。
そうです、ちょっぴり乱暴だけれど、
不思議と物知りな、オオカミのウルフさんです。
ウルフさんは、山で採れた豊富な秋の収穫を袋に詰めて、
上機嫌でおうちに帰っていくところでした。
「今日はたくさん取れたなぁ~。特にキノコがすげぇ!
こいつぁ、なんていうキノコだろうなぁ・・。
なんか紫と茶色の不思議な組み合わせだけど、
キノコには変わりねぇし、生で食っちまっても大丈夫だろう。
あとは、カワウソのコウちゃんに魚を分けてもらって、
キューっといっぱいやるか!」
そんな独り言をつぶやきながら森を歩いていると、
切り株のテーブルをはさんで向かい合ったリスとネコに出会いました。
リスとネコはなんだか口論をしています。
「だからぁ、もう一度技術を磨きに、
一緒にスクールに行こうって言ってるんじゃない!」
「技術なんか、サロンを開いたらついてくるよ!
それに、スクールのお金だってどうするのさ!」
ウルフさんは、おやおやと思いながら、横を通り過ぎようとしました。
その間にも、口論はどんどん進んでいきます。
「お客様に喜んでいただく技術があって、
はじめて開業が可能なんじゃないの!?
言ってること間違ってるワケ?」
「君はサロン経営については素人だろ!?
サロンビジネスはね、技術を追い続けるだけじゃだめなんだよ!
どんなにいい技術があったって、
ちゃんと集客できなきゃ、個人サロンは潰れちゃうよ!」
そこでウルフさんは、ちょっと立ち止まり、ポソリとつぶやきました。
「なんでぇ、個人サロンのことでもめてんのか・・・」
ウルフさんは、個人サロンで困っている人をほうっておけない性分なのです。
それは以前、アロマセラピーサロンで困っていたウサギのもへこのおかげで、
森の仲間に入れてもらえた経験があるので、
個人サロン業界には恩返しをしたいと常々思っているからでした。
しかし、何も知らない自分が口を出すのもどうかと思い、
山菜を探すふりをして、こっそりと、もう少し話を聞いてみることにしました。
『技術が大事』と言っていたネコのほうが、
再び口調を荒げてリスに詰め寄ります。
「プッチこそ、技術は素人でしょ!?
私は、アロマセラピーとリフレクソロジーとレイキの資格を持ってるワケ!
大手サロンでの勤務経験だって、私の方が長いわ。
プッチはリフレクソロジーのスクール資格しかもっていないじゃない!」
『経営が大事』と言っていたリスは、怒りで尻尾を震わせながら言いました。
「僕はその大手サロンで、副店長を務めていたんだぞ!?
サロンの運営のことは、ミケちゃんよりも理解しているんだ!
それに、一緒にサロンをやりたいって言ったのは、君のほうだろ!?」
「私は、技術でお客様を大切にする隠れ家個人サロンを開きたいの!
でも、経営がわからないから、一緒にやりたいって声掛けたんじゃない。
『技術を大切にする』っていうのは、最初に理解してくれていたでしょ?」
「理解してるよ!
理解してるから、3ヶ月間もアロマセラピーの新しい技術を習得するのを待ったんじゃないか。
その間のスクール費用は、半分僕が出してるんだよ!?
それなのに、『ハワイアンロミロミも習いたいから、
あと3か月勉強したい』って、どういうこと!?」
これは話が終わらないなと思ったウルフさんは、
ついに二人に声をかけることにしました。
「なんだぁ、もしかして、サロンの運営についてもめてんのか?」
「あ、ウルフさん、こんにちわ。
そうなんですよ・・ もう開業準備は整っているのに、
ミケちゃんが、『もう一度技術を勉強するべきだ』っていうんですよ。
そんなこと言っていたらいつまでたっても開業なんてできやしない!
技術なんて、実践で身につけるものですよね?」
リスが尻尾をくるくる巻きながら言いました。
「誰も、技術だけあればいいって言ってるんじゃないわ。
技術に少しでも不安があるのなら、
不安をなくしてから開業しましょうって言ってるワケ!」
ネコがひげをぴんと立てながら言いました。
『ウルフさん、技術と経営は、どっち先に必要だと思います?』
2匹は声をそろえて、ウルフさんに詰め寄りました。
「そんなもん、決まってるじゃねぇか。『両方』だよ。
ホレ、さっきとってきたキノコをやるから、
ちょっと頭を冷やして考えなって。
このキノコなら、生でも食えそうだからよ」
ウルフさんは紫と茶色のキノコを二人にあげて、ジェントルに立ち去りました。
「さてと、家に帰ってキューっといっぱいやるか」
後ろからは、二人の笑い声が聞こえてきます。
「なんでぇ、やっぱりちょっとしたきっかけがあれば仲良くなれるんじゃねぇか。
いいことしたなぁ、オレ」
後ろの笑い声は、どんどん大きくなっていき、大爆笑になりました。
「うんうん、『雨降って地固まる』ってぇのは、こういうことだな」
後ろの笑い声は、笑いすぎてむせこむくらいになっていきました。
ウルフさんが、おかしいなと思って、後ろを振り向くと、
そこには笑いすぎて痙攣をしている2匹の小動物がいました。
「ウ・・・ウルフさん、これ、ワライダケ・・・・」
「なんだってぇ~!? 大丈夫か!?」
ウルフさんが慌てて駆け寄ると、2匹は笑いすぎて気を失ってしまいました。
・・・続く
作品:『ウルフさんの 個人サロンができるまで』
落ち葉のじゅうたんがふかふかになった、
ある秋の昼下がりのことです。
ふかふかのじゅうたんを、
シャリシャリと気持ちいい音を立てながら歩いてくるオオカミがいました。
この森の中ではちょっとした有名人なので、
もうご存知の方もいるかもしれませんね。
そうです、ちょっぴり乱暴だけれど、
不思議と物知りな、オオカミのウルフさんです。
ウルフさんは、山で採れた豊富な秋の収穫を袋に詰めて、
上機嫌でおうちに帰っていくところでした。
「今日はたくさん取れたなぁ~。特にキノコがすげぇ!
こいつぁ、なんていうキノコだろうなぁ・・。
なんか紫と茶色の不思議な組み合わせだけど、
キノコには変わりねぇし、生で食っちまっても大丈夫だろう。
あとは、カワウソのコウちゃんに魚を分けてもらって、
キューっといっぱいやるか!」
そんな独り言をつぶやきながら森を歩いていると、
切り株のテーブルをはさんで向かい合ったリスとネコに出会いました。
リスとネコはなんだか口論をしています。
「だからぁ、もう一度技術を磨きに、
一緒にスクールに行こうって言ってるんじゃない!」
「技術なんか、サロンを開いたらついてくるよ!
それに、スクールのお金だってどうするのさ!」
ウルフさんは、おやおやと思いながら、横を通り過ぎようとしました。
その間にも、口論はどんどん進んでいきます。
「お客様に喜んでいただく技術があって、
はじめて開業が可能なんじゃないの!?
言ってること間違ってるワケ?」
「君はサロン経営については素人だろ!?
サロンビジネスはね、技術を追い続けるだけじゃだめなんだよ!
どんなにいい技術があったって、
ちゃんと集客できなきゃ、個人サロンは潰れちゃうよ!」
そこでウルフさんは、ちょっと立ち止まり、ポソリとつぶやきました。
「なんでぇ、個人サロンのことでもめてんのか・・・」
ウルフさんは、個人サロンで困っている人をほうっておけない性分なのです。
それは以前、アロマセラピーサロンで困っていたウサギのもへこのおかげで、
森の仲間に入れてもらえた経験があるので、
個人サロン業界には恩返しをしたいと常々思っているからでした。
しかし、何も知らない自分が口を出すのもどうかと思い、
山菜を探すふりをして、こっそりと、もう少し話を聞いてみることにしました。
『技術が大事』と言っていたネコのほうが、
再び口調を荒げてリスに詰め寄ります。
「プッチこそ、技術は素人でしょ!?
私は、アロマセラピーとリフレクソロジーとレイキの資格を持ってるワケ!
大手サロンでの勤務経験だって、私の方が長いわ。
プッチはリフレクソロジーのスクール資格しかもっていないじゃない!」
『経営が大事』と言っていたリスは、怒りで尻尾を震わせながら言いました。
「僕はその大手サロンで、副店長を務めていたんだぞ!?
サロンの運営のことは、ミケちゃんよりも理解しているんだ!
それに、一緒にサロンをやりたいって言ったのは、君のほうだろ!?」
「私は、技術でお客様を大切にする隠れ家個人サロンを開きたいの!
でも、経営がわからないから、一緒にやりたいって声掛けたんじゃない。
『技術を大切にする』っていうのは、最初に理解してくれていたでしょ?」
「理解してるよ!
理解してるから、3ヶ月間もアロマセラピーの新しい技術を習得するのを待ったんじゃないか。
その間のスクール費用は、半分僕が出してるんだよ!?
それなのに、『ハワイアンロミロミも習いたいから、
あと3か月勉強したい』って、どういうこと!?」
これは話が終わらないなと思ったウルフさんは、
ついに二人に声をかけることにしました。
「なんだぁ、もしかして、サロンの運営についてもめてんのか?」
「あ、ウルフさん、こんにちわ。
そうなんですよ・・ もう開業準備は整っているのに、
ミケちゃんが、『もう一度技術を勉強するべきだ』っていうんですよ。
そんなこと言っていたらいつまでたっても開業なんてできやしない!
技術なんて、実践で身につけるものですよね?」
リスが尻尾をくるくる巻きながら言いました。
「誰も、技術だけあればいいって言ってるんじゃないわ。
技術に少しでも不安があるのなら、
不安をなくしてから開業しましょうって言ってるワケ!」
ネコがひげをぴんと立てながら言いました。
『ウルフさん、技術と経営は、どっち先に必要だと思います?』
2匹は声をそろえて、ウルフさんに詰め寄りました。
「そんなもん、決まってるじゃねぇか。『両方』だよ。
ホレ、さっきとってきたキノコをやるから、
ちょっと頭を冷やして考えなって。
このキノコなら、生でも食えそうだからよ」
ウルフさんは紫と茶色のキノコを二人にあげて、ジェントルに立ち去りました。
「さてと、家に帰ってキューっといっぱいやるか」
後ろからは、二人の笑い声が聞こえてきます。
「なんでぇ、やっぱりちょっとしたきっかけがあれば仲良くなれるんじゃねぇか。
いいことしたなぁ、オレ」
後ろの笑い声は、どんどん大きくなっていき、大爆笑になりました。
「うんうん、『雨降って地固まる』ってぇのは、こういうことだな」
後ろの笑い声は、笑いすぎてむせこむくらいになっていきました。
ウルフさんが、おかしいなと思って、後ろを振り向くと、
そこには笑いすぎて痙攣をしている2匹の小動物がいました。
「ウ・・・ウルフさん、これ、ワライダケ・・・・」
「なんだってぇ~!? 大丈夫か!?」
ウルフさんが慌てて駆け寄ると、2匹は笑いすぎて気を失ってしまいました。
・・・続く
作品:『ウルフさんの 個人サロンができるまで』
#4 『ウルフさんの リピートを生み出す話し方』
とても暑い夏の、ある日のお昼。
森には元気なセミの鳴き声が
『ミ~~ン、ミ~ン、ミ~~~~ン・・』と、響き渡っていました。
こんな暑い日には毎日、
森で一番の水遊びスポット『おぼろ川』で水浴び大会が行われるのですが、
今日はおぼろ川に人影がありませんでした。
それもそのはず。
今日は森で一番大きな夏の風物詩、『森の精霊祭り』が行われるので、
みんなその準備で、朝から大忙しなのです。
森の中心にある大きな大きな杉の木には、
精霊が宿り、森を守ってくれていると、昔から言い伝えられていました。
今日は、その精霊に感謝を込めて、キャンプファイヤーをしながらお祭りをするのです。
「でもよぉ・・」
いつものようにウサギの『もへこ』のアロマセラピーサロンに遊びに来てお茶を飲み、
グラスに残ったアイスティーの氷をコリコリとほお張りながら、
ウルフさんが呟きました。
「木の精霊に感謝を伝えるのに、
木を燃やしてキャンプファイヤーってぇのは、
ちょっとおかしいんじゃねぇか?」
「そういえばそうですね・・・」
ウサギのもへこが、ニンジンジュースを飲み干しながら納得しました。
「でも、火は神聖なものって昔から言われているから、
その辺の兼ね合いじゃないですかねぇ・・」
「ふ~~ん、まぁ、どっちでもいいか」
「自分から振ったくせに・・」
もへこが苦笑いをしながら、ウルフさんのグラスを片付け始めました。
「そういえば、ロビンスの奴は、
結局どんな屋台を出すんだ? マッサージの店か?」
指圧の国家資格を持ったブタの『ロビンス』は、
このお祭りのために屋台を出すんだと張り切っていたのです。
「あぁ、ロビンスは確か、焼き鳥屋さんを出すみたいですよ。
違うことがやりたいとかで。」
「あいつらしいな。
また油でギトギトだったら食えたもんじゃねぇけど、大丈夫かなぁ・・」
「ん~、味は大丈夫だと思いますよ。
でも、出店するときに、ずいぶんもめたみたいですよ」
「へぇ~、何かあったのか?」
「出店するブースの隣が、
ニワトリのクックさんの『メンチカツの店』だったそうで・・・」
「まぁ・・木の精霊の前でキャンプファイヤーやるみてぇなもんだけどな・・・」
精霊祭りには、まだお昼過ぎなのに、すでに沢山の森の仲間が集まっていました。
大きな大きな杉の木を囲むように、
円形に屋台が並び、屋台の前には椅子が並んでいます。
杉の木の麓にはキャンプファイヤーをするための木がすでに組まれており、
賑やかな夜を静かに待っていました。
「ロビンスのやつはどの辺に店を出してんだ?」
「え~と、Cブロックの2番目ですね」
もへこがお祭りのパンフレットを広げて確認を始めました。
そこへ、
「あのぉ、まことにすいまメ~ン」
現われたのは、羊のおばあちゃんと、どうやらそのお孫さんです。
「はい、どうしました?」
「あのぉ、孫が『お肉を食べたい』って言い出したんですが、
お肉が食べられるお店って、どの辺にあるでしょうか?
私はメェ~が悪くって・・・」
「あら、それでしたら一緒に焼き鳥のお店に行きましょうよ。
私の友達が作っているので、きっと美味しいですよ。
え~っと・・・、すぐ近くにあるみたいです」
もへこがパンフレットを片手に、
羊のおばあちゃんとお孫さんをロビンスの焼き鳥屋まで誘導して行きました。
ウルフさんはお孫さんを怖がらせないように少し離れて、
後ろからそっとついていきました。
「え~と、あ、あった!
ロビンスゥ~。 お客様を連れてきたよぉ~」
「あぁ、もへこちゃん! きてくれたんだねぇ。 いらっしゃいませぇ~!
お客さんが全然こなかったから、助かったよぉ~・・」
ロビンスは楽しそうに焼き鳥を焼き、
羊のお孫さんへのおまけとして、アメをつけてあげました。
羊のおばあちゃんは喜んで、
何度もロビンスともへこにお礼を言って去っていきました。
「なんでぇ、ロビンス。 お客さん、あんまり来てねぇのか?」
それを見計らって、ウルフさんがロビンスの店にやってきました。
「それが、立ち止まってはくれるんですが、
どうも買っていってはくれないんですよね・・
冷やかしが多いというか・・・」
「ふ~ん、なんでだろうなぁ。 まぁ、ちょっと様子を見てみっか」
ウルフさんともへこは、
ロビンスの店の前のベンチに座り、様子を見ることにしました。
しばらくすると、ロバのカップルがロビンスの店の前にやってきました。
「ねぇねぇ、焼き鳥だって。 おいしそうな匂いねぇ~」
「そうだね。どうしよっかぁ」
カップルはイチャコラしながらお店の前で相談をしています。
そこへロビンスが話しかけました。
「いらっしゃい! うちのは美味しいですよぉ~!
外はカリっと香ばしく、中はジューシー!
そのへんの焼き鳥とはわけが違いますよ!」
「そうねぇ~・・・どうしよっかぁ・・」
「確かにいい匂いだよねぇ~」
「でしょぉ? 食感がすごいんです!
一度食べたらわかりますよ。プリプリですから!」
「ん~・・そうねぇ・・」
「そうだなぁ・・」
「もぉ~、わかりましたよ!
じゃぁ、アメも2人分つけますから、これで何とか・・!」
「焼き鳥とアメって、なんだか合わないわよねぇ」
「そうだね。別のにしようか」
「そうね」
ロバのカップルはパカパカと去っていきました。
お客様を逃したロビンスは、
さっきまでの勢いと打って変わって、
「このロバカップルが!」みたいな顔をして見送っていました。
「と・・・まぁ、こんな感じで、冷やかしのお客様ばっかりなんです・・」
「ん~~~・・冷やかしって言うより・・・」
「どう見ても、見込み客をオメェ自身が断ってるじゃねぇか」
「思いっきり、営業ベタですね」
「そんなぁ~・・営業とかクロージングとか、
したこと無いからわからないですよぉ。
もへこちゃんは、なんでさっきの羊さんを集客できたの?
すごいよねぇ!」
「集客したっていうか、向こうから来てくれたっていうか・・」
「よしよ~し、まだ精霊祭りのピークまで時間があるからよ、
それまでにクロージングの方法を俺が教えてやるよ。
夕方から挽回していこうぜ!」
・・・続く
作品:『ウルフさんの リピートを生み出す話し方』
森には元気なセミの鳴き声が
『ミ~~ン、ミ~ン、ミ~~~~ン・・』と、響き渡っていました。
こんな暑い日には毎日、
森で一番の水遊びスポット『おぼろ川』で水浴び大会が行われるのですが、
今日はおぼろ川に人影がありませんでした。
それもそのはず。
今日は森で一番大きな夏の風物詩、『森の精霊祭り』が行われるので、
みんなその準備で、朝から大忙しなのです。
森の中心にある大きな大きな杉の木には、
精霊が宿り、森を守ってくれていると、昔から言い伝えられていました。
今日は、その精霊に感謝を込めて、キャンプファイヤーをしながらお祭りをするのです。
「でもよぉ・・」
いつものようにウサギの『もへこ』のアロマセラピーサロンに遊びに来てお茶を飲み、
グラスに残ったアイスティーの氷をコリコリとほお張りながら、
ウルフさんが呟きました。
「木の精霊に感謝を伝えるのに、
木を燃やしてキャンプファイヤーってぇのは、
ちょっとおかしいんじゃねぇか?」
「そういえばそうですね・・・」
ウサギのもへこが、ニンジンジュースを飲み干しながら納得しました。
「でも、火は神聖なものって昔から言われているから、
その辺の兼ね合いじゃないですかねぇ・・」
「ふ~~ん、まぁ、どっちでもいいか」
「自分から振ったくせに・・」
もへこが苦笑いをしながら、ウルフさんのグラスを片付け始めました。
「そういえば、ロビンスの奴は、
結局どんな屋台を出すんだ? マッサージの店か?」
指圧の国家資格を持ったブタの『ロビンス』は、
このお祭りのために屋台を出すんだと張り切っていたのです。
「あぁ、ロビンスは確か、焼き鳥屋さんを出すみたいですよ。
違うことがやりたいとかで。」
「あいつらしいな。
また油でギトギトだったら食えたもんじゃねぇけど、大丈夫かなぁ・・」
「ん~、味は大丈夫だと思いますよ。
でも、出店するときに、ずいぶんもめたみたいですよ」
「へぇ~、何かあったのか?」
「出店するブースの隣が、
ニワトリのクックさんの『メンチカツの店』だったそうで・・・」
「まぁ・・木の精霊の前でキャンプファイヤーやるみてぇなもんだけどな・・・」
精霊祭りには、まだお昼過ぎなのに、すでに沢山の森の仲間が集まっていました。
大きな大きな杉の木を囲むように、
円形に屋台が並び、屋台の前には椅子が並んでいます。
杉の木の麓にはキャンプファイヤーをするための木がすでに組まれており、
賑やかな夜を静かに待っていました。
「ロビンスのやつはどの辺に店を出してんだ?」
「え~と、Cブロックの2番目ですね」
もへこがお祭りのパンフレットを広げて確認を始めました。
そこへ、
「あのぉ、まことにすいまメ~ン」
現われたのは、羊のおばあちゃんと、どうやらそのお孫さんです。
「はい、どうしました?」
「あのぉ、孫が『お肉を食べたい』って言い出したんですが、
お肉が食べられるお店って、どの辺にあるでしょうか?
私はメェ~が悪くって・・・」
「あら、それでしたら一緒に焼き鳥のお店に行きましょうよ。
私の友達が作っているので、きっと美味しいですよ。
え~っと・・・、すぐ近くにあるみたいです」
もへこがパンフレットを片手に、
羊のおばあちゃんとお孫さんをロビンスの焼き鳥屋まで誘導して行きました。
ウルフさんはお孫さんを怖がらせないように少し離れて、
後ろからそっとついていきました。
「え~と、あ、あった!
ロビンスゥ~。 お客様を連れてきたよぉ~」
「あぁ、もへこちゃん! きてくれたんだねぇ。 いらっしゃいませぇ~!
お客さんが全然こなかったから、助かったよぉ~・・」
ロビンスは楽しそうに焼き鳥を焼き、
羊のお孫さんへのおまけとして、アメをつけてあげました。
羊のおばあちゃんは喜んで、
何度もロビンスともへこにお礼を言って去っていきました。
「なんでぇ、ロビンス。 お客さん、あんまり来てねぇのか?」
それを見計らって、ウルフさんがロビンスの店にやってきました。
「それが、立ち止まってはくれるんですが、
どうも買っていってはくれないんですよね・・
冷やかしが多いというか・・・」
「ふ~ん、なんでだろうなぁ。 まぁ、ちょっと様子を見てみっか」
ウルフさんともへこは、
ロビンスの店の前のベンチに座り、様子を見ることにしました。
しばらくすると、ロバのカップルがロビンスの店の前にやってきました。
「ねぇねぇ、焼き鳥だって。 おいしそうな匂いねぇ~」
「そうだね。どうしよっかぁ」
カップルはイチャコラしながらお店の前で相談をしています。
そこへロビンスが話しかけました。
「いらっしゃい! うちのは美味しいですよぉ~!
外はカリっと香ばしく、中はジューシー!
そのへんの焼き鳥とはわけが違いますよ!」
「そうねぇ~・・・どうしよっかぁ・・」
「確かにいい匂いだよねぇ~」
「でしょぉ? 食感がすごいんです!
一度食べたらわかりますよ。プリプリですから!」
「ん~・・そうねぇ・・」
「そうだなぁ・・」
「もぉ~、わかりましたよ!
じゃぁ、アメも2人分つけますから、これで何とか・・!」
「焼き鳥とアメって、なんだか合わないわよねぇ」
「そうだね。別のにしようか」
「そうね」
ロバのカップルはパカパカと去っていきました。
お客様を逃したロビンスは、
さっきまでの勢いと打って変わって、
「このロバカップルが!」みたいな顔をして見送っていました。
「と・・・まぁ、こんな感じで、冷やかしのお客様ばっかりなんです・・」
「ん~~~・・冷やかしって言うより・・・」
「どう見ても、見込み客をオメェ自身が断ってるじゃねぇか」
「思いっきり、営業ベタですね」
「そんなぁ~・・営業とかクロージングとか、
したこと無いからわからないですよぉ。
もへこちゃんは、なんでさっきの羊さんを集客できたの?
すごいよねぇ!」
「集客したっていうか、向こうから来てくれたっていうか・・」
「よしよ~し、まだ精霊祭りのピークまで時間があるからよ、
それまでにクロージングの方法を俺が教えてやるよ。
夕方から挽回していこうぜ!」
・・・続く
作品:『ウルフさんの リピートを生み出す話し方』
#3 『ウルフさんの 逆境を成功に変える方法』
森に春がやってきました。
雪で真っ白だった森には、緑の可愛い新芽が顔を出し、
桜もつぼみをふくらませ始めています。
森の仲間たちも、すっかり冬眠の寝ぼけ気分から覚めて、
冬眠中は閉めていたお店を再開したり、作物を育てる準備をしています。
ウサギの『もへこ』も、
自慢のアロマテラピーサロンを再開する準備をしていました。
冬場はみんなが冬眠してしまってあまり実践できませんでしたが、
この春からはオオカミのウルフさんに教えてもらった方法でサロンを運営し、
しっかりと繁盛させようと、やる気満々になっていました。
寒い冬の間にちょっとだけホコリをかぶってしまったお部屋を掃除し、
ラベンダーのエッセンシャルオイルを炊きました。
お店の中にほのかに爽やかで穏やかな香りが漂い、
もへこは新しい季節の訪れに対する期待感で胸がいっぱいでした。
「さぁ、今年からは違った自分になるんだ!
あぁ~、楽しみだなぁ。本当に自分がやりたいことを、
自分で選択して進んでいけるなんて、素敵だなぁ」
もへこは嬉しさのあまり、鼻歌を歌って踊りだしました。
・・そこへ・・・。
ドンドンドン!!!
「もへこちゃん! 助けて!」
この声は、ブタの『ロビンス』です。
近くでマッサージサロンを開いている、
指圧の国家資格を持ったブタの男の子です。
「今あけるから、待ってて!」
もへこは慌ててドアを開けました。
そこへ、泥んこでびしょ濡れになったロビンスが転がり込んできました。
「うひゃぁ! ちょ・・ちょっと、ロビンス!
どうしたの? そんなにずぶ濡れで・・。
しかも泥んこじゃない」
「うん・・・まいったよぉ・・。
こんなに汚れちゃって・・・。あいつめぇ・・・」
「あいつ? あいつって誰のこと?」
「ここからちょっと南に行ったところに、
『おぼろ川』ってあるだろ?
あそこに住んでいるカワウソが、大変なんだ・・・」
「あそこの川のカワウソって・・・コウちゃんのこと?」
「さぁ・・ボクは名前までは知らないけれど、
とにかくちょっと来てよ! 大変なんだ!」
シャワーを浴びて泥を落とした後、
もへことロビンスは一緒におぼろ川に向かいました。
おぼろ川は、昔はお花見の名所になっていた場所です。
春になると、みんながそこに集まって、
春の訪れを祝っていました。
でも最近は・・・、心無い人間の観光地になってしまい、
ごみや産業廃棄物が増え、
昔のキレイな川や景色が見る影もなくなってしまっていたのでした。
おぼろ川に近づいていくと、
鼻をつくような生臭い臭いがしてきました。
二人で顔をしかめながら川岸にやってくると、
そこはすでにごみの山になってしまっていました。
「ちょ・・・ちょっと・・・何? これ・・・」
もへこは呟きました。
「どうやら、雪解けとともに、
上流のほうに溜まっていたごみが、一気に下流に流れてきたらしいんだ・・。
それより、あそこを見てよ・・」
ロビンスのひづめの指すほうに目をやると・・・
ごみで汚れた水とヘドロに肩まで浸かっているカワウソが、
苦しそうな顔をして、そこにいました。
「あ・・・あれって! コウちゃん!!
何やってるの!? そんなところ、早く出て!!」
すると、カワウソのコウちゃんが、震える声で言いました。
「そんなところ・・?
ぼ・・ボクにとっては、ここは家なんだ!
勝手にごみがやってきただけなんだ!
ボクは動かないぞ!」
「・・・・ロビンス・・・」
もへこは困った顔をしてロビンスのほうに目をやりました。
「見ての通りさ、ボクもさっき気付いて、なんとか陸に引き上げようとしたんだけれど・・・
あいつ、『ここが自分の家だ!』って言い張って、動こうとしないんだ。
それで、力ずくで動かそうとして、泥んこのびしょ濡れになったっていうわけさ・・・。」
「で・・でも、あのままだと・・・」
「そう・・。死んじゃうよ・・。
他のカワウソたちはとっくに川の上流に非難しているんだ。
彼だけが、現状にしがみついて、濁った水に居場所を見つけてしまっているんだよ・・。」
「・・・・ウルフさんの力を借りましょう・・!」
もへこは、思いつめたような顔つきで、力強く呟きました。
「そりゃぁ、ダメだな」
慌ててウルフさんの小屋に駆け込んで、
一部始終を話し終えたもへことロビンスに、ウルフさんは、冷たく言い放ちました。
「そんな・・・どうしてそう思うんですか!?
助けてあげたいとは思わないんですか!?」
「助けてやりてぇと思わないわけじゃねぇ。
でも、そいつは無理だ。
現に、オメェは泥だらけになったって、
その頑固なカワウソを引っ張り上げられなかったんだろ?
他人が心配してどうこうなる問題じゃねぇよ。
かわいそうだが、見殺しにしたほうがいいぜ」
もへこのアドバイスで家庭菜園を始めたウルフさんは、
急激な空腹感に悩まされることはなくなりました。
しかし、まだ森の動物との会話には慣れていないため、
とめどなく流れてくるよだれをヨダレかけで拭いながら言いました。
「う・・・ウルフさん・・・。」
もへこがオロオロしながら言いました。
「バカやろう・・オロオロするんじゃねぇよ。
オロオロすると、余計に旨そうに見えるじゃねぇかよ!」
「でも、僕ら、何とかしたいんです。森の仲間を救いたいんです!」
ロビンスはプリプリしながら言いました。
「くそぉ、ノイローゼになりそうだぜ・・。
その旨そうなケツを振るのはやめてくれ・・・。
わぁ~~ったよ! 協力してやるよ!
ただし、わかってると思うけれど、俺のやり方ぁ、ちょっと荒っぽいぜ?」
「か・・構いません! コウちゃんを救ってあげてください!」
もへことロビンスが声をそろえて言いました。
「救うなんてぇことはできねぇよ。
自分を救えるのは自分自身だけだ。そいつを伝えに行くんだよ」
ウルフさんは意味深なことを言いながら、のそりと席を立ちました。
「さぁ~てと・・ちょっくらカワウソでも食べに行くかぁ!」
「ちょ・・ちょっと! ウルフさん!」
もへこが慌ててウルフさんにしがみつきました。
「うっせぇなぁ、冗談だよ!!」
ウルフさん、まだ森の仲間との生活に慣れていないので、
フラストレーションが溜まっているみたいですね・・。
・・・続く
作品:『ウルフさんの 逆境を成功に変える方法』
雪で真っ白だった森には、緑の可愛い新芽が顔を出し、
桜もつぼみをふくらませ始めています。
森の仲間たちも、すっかり冬眠の寝ぼけ気分から覚めて、
冬眠中は閉めていたお店を再開したり、作物を育てる準備をしています。
ウサギの『もへこ』も、
自慢のアロマテラピーサロンを再開する準備をしていました。
冬場はみんなが冬眠してしまってあまり実践できませんでしたが、
この春からはオオカミのウルフさんに教えてもらった方法でサロンを運営し、
しっかりと繁盛させようと、やる気満々になっていました。
寒い冬の間にちょっとだけホコリをかぶってしまったお部屋を掃除し、
ラベンダーのエッセンシャルオイルを炊きました。
お店の中にほのかに爽やかで穏やかな香りが漂い、
もへこは新しい季節の訪れに対する期待感で胸がいっぱいでした。
「さぁ、今年からは違った自分になるんだ!
あぁ~、楽しみだなぁ。本当に自分がやりたいことを、
自分で選択して進んでいけるなんて、素敵だなぁ」
もへこは嬉しさのあまり、鼻歌を歌って踊りだしました。
・・そこへ・・・。
ドンドンドン!!!
「もへこちゃん! 助けて!」
この声は、ブタの『ロビンス』です。
近くでマッサージサロンを開いている、
指圧の国家資格を持ったブタの男の子です。
「今あけるから、待ってて!」
もへこは慌ててドアを開けました。
そこへ、泥んこでびしょ濡れになったロビンスが転がり込んできました。
「うひゃぁ! ちょ・・ちょっと、ロビンス!
どうしたの? そんなにずぶ濡れで・・。
しかも泥んこじゃない」
「うん・・・まいったよぉ・・。
こんなに汚れちゃって・・・。あいつめぇ・・・」
「あいつ? あいつって誰のこと?」
「ここからちょっと南に行ったところに、
『おぼろ川』ってあるだろ?
あそこに住んでいるカワウソが、大変なんだ・・・」
「あそこの川のカワウソって・・・コウちゃんのこと?」
「さぁ・・ボクは名前までは知らないけれど、
とにかくちょっと来てよ! 大変なんだ!」
シャワーを浴びて泥を落とした後、
もへことロビンスは一緒におぼろ川に向かいました。
おぼろ川は、昔はお花見の名所になっていた場所です。
春になると、みんながそこに集まって、
春の訪れを祝っていました。
でも最近は・・・、心無い人間の観光地になってしまい、
ごみや産業廃棄物が増え、
昔のキレイな川や景色が見る影もなくなってしまっていたのでした。
おぼろ川に近づいていくと、
鼻をつくような生臭い臭いがしてきました。
二人で顔をしかめながら川岸にやってくると、
そこはすでにごみの山になってしまっていました。
「ちょ・・・ちょっと・・・何? これ・・・」
もへこは呟きました。
「どうやら、雪解けとともに、
上流のほうに溜まっていたごみが、一気に下流に流れてきたらしいんだ・・。
それより、あそこを見てよ・・」
ロビンスのひづめの指すほうに目をやると・・・
ごみで汚れた水とヘドロに肩まで浸かっているカワウソが、
苦しそうな顔をして、そこにいました。
「あ・・・あれって! コウちゃん!!
何やってるの!? そんなところ、早く出て!!」
すると、カワウソのコウちゃんが、震える声で言いました。
「そんなところ・・?
ぼ・・ボクにとっては、ここは家なんだ!
勝手にごみがやってきただけなんだ!
ボクは動かないぞ!」
「・・・・ロビンス・・・」
もへこは困った顔をしてロビンスのほうに目をやりました。
「見ての通りさ、ボクもさっき気付いて、なんとか陸に引き上げようとしたんだけれど・・・
あいつ、『ここが自分の家だ!』って言い張って、動こうとしないんだ。
それで、力ずくで動かそうとして、泥んこのびしょ濡れになったっていうわけさ・・・。」
「で・・でも、あのままだと・・・」
「そう・・。死んじゃうよ・・。
他のカワウソたちはとっくに川の上流に非難しているんだ。
彼だけが、現状にしがみついて、濁った水に居場所を見つけてしまっているんだよ・・。」
「・・・・ウルフさんの力を借りましょう・・!」
もへこは、思いつめたような顔つきで、力強く呟きました。
「そりゃぁ、ダメだな」
慌ててウルフさんの小屋に駆け込んで、
一部始終を話し終えたもへことロビンスに、ウルフさんは、冷たく言い放ちました。
「そんな・・・どうしてそう思うんですか!?
助けてあげたいとは思わないんですか!?」
「助けてやりてぇと思わないわけじゃねぇ。
でも、そいつは無理だ。
現に、オメェは泥だらけになったって、
その頑固なカワウソを引っ張り上げられなかったんだろ?
他人が心配してどうこうなる問題じゃねぇよ。
かわいそうだが、見殺しにしたほうがいいぜ」
もへこのアドバイスで家庭菜園を始めたウルフさんは、
急激な空腹感に悩まされることはなくなりました。
しかし、まだ森の動物との会話には慣れていないため、
とめどなく流れてくるよだれをヨダレかけで拭いながら言いました。
「う・・・ウルフさん・・・。」
もへこがオロオロしながら言いました。
「バカやろう・・オロオロするんじゃねぇよ。
オロオロすると、余計に旨そうに見えるじゃねぇかよ!」
「でも、僕ら、何とかしたいんです。森の仲間を救いたいんです!」
ロビンスはプリプリしながら言いました。
「くそぉ、ノイローゼになりそうだぜ・・。
その旨そうなケツを振るのはやめてくれ・・・。
わぁ~~ったよ! 協力してやるよ!
ただし、わかってると思うけれど、俺のやり方ぁ、ちょっと荒っぽいぜ?」
「か・・構いません! コウちゃんを救ってあげてください!」
もへことロビンスが声をそろえて言いました。
「救うなんてぇことはできねぇよ。
自分を救えるのは自分自身だけだ。そいつを伝えに行くんだよ」
ウルフさんは意味深なことを言いながら、のそりと席を立ちました。
「さぁ~てと・・ちょっくらカワウソでも食べに行くかぁ!」
「ちょ・・ちょっと! ウルフさん!」
もへこが慌ててウルフさんにしがみつきました。
「うっせぇなぁ、冗談だよ!!」
ウルフさん、まだ森の仲間との生活に慣れていないので、
フラストレーションが溜まっているみたいですね・・。
・・・続く
作品:『ウルフさんの 逆境を成功に変える方法』